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棺おけ

 そろそろ、こっちの世界の最初の授業時間だ。

 あ? 変身術の日のレポート、どこだっけ?

 探しているうちに、ドアを叩く音がした。

「いきなり遅刻するな!!」

 ユイの怒鳴り声がする。

 げえ!?

 初日から遅刻!?

 遅刻魔の烙印を押されたんだろうな、俺……。

 ドアの方を見ると、ユイと鎧の騎士がいる。

「レポートがなくって」

「明日受け取るから、さっさと来い!!」

 鎧の騎士に腕をがっしりとつかまれて、俺は城への回路に連行された。

「ではまず、自主練のやり方から、覚えてもらいます。コウヨウ」

「はい」

 コウヨウが前に進み出る。

「では、まず、城への入り口で、ガードに声をかけてください。城の住人や、たちの悪い客に食べられないよう、ついてきてもらうんです」

「ついてこい」

「……」

 無言で、コウヨウの横にやってくる鎧の騎士一体。

「では、城の地下十一階に移動しましょう。そこが自主練用のプールです」

 候補生一人に各一体ずつ鎧の騎士がついてくる。

 まずは地下一階で体を洗浄され履物をはきかえ、コートを脱いで白衣に着る。

 それから地下を移動。城の裏庭の方の階段を利用した。

 エレベーターがあるらしいが、候補生は急ぎの用はまずないので、使用禁止。

 地下十一階に到着すると、廊下を歩いて、いくつかある扉の一番手前を開いた。その瞬間、左指にシルバーの指輪が閃いた。

「その指輪は城の住人証、または生成師証と呼ばれ、生成に必要です。基本、このフロアはどこから入っても、同じプールに出るんですけどね。他のフロアのプールは、使用している生成師が許可しないと、その指輪では開きません」

 広大なプールを目の前にし、俺たちはじっと見る。

 何の変哲もない、水なしのプールにしか見えない。

「入り口付近にあるタッチパネルで、プールを様々なサイズに仕切れます。また、生成に使う水もそこのタッチパネルで種類を選んだり、温度調節します。それと、魔物の材料もタッチパネルで呼び出せますが、城からの支給は一日単位や一か月単位で限度数が決められています。さて、ではコウヨウ。リュウセン・パール・マーメイドの材料を呼び出してください。タブレットで材料は見れます。読みあげてください」

 コウヨウは、タブレットで材料を見る。

「材料、棺おけ三つ、魚100キログラム、貝800グラム、パール30粒、珊瑚300グラム……」

「慣れたら、アレンジしてもいいですよ」

 棺おけってなんなんだ!?

「では、呼び出してください」

 コウヨウは、パネルに材料を打ち込む。

 するとプールサイドの口が開き、材料がケースに入った状態でせりあがってきた。

 棺おけを見て俺達は無言になる。

 俺とコウヨウは歩み寄ってみた。

 棺おけにはプレートが付いている。

『紅い月の世界産、西暦××××年、○月、△日付けで犯罪者の烙印を押される

 大世界暦○○○○○年、■日、*日、天界から出荷される』

「では、プレートの確認ボタンを押して、プール内に入れます。他の材料も入れてください」

「こ、これは……」

 コウヨウがひきつった声を漏らす。

 決まってる。

 人間が材料のゲームなんだから。

「魔物の材料ですよ。重かったら、ガードに入れさせてください」

 コウヨウは青ざめつつ、ガードに材料をプールに入れるよう、命じた。

 プールに投げ込まれる材料。

 候補生らは静まりかえっている……。

「では、ユイ。交代をお願いします」

「ああ。中身に魔力をかけて、分解する。それから必要な物質をプールから取り出していき、気体、液体、固体、プラズマの四種のいずれかで加工を施しながら、魔力の糸でマニュアル通り編みあげていく。編み上げ作業が終了すれば、後は時間がたつと、成功か、不成功かが分かる。中級以上の生成になれば、途中でも加工が必要なものが出てくるが」

 言った通りに、ユイ本人が黒い魔力を送ると材料がプール内で分解された。それから、紅い糸三本でマニュアル通りらしき編み上げ作業を素早く行う。

 その作業は凄まじいはやさで、一分程度だった。

 まばゆく色を変えて光って、目がちかちかする。

「魔力の糸は、生成系魔力値500越えで三本、1000越えで四本、1500越えで五本、2000越えで六本出現する。この糸を出す作業を繰り返し行うと、若いうちは生成系魔力値が上がる」

 なんだか、大変な作業が待ってるんだな、魔物生成師になるのって……。

 ふと見ると、雨宮の顔色がよくなかった。

 雨宮もプレッシャーなんだろうか?

「ナツキ、コウヨウ。今日の授業が終わったら話がある。西館の一階エントランスで待っている……」

 どうしたんだ、カエデ……?

 なぜ、あじさいばっかり呼び出すんだ……?

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