デート~レン編~
またしても、周囲暗転。
そして深紅が登場。
「次は、教官選びです」
「今日はゲーム終了!!」
「分かりました。次に眠ったときに選んでもらいますから」
こうして俺は、罰ゲームから解放してもらった。
その後、遊園地で候補生らと遊んで、紅い風船が飛んでいってアヤメが泣いて、ピエロがジャンプして取ってくるという意味不明な夢を見ていると、目覚ましがなる。
「学校……準備できてない!! って、今日、日曜じゃん……」
バカらしい。
昨日、勉強は済ませたから、今日は部屋のインテリアを変えてみよう。
俺は結構、部屋を散らかしたままにしてるタイプだが、たまに片づけをやりだすと徹底的に片付け、掃除も徹底的にやる。
今日をその日にしようと思った。
だが、散らかった机を片付けていると、ハリウッド映画のチラシが出てきた。
あー!! これ、もうすぐ観れなくなりそうなやつで、観るの忘れてる!!
よしっ!! 今日行こう!!
俺はアリスモールに行った日とシャツ以外全く同じ服装に着替え、数駅先にある映画館に向かった。
アリスモールとは電車で反対方向だ。
映画館のある繁華街を歩いていると、どこかで見たことのある気がする男が歩み寄ってくる。
「ナツキ!!」
芳醇な声。
顔はまだはっきりとは覚えていないけど、この声は覚えがある。
「えっと、レンだっけ?」
「そうそう。君も映画?」
「うん。ドールズ・ハウスを観ようと思って」
「…………奇遇だね。僕もそれ、観ようと思ってて。残酷すぎるって問題になってて、高校生以下はもうすぐ観れなくなるかもしれないんだろう? 二人で観た方が盛り上がりそうだし、一緒に行かないか?」
「いいけど」
ヒロイン設定してるから、趣味が合うようになってるんだ……。
まあいいや。
雨宮やコウヨウと映画の話で盛り上がる事もないだろうし。
俺はレンと一緒に映画館に行き、ドールズ・ハウスのチケットを買った。
館内は、中高生が大勢いた。
もうすぐ、観れなくなるかもしれないっと思うと観たくなるのは人間の心理だろうか?
それなりの年齢になればホラー映画なんていくらでも観れるはずなのに、今観たくてしょうがないんだな、これが。
ドールズ・ハウスは、ある日、突然、人形たちが巨大化して意思を持ち、自分たちを玩具にした仕返しをしようと人間たちでままごとを始める映画だ。
この洋服嫌いだから捨てるだとか、この家いらないから捨てて新しいのを建てるだとか、この人間いらないから捨てるだとか、人形たちが無理やり仲の悪い人間をアパートに詰め込んだりするという、酷い描写が入っている。
たまに悲鳴のような声が上がったり、笑い声があがったりする館内。
大きく悲鳴が上がった瞬間、レンは俺の手を掴んだ。
げっ!?
いきなり右手を掴んできた!!
気持ち悪い!!
ラブゲージはそんなに高くないはず。
やめろよ、バカ!!
俺のラブゲージは急降下だよ!!
「怖い……」
隣からすすり泣くレンの声が聞こえてきた。
俺の右手を掴む手はガタガタ震えている。
まさか、ヒロインだから、無理やり趣味を合わせたのか!?
本当は別の映画のつもりだったのか……。
「出ようか」
「出ない!!」
勘弁してくれ。
「わああああ!!」
「ぎゃあああああ」
「ひっ……」
映画館内の悲鳴につられ、声を漏らしたレンに抱きつかれる俺。
映画、台無しなんですけど……。
とても感想を語り合うどころじゃなかったんだな。
映画が終わった後、俺は尋ねた。
「本当は、何の映画を観ようと思ってたんだ?」
「舞姫……」
なんなんだ、その昭和のにおいの漂うチョイスは!
全然、趣味あわねー!!
俺はじと目でレンを眺める。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
涙目のレンに俺は言葉もなかった。
不意にずきりと頭が痛む。
なんだ、これは!?
こんなので、恋愛フラグが立ったら許せないんだからな!!




