悪魔の雨宮さん2
マスカットをもう少し白く透明にしたような池、その畔を俺と雨宮は歩く。
池の近くにはイチョウの木が並んでいる。
僅かな木漏れ日を浴びながら歩く。
池の向こうの小山の近くに、紺色のスカーフをした灰色のブレザーの男が立っているのが見えてきた。
背はそれほど高くない。
美形と言えるかもしれないけど、少し悪人顔の男だった。
雨宮と二人きりで会っていたりしたら、絶対に雨宮をたぶらかしたとか噂されそうな顔立ちだ。
「コウヨウさんですか?」
俺は、上級生らしき男に尋ねる。
「ああ。ハンドルネームにさん付け等は不要だ」
「例の三人組はうぐいすなのか?」
雨宮が尋ねる。
「ああ。あと、レンってユーザーもうぐいすだって言ってた。どうも三人組と学年が違うらしいがな」
「少人数のオフ会だが、一つ気になる事を言っておく。連続少年殺人事件がこの近辺で起こっている」
「え!?」
「知らなかった……」
俺とコウヨウは驚きの声をあげる。
「あじさいや、うぐいすから死者が出ている」
雨宮はあきれた様子で、ため息を漏らすと、言葉を続けた。
「標的になった被害者を調べたところ、共通点がいくつかあった」
「不良だろ? 喧嘩で殺されたんじゃねーか」
コウヨウは鼻で笑う。
「いや、死亡者七人のうち、五人の情報を集めたが、全員黒髪、優等生が多く、華奢な体型で年齢が低めの男ばかり」
「げろっ。気持ち悪!! 快楽殺人なのかよ!?」
「たまにはクラスメイトの話にも耳を傾けるんだな」
雨宮の言葉にコウヨウは青白い顔色になり、表情を引きつらせたまま凍りついた。
「で、それとゲームと何か関連があるのか?」
「関連があるのかってナツキ!! おまえ変質者が身近にいるらしいのに平気なのかよ!?」
「まあね。狙われない気がするし、俺」
俺の言葉に苦笑する二人。
「随分と余裕な発言だな。で、その殺人犯が捕まったら、おそらく魔物の材料としてリュウセン城に魔物の材料として送られてくるはずだから。天使に罪人の刻印が押された人間が、魔物の材料として天界から魔界に送られてくる……」
「うええ。勘弁してくれ!! 食われるか食うかの世界なのかよ!?」
「そういう事だ。しかもゲームがリアルに始まった時、体験するかもしれん話だ」
「最悪だ!! 悲惨な設定のゲームだな……」
「教職員とかいうオチでない事を願うばかりだな」
雨宮の容赦ない言葉に、俺は言葉もなく呆然と立ち尽くしていた。
泣きそうだ。
「や、止めてくれ!! おまえ、そうやって他人をいじめる趣味があるのかよ!?」
「ない。現実的な話だ」
「なら、よけいに、たちが悪い!!」
「見知らずの奴なら、容赦なく捌けるんだがな」
そ、そうだった……。
人間を容赦なく捌くゲームだったんだ……。
ど、どうしよう……。