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デート~アヤメ編~

 映画を見終えた俺は、帰りたそうな素振りを見せたが、レンはファーストフード店に誘ってきた。

 そこの店は好きじゃないので、カフェオレだけ注文すると、映画の感想をだらだらと語る。音楽が良かったとか、映像が綺麗だったとか。

 さすがに参ったらしく、レンはじゃあそろそろっと、駅に向かった。


 俺はせっかく遠出して、大きな本屋があるわけだし、行ってみようと向かう。

 すると、後ろから見ただけで、アヤメとわかる格好の少女がいた。

 本屋の前の服屋でバスケット風のかごを持ち、服をじーっと眺めている。

 さすがに毎日、服を見るのにセツナやユズハを誘っているわけではないらしい。

 店員の冷たい視線から、かなりの時間そこで踏ん張っているのだろう。

 俺は正面に回りこみ、本人なのを確認した。

 チャンス到来!!


「あ、アヤメ!!」

「ナツキ~!! ど~しよ~! スマホ決済が使えなくなっちゃったの!!」

 猫のような愛らしい声が返事をする。

 悔しげに、カゴに放り込んだ可愛らしい洋服たちを眺める、アヤメ。

 俺は値札を確認する。

 アリスモールの店ほど高くはない。

 一桁ほど値段が違う。

 一応、本人、破産したって自覚はあるんだな……。


「ちょっと、見せて」

「うん」

 弱弱しくアヤメは返事をする。

 俺はカゴの中身を確認した。

 カーディガン、ベスト、パーカー、マキシスカート。

「どれも同じぐらい気に入ってるの?」

「うん」

「これから夏だな。マキシスカートはよく着るんじゃないか?」

「え、えっと……」

 アヤメはカーディガン、ベスト、パーカーを見る。

 ベストなんて、無くてもコーディネイトに困らないし、初春もののカーディガンやパーカーは、もうじき季節はずれ。

 セールになっているカーディガンは分厚い。

「カーディガンは冷房対策で羽織るにしても、夏物のカーディガンがあるんじゃないか? これ、寒い時期の売れ残りだと思うよ」

「そ、そうね……」


 値札を確認してみる。

 マキシスカートは2980円。

 カーディガンやパーカーは4000円オーバー。

「季節外れになれば一気に値段下がるよ。今年はまだ肌寒いから、この店は下げてないようだけど」

「そうなの!?」

「それに、このカーディガン、家で洗濯できない表示になってる。シルク混だからかな。夏物は洗えるカーディガンが多いんじゃないか?」

「知らなかった!!」

 あああ、服を大量に買うのにそんな事も知らないんだ、アヤメ……。

「マキシスカートがいいと思うな。洗えるみたいだし。カーディガンは破れやすそうなデザインだよ」

「可愛いのに限って、すぐにダメになっちゃうのよね……」

 そうやって、次のを買わすんだよ。

 確かに、すぐにダメになるものを綺麗に着ている女の子はお嬢様っぽく見えてしまうんだけど。


「どうしてそんなにお洋服に詳しいの!?」

「アパレルって儲かるって聞いたから、将来やろうか一回考えて、情報を集めたんだ」

「で、するの?」

「アパレルは景気にもろに影響されるから、飲食店も考えた。けど飲食店は下手したら新聞沙汰になりかねない要素満載。人命にかかわる!!」

「新聞? 読んでるの?」

「うん。一面とテレビ欄と関心のあるのしか見ないけど」

 うちの学校、試験に、ニュースネタがよく出るんだとは言えなかった。

「じゃあ、コンビニ経営とかは?」

「フランチャイズは儲かる種類・地域があれば二番煎じが続々登場する」


「えええ!? じゃあ何が儲かるのよ!?」

「夢のない話、株だね。地味に会社員やってキャリアを作りつつ。リスク高いけど」

「あんた、中一男子でしょ!? 老けてるわ!」

 あれ? 

 冷たい表情。

 ラブゲージ低下!?

 アヤメはものすごく不機嫌そうに、マキシスカートをレジに持っていった。

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