36/53
芸術コレクション1
美術の授業の後、ひとけのない化学室から吉野先輩は出てくるのが見えた。
上級生なんだけど、会釈する必要がないほど遠いと思っていると、続いて1年B組の原田が出てくる。
原田は具合が悪そうに腹を押さえ、廊下の壁にもたれかかる。
「……原田? 具合悪いのか?」
「……別に。ほっとけよ!!」
原田は腹に置いていた手を隠すように横にやり、さっと階段をおりていってしまう。
……どうしたんだ?
「やあ、白井君」
ふと振り返ると、吉野先輩が笑みを浮かべて真後ろに立っていた。
「今は一人なんだね?」
「別に俺、雨宮にも石田先輩にも、友達だとか思われていないみたいです」
「そうなのかい。寂しいね……そうだ、内海の絵の現物を観てみたいと思わないかい?」
「え? 観れるんですか?」
「放課後に、裏門の所で待ってるよ。内海も呼ぶから」
そう言うと、吉野先輩はさっと踵を返して、階段を駆け上がっていった。
俺のそばに雨宮がやってくる。
「今、吉野がいなかったか?」
「え? ああ」
「何か情報は?」
「何も」
「そうか……」
「あのさ、原田って生徒会と関連があるんだっけ?」
「? 原田……? 来期、生徒会役員に立候補でもする気なのだろうか……調べておこう」
それで、俺と雨宮の会話は途切れた。




