コスチュームプレイ2
「よしっ! じゃあ、服のある鏡部屋に行こうか」
俺達はヒスイに先導されて、移動を開始した。
南北の壁にびっしりと鏡のとりつけられた広い部屋に入ると、そこには服が山のようにあった。
ハンガーラックに服が大量に掛けられている。
部屋の隅には、布などを使いフィッティングルームがいくつか作られていた。
北側は男子用、南側は女子用らしき服が揃っている。
俺は服を選ぶのが憂鬱で、ぼけっとしながら他の同級生らが服を選ぶのを見ていた。
「あたし、これがいいわ!!」
先制したのはアヤメ。市松模様のドレスと黒のボレロを手にしている。
「カンカンドレスですかー。華やかですもんね!」
ミレイが楽しげに眺めながら解説。
「私はこれだ」
雨宮が選んだのは露出度の低いアジア系の民族衣装だった。
やっぱりこいつ、メインヒロインにしなくて良かった……。
「アオザイですね。戦闘時に動きやすいですよ。カンカンドレスもですが」
カエデはアヤメを意識したようで、ぎっと睨むが、アヤメは涼しげな表情を浮かべている。
セツナも何枚か候補を決めたようで、三人はフィッティングルームに入った。
一方、男子らは服で困っている。
基本、男の方が奇抜な服を選ぶの苦手だからな。
「僕はこれかな……」
コウヨウはまず、黒いシャツを一枚手に取った。
それから濃灰のスキニーを選ぶ。
ユズハはやはり、タンクトップにカーゴパンツを合わせようとしたが、合う物がなかった。ダメージジーンズっぽいボトムスをチョイス。
レンはVネックのトレーナーにチノパン。
そこで試着した女子らが出てくる。
「わー!! かわいー!!」
鏡を見て踊りながら自画自賛するアヤメ。
「おまえ、何を着ても一緒だ」
カエデが冷たく言い捨てる。
「何よ!! あんたのそのもっさりした服!! 可愛くない!!」
ふんと背を向けるアヤメとカエデ。
「仲良くしましょうよ~」
そこへ、肩から背中にかけての部分が紐二本だけしかない上、大きな胸元を強調したドレスを着たセツナがやってくる。
「あんたなんて格好なの!?」
「おまえなんという格好だ!!」
そこだけ、アヤメとカエデは意見が一致した。
「キャミソールドレスだね……うーん。カーディガンでも着てくれないかなー、それ」
ヒスイに苦笑いしながら指導され、セツナは渋々、上から羽織るものを探し、前リボンで留めるタイプのポンチョを選んだ。
ウエストあたりにリボンが付いているので、相変わらず、バストラインは丸見えだけど。
その頃、男子らが着替えを終えて、出てきた。
コウヨウのシャツは逆十字デザイン、ユズハのタンクトップは竜柄、レンのセーターは黒と灰の太ボーダーとなかなか個性的だった。
全員、柄物で目立つ。
「逆十字かー。凄いなー」
俺の言葉に一瞬、空気が凍りつく。
「俺のは!? 俺のはナツキ!?」
ゆ、ユズハ……?
「コウヨウ、俺の服と交換してくれないか!?」
レン……。
男ばっかり、群がってくる……。
一方、女子らは自信満々な態度。
あああ、ヒロインが多いとややこしいな……。
「ところで、ナツキ。君、服を決めてないようだけど」
ヒスイに言われ、俺はぎょっとする。
「こいつ、遅刻してきたから、これでどうだ!」
ユイが黒スラックスと白のワイシャツを差し出す。
白のワイシャツには……時計搭の刺繍が入っていた。
か、悲しい……。その上、恥ずかしい……。
嫌われてる先輩からのいじめだな……。
「それだけじゃ、ちょっと寂しいよ。紅いスカーフを付けてみよう」
えええ!? ヒスイに絡まれた!?
「猫じゃねーんだからやめろ」
「でも可愛いと思いますよ」
生成師たちが揉めだした。
俺はこっそりと逃げようとする。
「ナツキが逃げようとしてる!」
「「「「「「「「「えええええええっ!!!!」」」」」」」」」
俺は猛ダッシュで部屋を駆け抜けた。
廊下を走って、西館に逃げようとする。
「コスプレなんて、らめええええ!!!!」
だが、数秒後には、追いかけてきたヒロインらに捕まって、俺は彼らの餌食となった。
時計搭刺繍のワイシャツを着せられ、ヌイグルミの猫のような紅いリボンをちょうちょ結びにし、くくりつけられる。
「では今から、着ているお洋服を体にくっつけます。体の一部になりますから」
「え!? なんですと……!?」
「節約のために、破れても、汚れても服が自己修復してくれるように、体の一部にしますから!! 回復アイテムを使えば、洗濯も自動でできます」
晴れやかな笑顔で説明するレイ。
う、嘘だ……。
俺は押さえつけられて、青い光を浴びせられ、派手な服を体にくっつけられた。
こ、このゲーム、辛い……。
俺ずっと、猫のマスコットキャラのヌイグルミみたいにリボンつけてるのか……。
さらに黒のロングブーツと、黒のハーフマンとも支給された。
生成師は黒のロングマントで、候補生は黒のハーフマントらしい。
マントの下も恥ずかしいが、ハーフマントも恥ずかしい……。
こ、これって何かの、罰ゲームなのか……!?
いったい、何の罰ゲームなんだ……。




