生成は、計画的に?
「リュウセン公国。
魔王が不在の現在、唯一魔物が生産される場所。
城の魔物を作る産業を中心とし、城下町では城が必要とするものを生産・販売している。
城はリュウセンの森が囲んで侵入者を防ぎ、その周囲に城下町があり、国は砂漠の真ん中に位置する。
常に夜のその国に、客は特別な馬車で魔界の入口から送迎されてくるーー
君はその城の住人の悪魔となる」
いきなり、オープニングっぽい説明文が出てくる。
そして、城主と表示の出る、仮面を被った真っ黒なマント姿の男が語りかけてきた。
二頭身で愛嬌がある。
「君をリュウセン城の新しい魔界貴族の一人として受け入れよう。住人の証の指輪を授けよう。それを反応させるとタブレットが出現したりする。さあ、まずはストックで作れるだけ魔物を生成するのだ!!」
いきなりプールの画面が出現する。
プールは十ヶ所に仕切られており、五ヶ所は紅く染まって泡がぶくぶく出ていたり、作っているらしき物が様々な色になって輝いている。
色が変色しているプールの真横にはカエデというユーザーらしきものがいた。
「まずは、魔物のレシピだ。タブレットの魔物生成情報を見るのだ」
タブレットには、魔物生成、地図、メイクボックス、ジュエリーボックス、マリオネットボックス、クローゼット、多言語辞書、計算機、スケジュール帳、メール、ライン、ウェブ、掲示板などの機能がある。
魔物生成を選ぶと、人魚や人狼、エルフなど、十種類のレシピが載っている。
げっ!?
人間が材料に含まれてる!?
ゴーレム以外のどの魔物にも、必ず人間が必要……。
なかなかダークなゲームだ……。
俺はページをめくっていき、現在、ゴーレムが売り手市場と出ているのを見つけるが、城主に命令される。
「まずは使い魔のエルフを作るのだ!!」
俺はゴーレムを作りたかったけど、仕方なく、エルフを作らさせられた。
続いて初心者でも生成可能な、サンド・ゴーレムを作れる限り生成する。
エルフは48時間後、サンド・ゴーレムは15時間後に完成すると出た。
「さあ、材料が足りなくなった。地図を開いて、材料を採取に行くのだ!!」
地図を開くと、魔界大戦跡地、白の人間界、リュウセンの森、リュウセン城城下町、リュウセン砂漠、亜空間野原、カイアン国ドラゴン農場、魔界首都と様々な場所が表示される。
表示されるだけで、選択できない場所もある。
俺は魔界大戦跡地を選択した。
魔界大戦跡地にワープすると、アヤメ、セツナ、ユズハという三人のユーザーらしきのがいた。
アバターを見ると、ユズハのみ男のようだ。
「初めまして」
アヤメが話しかけてきた。
「初めまして」
「返事するんだな」
え? 返事しない人、いるんだ……。
そういえば、さっき見かけたカエデってユーザーは話しかけてこなかった。
「これで四人目ね。ユーザーを見るの」
セツナが発言する。
案外ユーザー、少ないんだ……。
「ユーザー、少ないんだね」
「うん。このアプリをインストールしたら、他のアプリができなくなるし。消せないし」
セツナに言われて、俺は呆然とした。
よっぽど重いのか!? しかも、ウイルス付き……。
「ま、仲良くやろうや」
ユズハに話しかけられて、俺は渋々肯定の返事をしたが、泣きそうだった。
もう、このゲームの人たちとしか会話できないんだ……。
「他の人たちは話、できないの?」
「できるわよ。ユーザーじゃなくって運営っぽい、先輩風の生成師たちと。四人いたかな。あとは城主と使用人も人工知能じゃないみたい」
えええ!?
何なんだよ、このゲーム!? 変なゲーム!!
スタッフばっかり山のようにいるのか!?
「このゲーム、メイクボックスが可愛いの!! 一つ目のメイクボックスはどうしても公開設定にならないから、二つ目を買ったんだけど……」
アヤメという名の背の低い少女が、メイクボックスを見せてくれた。
っというか、ユーザーに公開設定になっていて、タブレットで見るように指示された。
きらきらした口紅や、マーブル模様のチーク、アイスクリームを模したアイシャドウっという、どうやって使うのかよく分からないものが、綺麗に並べられていた。
よく分からない珊瑚みたいな形の飾りまであるけど、これは何だろう?
「これってどうやって?」
「町でコインを使ったら買えたの」
アヤメ達が計画的に魔物を作っているのかは、謎だった。