ブラックスター2
セラの行方不明は学園に大きな衝撃を与えた。またいなくなったと思われる現場からヒビの入った光石が発見され、クロノを含め全ての者達が現実を突きつけられた。
この事から学園は一時警戒態勢となり外出は控えさせ、外部からの来客には厳重な確認が行われている。
現在もセラを含め冥獄凶醒の情報収集をさらに範囲を広げて求めているが、何一つ情報は集まることがなく、その停滞した状況にクロノ部屋はどんよりとした重い空気に包まれていた。
「セラは無事なのかしら?」
フィリアは椅子に座って、冷静を保とうとしているのだが、この事実にその苛立ちを隠しきれていなかった。またフィリアだけでなくクロノやイフルも、セラが行方不明かつ、近くに黒く染まった光石が落ちていたことの報告を聞いた当初、信じられないでいたが、少しずつ落ち着きを取り戻りながら状況を飲み込もうとしている。
「まだ、分かりませんが、現場にはヒビが入った黒い光石が落ちていたということから、知る限り光石を持っているのは、ここにいる人たちとセラさんだけとなりますので高確率でセラさんの身に何かがあったということになります」
「そんなこと言われなくても分かっているわ‼ それよりもセラが無事かどうかよ!」
「ひっ! ご、ごめんなさい」
フィリアが急に怒鳴り声を上げたので、イフルはびくっと、体を震わせて小さく消え入りそうな声で謝った。
「フィリア、落ち着いて。イフルさんが怖がっているよ」
「う、うん。ごめん。イフル、言いすぎたわ」
「いえ、平気ですので、気にしないでください」
イフルは気にしないでと言いつつも、目には涙が溜まっており、それなり怖かったようだ。またイフルもそれに気づいたのか、その凛とした目に溜まった涙を、さっと手で拭き取り話を続ける。
「も、問題はセラさんの無事と冥獄凶醒についてですが、両方とも手掛かり無しとなると、どうしようも出来ません」
「両方とも一緒である可能性だってあるし、セラだって無事だとは言い切れないし……、ああ、くそっ。せめて手掛かりかセラが無事であることが分かればいいのに」
フィリアは苦虫を噛み潰したような表情で、どうしようも出来ない気持ちを抑えようとしており、クロノもやるせない気持ちでいっぱいであった。
ここにいる三人が待つしかないのかと目を伏せようとしたその時、
「クロノ様! 失礼します!」
強く扉が三回程叩かれ、中へ入ってきたシスターが息を切らせながら部屋へと入り、その様子からただ事ではないと耳を傾ける。
「そんなに慌ててどうしたの? もしかして、セラの情報が手に入ったの⁉」
「いえ、そうではなくて」
「じゃあ、何を伝えに来たのかしら?」
余程急いで来たのか、今も苦しそうに息をしながらシスターはクロノに手に持っていた丸められた紙を渡して声を発する。
「ブラックスターが指名手配されています!」
「な、なんだってー!」
クエスト名「大好きなブラックスターを探してください」
内容 大好きなブラックスター様を探しております。
見つけた方は、なるべく傷つけないで明記された場所へ
連れて来て下さい。 注 多少の傷有問題なし。
確認が出来次第その時点で報酬をお支払いいたします。
報酬 十万リグ
追伸 早く愛を育ませたいので急いでいただけると助かります。
「なんじゃー‼ これはあああああああああああ‼」
クロノの絶叫は部屋中に響き渡るほどであった。
こんな時にこのクエストってバカじゃないのか。というか多少の傷有問題なしっておかしいだろ!
「クロノ様は以前ブラックスターと呼ばれていることから、このクエストはクロノ様を求めているものと推測されます。そして、現在ギルド内は愛を育もうとしたが出来ない者達が舌打ちをしているという情報が入って来ました!」
「いらない! そんな情報!」
最悪だ―。それに、これ僕も被害受けているよね。
シスターから受け取ったクエスト内容が書かれた紙を、震える手で握るように持ちながら、このクエストに対して頭を抱えていると、
「フィリア! これはもしかして!」
「ええ、そうだわ!」
二人は急に何かに気づいたようで、そのクエスト用紙を見つめている。
「何⁉ 二人共どうしたの?」
「「セラの出したクエストだわ(ですわ!」」
その二人の息の合った言葉にクロノは言葉を失った。どういうこと?
「クロノちゃん。これはセラが生きているって証拠よ」
「良かった、セラさんが生きていた」
「え? なんで、二人共分かるの? 僕には全然分からないんだけど」
確かにセラがブラックスターのことが好きってことは知っているけど、セラがそこまでするのかと疑問視するが、二人は絶対の自信があるように見えるほど、喜んでいた。
「フィリア。これには残念な情報もありますが、手掛かりが掴めましたね」
「そうね。でもその事は今となっては問題ないし、とにかく早く手配しましょう。幸いにも獲物はこっちが既に捕獲しているわ」
「獲物って……扱いひどくないかな。それよりも何で分かったか教えてよ!」
一人未だに理由が分からないでいるクロノは、二人に説明を求めるのであった。
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