模擬戦後の感想
「それにしても、イフルには驚かされたわ。最初から全力で倒してさっさと終わらせようとしたのに仕留め損ねたし、それで予想もしていない反撃もされるとか、本当に散々な模擬戦だったけど、私も収穫があったからよしとするわ」
フィリアはイフルとの模擬戦について振り返っており、確かにイフルの反撃は予想外であったが、それを対処したフィリアもさすがであった。
「確かにセラもフィリアが負けるとは思ってなかったけど、イフルのあの行動は確かに予想外よね。おかげでフィリアは負けちゃったし、フィリアも負けたなら次は負けないようにあの状態になれないといけないわね」
「確かにセラの言う通りだけど、ちょっと待ってセラ。ちょっと私が負けたってことを強調しすぎじゃないかしら」
「あら、ごめんなさい。珍しいものが見られたから言いたくなっちゃったのよね。だってあのフィリアが負ける姿なんて滅多に見られないもの」
「また言った! セラいい加減にしないと怒るわよ!」
「ふーんだ。今のフィリアならセラも楽勝に勝てそうだわ」
「その時は刻印削っても負けないんだから」
「二人共そこまで。フィリアも刻印削るとか言わない。あとセラさんもこれ以上フィリアをからかわないであげて」
言い争う二人を見かねてクロノは仲裁に入りなだめると、ようやく二人は争うのを止めた。
「それにしてもイフルはどうやってあの力を出したのかしら。それにあれだけ力を使えばきっと……」
フィリアは何かが気になっているようで、じろじろと今も穏やかに眠るイフルを見続けていると、急にその手はスカートへと伸ばし、そのままイフルのスカートを下げてその身体に刻まれた刻印を確認し始め、その姿は先ほどのリフィアそっくりであった。
「あれ? 全然減ってない。もしかしたら減っていると思っていたのに」
「それだと、本当に限界寸前の力を出し続けていたのかしら」
「うーん。どうなんだろ。また今度イフルにどうやったのか聞くしかないか。それに今はイフルも運ばないといけないから、それが先ね」
「そうね。このまま床で寝かせておくのも可哀想だし」
セラの言う通りで、今もすやすやと眠るイフルだがここはまだ演習場なのだ。
その為ちゃんとした自室に運んで寝かせてあげなければならない。
フィリアもイフルの刻印について疑問に思っていたが、リフィアに教えられた刻印についてのことはまた時間がある時に話せばいいだろう。
「よし。それじゃ、僕が運ぶから二人は案内してくれるかな」
その後はクロノがイフルを抱えて部屋まで辿り着くと、その部屋の前にはすでに三人ほどのシスターが待っており、残りの対処を任せて三人はクロノの部屋へと戻ったのだが、演習中のみ指輪をつけたフィリアが再度指輪を着けて現在の自分の状態を確認したところやはり、消耗したことにより力が入りづらい状態となっていた。
その状態になったことからフィリアは、二人から隠れるようにして自分の体に刻まれた刻印を確認すると、最後にリフィアと出会った日と同じままであったことに安堵したが、それでもフィリアの表情は晴れることはなかった。
「ねぇ二人共。今日のこの後の勉強会、私は休んでもいいかな」
「いいけど、どうかしたフィリア?」
「うん。やっぱり、指輪をもう一度してみたら結構消耗していたみたいで、このまま無理してするのもどうかなって思ったから」
「フィリアもあれほど戦ったのだから、無理もないわ。残りの時間はセラとクロノ様でしておくから休んだらどう?」
フィリアはセラのその提案に少しだけ考えると、
「うん。そうする。それじゃ、またねクロノちゃん。セラ」
「フィリア何かあったらすぐに呼んでね」
「分かったわ。それじゃあね」
フィリアは二人に向かって手を振りながら部屋を出てしまうと、急に部屋が静かになってしまったので、この空気を誤魔化すようにクロノはいつもよりも声を大きめに出す。
「それじゃ、セラさんよろしく」
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