セラのお願い
「では早速ですが、クロノ様はフィリアに出会う前は冒険者になる為にアクアミラビリスに来ていたのですよね。ちなみにその時から期待とかされていたのですか?」
「いやいや全くないよ。普通に村では他の人達と一緒で、無理なく頑張れって言われて出て来ただけだよ」
セラの問いかけにクロノが即答し、その答えが予想していたものと違った為、セラは眉をひそめて困ったような表情をする。
「そうなのですか? ブラックスターと呼ばれるようになるぐらいですから、生まれた時から才能があると思っていました」
「ごめんね。もしかしてがっかりした?」
クロノが申し訳なさそうに話すので、セラは両手を振って否定する。
「いえいえ、そんなことはありません。ただ、クロノ様は有名になった冒険者ですから、普通とは違う人生を歩んできたのかなーとセラが勝手に思っていただけです。そうしたら、クロノ様は村ではどのように過ごされていたのですか?」
「僕は村でしていたことは子供達の遊び相手や、周辺の魔石を集めるとかで、モンスターと戦うのは、たまにあったぐらいかな」
「それで、あの結果を出してしまうとか凄すぎますよ……」
セラの言うあの結果とは地竜を討伐についてで、クエストを受注したのはフィリアであったが、本来はルーキーが挑むこと事態が自殺行為であったのだ。
それでも、フィリアはクロノの名義でクエストを受注することは出来てしまっており、なぜフィリアが受注できたのかは未だに謎である。
「あのクエストはフィリアが用意したクエストで、最初は逃げようとしたよ。だけど、フィリアが逃がしてくれなくて本当に困ったね。でも、なぜかフィリアと一緒にいたらなんとかなるのかなって思っていたら、そのまま地竜を討伐出来たんだ」
「きっかけを作ったのはフィリアだったのですね」
「そうだね。今の僕があるのもフィリアと出会ったからだと思うし、もし出会ってなければ、地竜を討伐してブラックスターと呼ばれることも無ければ、コクウも買えていないだろうし、イフルによって殺されかけることも無かった。それに使徒だってならなかっただろうし、もちろんここにいることも無かったね」
フィリアとの衝撃的な出会いは運命だったのか偶然だったのかは分からないが、全てはあの日から始まって、その大事な場面では全てフィリアが関係している。
「全てがフィリアから始まっているとは……、しかしクロノ様! これからはセラも含めて他のシスター達もお手伝いしますからね!」
「う、うん。よろしくお願いします」
セラがずいっと前に出て宣言し、クロノはそのセラに押されるように返事をした。
「それとですが、早速クロノ様にお願いがありまして」
「お願い? それって僕に出来ること?」
「はい。というよりも、クロノ様にお願いしたいのです!」
「それで……そのお願いって?」
クロノはやや警戒しながらセラに尋ねる。
「それはですね。セラの師匠になって下さい!」
セラは思い切ったような感じで告白し、余程恥ずかしかったのか、今は一人できゃーきゃー騒いでいる。
「え? 師匠?」
「そうです。セラは見た通り力がないので得意なのは戦略を立てることと、遠距離からの攻撃だけなので、せめてもの近接戦闘として短剣を選んだのですが、どうすればいいか悩んでいまして、同じ短剣を扱うクロノ様に教えていただきたいのです」
セラが思った以上に悩んでいたことにクロノは驚いたが、短剣の扱いであればまだ役に立てる。それなら答えは決まっている。
「もちろんいいよ」
「ありがとうございます! それでは早速教えていただいてもよろしいでしょうか!」
「え、もう始めるの?」
「早く上達してもっと役に立ちたいですから!」
「そっか。それなら今から練習場に行こうかセラさん!」
「はい! あ、それとこれからクロノ様はセラの師匠になるので、呼び捨てで構いませんよ」
「え、それじゃ。セ、セラ! 頑張ろうね!」
「頑張ります!」
セラはこれから始まる特訓に向けて力強く返事をするのであった。
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