再開
それから次の日にはフィリアとイフルは全快して、今日も二人で模擬戦を行ったのだが、戦法を知られたイフルは、フィリアに悉く対処されてしまい、今回の模擬戦はフィリアの圧勝となり、今は自室で身体をほぐさせている。
その二人が休んでいる最中に、クロノはセラと密かに始まった近接戦闘の練習を始めていた。
またそれから、時間は進むなかで、冥獄凶醒の警戒中は引き続き行われていたが、存在するという情報から一向に進展はなく、平和な時間が過ぎていた。
「さて、今日もこれで練習は終わりだね」
「ありがとうございました。おかげで今日もいい練習が出来ました」
「それはよかった。そうしたら明日は、装置を使って練習をしてみたらどうかな?」
「そうですね。一回してみて実力を測ってみたいと思います」
今日も順調に練習を終え、次の予定を決めたがセラは元々能力が高い為、その上達の速さはやはりと言える程であった。
まだ体の使い方が慣れていないが、タイミングや奇跡との合わせ方はこれからが楽しみだと思えるほどになっている。
「そういえばセラはこの後、王国内の見回りだっけ?」
「そうですよ。相変わらず手掛かりはありませんが、事が起きる前に防ぐことが一番ですから」
「そうだね。そうしたら僕はフィリア達のところに行ってこようかな」
「今日はイフルが勝てるといいですね」
「あれからイフルさん、全く勝ててないからね」
イフルが勝てたのは最初の一回限りであり、それからはずっと連敗記録を伸ばし続けている。
「そうしたら今日もフィリアの体をもみほぐしかぁ。ご苦労様ね」
「本人も了承の上でしているし、イフルさんもいつかはフィリアにやらせるんだーって言っていたからそれでいいのかな」
「二人がいいのであれば問題ないですよ。それではセラはシスター達と見回りに行ってきます」
「うん。気をつけていってらっしゃい」
セラはクロノに見送られながら練習場から出て行くのであった。
☆
「いいですね。セラさんは使徒様と一緒に居られて」
「そうね。そのおかげで毎日が楽しいわ」
セラの表情と声からその充実した日常が伝わってきた相方のシスターは、羨ましそうに呟く。
「いいですね。こっちなんて何の変化のない日常ですから。羨ましいですよ」
「そうねー。そっちは特に変化がないものね」
「クラスのみんなも使徒様のことがきになっていますから、情報提供お願いしますね」
「もちろんよ。ん、あれは?」
相方のシスターと話していると、目の前に泣いている小さな男の子がおり、周りで歩く人達が泣いている男の子に話かえようとしているが、男の子はいきなり知らない人たちに囲まれた恐怖によって、さらに声を大にして泣き叫んでいる。
「あらら、あれはちょっとほっとけないですね。セラさん。ちょっと行ってきてもいいですか?」
「もちろんよ。そうしたらセラは近くで待っているから」
相方のシスターは「分かりました」と返事をして、泣き叫んでいる男の子の方へと向かっていくのを見届けると、急に後頭部に柔らかいものが押しあてられ、ビクッと体を震わせて、それからすり抜けるように離れると、目の前にはぬいぐるみ店で出会ったアルチベータが頬に手を当てて妖艶な笑みを浮かべていた。
「驚かせてしまってごめんなさい。セラさんを見つけたらつい体が先に動いてしまいましたわぁ」
その姿はあの時と変わらない容姿と黒で統一された衣装。さらにその肌の白さが更に着ている衣装の黒により強調される。
「お久しぶりです……。アルチベータさん」
「まぁ! セラさん覚えて下さっていたのですね。つい嬉しくて涙が出そうになりますわ」
セラはアルチベータの特徴である暴走口調に苦笑いで対応する。
あの時もそうだったが、アルチベータは特に嫌な感じはしないのだが、どこか苦手な感覚があり、今もうっすらと包まれるような感覚がセラの肌に感じられていた。
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