悪魔の雨宮さん1
俺は雨宮との会話を思い出しながら、ぼんやりとプールの生成室に向かった。
ゲーム世界でも、現実世界でも奴は存在するのか。
あいつの言う事、気味が悪いんだが……。
プールには、コウヨウという男のユーザーがいた。
今日はプールをシェアするのはカエデではないらしい。
少しほっとした。
「初めまして」
「……」
無視された……。
「このゲーム、嫌い?」
「別に。現実もありえねーぐらい嫌いだから。所詮、僕はこっち側の存在なんだろうな」
コウヨウは完成したエルフを眺めている。
裸体の女エルフはプールの中で眠ったまま。
部屋には使用人に着せるための簡素な黒服がある。
その一枚をコウヨウは掴みあげる。
「そっかー。俺も向こうの世界に本当に存在してるのか疑問に思うことある」
「それは気が合うな。ここで会う奴、うざいと思って話さなかったが、おまえとは話そう。例の市立 鶯谷高校の三人組とは会ったのか? おまえも、うぐいすとか?」
市立 鶯谷高校って、あのチョコレートみたいな美味そうな色をした学ラン、セーラー服の学校か。
聖紫陽花学園に比べて偏差値の低い学校だが、和やかな雰囲気らしい。
きっと、チョコレートみたいな味の学生生活を送っているんだろう。
「会ったけど、俺は紫陽花」
「なにっ!? 僕も紫陽花だぞ!」
意外な発見だった。
雨宮以外に紫陽花の奴がいるなんて。
「学校で顔を合わせたことがあるのかな?」
「何年何組だ? 僕は2年B組の石田綺文だ」
「俺は1年A組の白井光貴です」
「A組って、おまえ、成績良いんだな……紫陽花の時点で頭悪いはずないんだが……まあ、悪知恵の働く頭と金はあっても、ほとんどが性悪ばっかりなんだよな……」
コウヨウも人間関係で苦労してるんだろうか……。
「君はこのゲームが現実になるって聞いたことある?」
「ああ。僕ら老けないから、いずれ人間界から追放されるんだろう?」
「えええ!?」
追放……。
ショックな言葉だ。
「僕はあんな奴らとは違う!! あいつらが老けていく中、一人、栄光を手に入れてみせる!! 僕は生成の技術と設計の技術であらゆるものを手に入れるんだ!!」
「設計?」
「知らないのか? 魔物は戦闘力・知力・美観・特殊能力の四つで評価される。生成は設計図に描かれたとおり作るだけだが、生成を覚え、設計できるようになれば、その四つの評価点を上げた魔物が作れるようになる。僕が目をつけているのは特殊能力だ。これさえ自在に操る事ができるようになれば、世界が手に入る!!」
コウヨウは野心家、なんだろうか?
「一人だけ老けない事は怖くない?」
「僕はあいつらとは違うんだよ!!」
寂しい奴だな……。
それからしばらくコウヨウのアバターは動かず、メッセージもなかった。
「明日、会いたい。屋上で昼休みは?」
俺のほうからメッセージを書き込んだ。
「屋上はよくヤバいのが来るからやめとけ。学校の池のほとりだと見渡しがいいし、あまり人も来ない」
「分かった。会うのを楽しみにしているよ」
俺は雨宮に声をかけようか、迷った。