コスチュームプレイ1
俺が目を覚ますと、時刻はまだ深夜零時だった。
えー!? ケーキ付きの茶会とか、あれだけいろいろとあったのに、三十分程度しか、時間が過ぎてないんだ……。
眠いので、寝なおす。
すると肩の開いたドレスを着た、深紅が姿を現す。
げげっ!? 一晩に何回イベントがあるんだよ!?
「あの、イベントって一晩に何回あるんでしょうか……?」
「最多で十回です。魔界は十倍のはやさで時が流れるという設定なのです」
うそー!?
や、やめてくれ……。
寝ても、疲れが抜けないだろうな……。
「では次のイベントは、衣装決めです」
深紅が言うと、周囲が真っ暗な状態から、石造りの部屋、西館の501号室になる。
「では、ベッドに寝たらゲーム開始です」
「そのイベントを回避する方法はありますか?」
「無理です。私とだらだらしゃべるか、イベントを先延ばしする事しかできません」
面倒なので、俺は自室のベッドに寝転がった。
モノクロだった周囲がカラフルな世界に変わる。
『本日は、ここでの服を決めてもらう。生成師候補生は西館と城の連結部分に集まるように』
城主の声でアナウンスが入る。
俺は起き上がる。
初期の服はあじさいの制服姿。うぐいすのメンバーはうぐいすの制服姿だった。
と、ところで……。
まさか、まさか、まさかッ!?
お、俺、コスプレみたいな、奇抜な格好をさせられるのか!?
猫耳フードだけでも鏡見るの恐怖だったのに、行きたくない!!
俺は布団を被ってふて寝した。
外からは話し声やら足音が聞こえたが、やがて静かになっていく。
絶対に行くもんか!!
俺はレイヤーはやりたくないんだ!!
守備範囲の遥か彼方なんだ!
『まだ来ていない者がいる。早く来るように』
うるさいー!!
部屋にこもっていると、がちゃがちゃと、金属の音が聞こえだした。
やがて、金属の音は部屋の前までやってくる。
怖いよー!! 助けて、兄上!!
ばたんっと、ドアの開く音がした。
そして、全身金属の鎧で顔すら見えない騎士たちが、俺の周りに群がってきた。
い、嫌だぁっ!!
俺は鎧の騎士らにひょいと持ち上げられて、そのまま城に向かって連行された。
がちゃがちゃと鎧の騎士らの歩く音が無常に響く。
「何をしていた!! 遅刻だぞ!!」
青灰色の髪に、黒い革服、サングラスをかけたヤンキーにしか見えない生成師、ユイが怒鳴りつけてくる。
「……すいません」
「さっさと行くぞ!!」
既に他の生成師候補生は揃っており、他に森の妖精のようなヒスイと、大天使聖ミカエルのようなレイの姿もある。
ヒスイは男子の正装をフェミニンにアレンジしたような格好に、リボン付ボーラーハットを身につけている。
レイは、ざっくりとした縫い目のヘンリーネックカットソーに、ジーンズのような動きやすい格好。
ロック系、妖精系、体育会系と差はあるけれど全員服はモノトーンでまとめてあり、ブーツを履いていて、ロングマントを引っ掛けている。
前見たときは全員同じゴシック系のロングマントで隠して、服装が見えなかった。
参考にしろってことか?
……恥ずかしい。
レイの格好がまだましかな……。
女子の参考用にか、エルフのメイド、ミレイ&ミレルの二人もいる。
二人ともエプロンドレスだが、白を基調にした服と、黒を基調にした服だ。
どっちもスカート丈がロングでちょっと残念な気がする。
「この二人、昨日ケーキとお茶を準備してくれたと思いますけど……」
「ミレイでーす! 西館でキッチンメイドをやりま~す! よろしくお願いしま~す!」
「……ミレルです。ミレイの妹です。ハウスメイドがメインです」
やたら元気な耳のピンと立った髪の長いほうが姉、耳の垂れ下がった髪が肩までの方が妹らしい。
二人ともセピア色の髪と瞳をしており、真っ白な肌をしている。
生成師たちも青白い肌だが。