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アリスモール1

 翌日は土曜で、アヤメ達とアリスモール行きのバス停で、待ち合わせの日。

 雨宮は念のために石田先輩に連絡をとラインを送り、行きたいと返事をもらったそうだ。

 時間と待ち合わせ場所を連絡し、俺はまずは最寄り駅に向かう。

 ここが雨宮と石田先輩との待ち合わせ場所。

 雨宮は先に来ていた。

 ……私服はズボンにメンズっぽいTシャツで、男かと思うような格好だった。

 髪も女子にしたらそんなに長くないし。

 俺の到着した直後にやってきた石田先輩は気合が入りまくりだった。

 ナンパしに行くんだろうか?というぐらい。

 伊達めがねなんて必要あるんだろうか……?

「何なんだ? そのイギリス人留学生みたいな格好は?」

 チェックのシャツと高そうなジーンズを見て、雨宮が皮肉を言う。

 キレイめの着こなしが何とも板についている。

「褒め言葉と受け取っておこう」

「ナツキのパーカーも高そうじゃん!」

「キッズブランドか?」

 ひどい……。

 尻叩きにしたのはガキに見えるからなんだ……。

 あんまりだ、雨宮!!

 こうして俺にしては珍しく、にぎやかな時間をすごしながら電車移動した。


 鶯谷高校は駅が二駅ほど離れている。

 アリスモールに少し近い。

 待ち合わせ場所に、三人は先に来ているんだろうか?

 俺はアリスモールの送迎バスの出ている駅まで行くと、アヤメとラインできるよう持ってきたスマホを取り出した。


「……まさか、あれじゃねーよな?」

 見ると男はいないが、女二人がアリスモール行きのバスが来ているのに雨宮と石田先輩は無視してベンチに腰掛けている。

 一人は、ボレロに大きく胸元の開いたミニスカワンピを着ている。

 髪は肩の辺りだが内巻きにしていて時間がかかっていそう。

 どちらのお店に在籍で?といった感じ。

 もう一人女の子の服はさらに奇抜で、ビーズと刺繍に彩られたアイボリーのカーディガンに、バルーンスカートになっているワンピースは、レースやフリルやリボンがごてごてとついている。

 カーディガンやロングソックスが体の露出をおさえているものの、ロリータ一歩手前だ。そして、腰のあたりまであるロングヘアはツインテール。

 確かに二人とも顔立ちや体型にあった服装なんだけど。


「ぼ、僕は、帰る!」

「好きにすればいい」

 雨宮の無情な一言に石田先輩は涙目になった。

「遅れた。悪ぃ」

 不意に後ろから声がして、振り向くとタンクトップ一枚にカーゴパンツの男が立っていた。このむさ苦しいのがユズハだろう。トラックの運転手かと思った。

 異様な組み合わせじゃないか、このトリオ!?


「あ、あの……」

「あたし、アヤメ」

 ロリータ一歩手前さんが挨拶。

「あたしはセツナです」

 お水のお姉さんみたいなのも挨拶してくる。

「俺はユズハ」

 トラックの運転手みたいな年齢いくつだ!?って奴が名乗った。

「じゃ、バスに乗りましょ」

 あああ、雨宮や石田先輩の服装ぐらい、今、思えば普通だったな……。


 それからやってきた、デコレーションケーキみたいな姿をしたバスに乗り込む。

 アヤメがレーズンパンみたいなのに乗りたいとダダをこねたが、次に来る時間を見ると一時間後だったのでユズハに却下された。

 バスに乗り込むと、セツナが新品のメッセージカードを出して、三枚ずつ各自に配る。

「今回、リアルでは初対面でしょ。そこに名前とか、ラインとか、携帯番号とか、自己紹介とか、書けそうなことがあったら書いて、初対面の人に渡して」

 俺が何を書こうか迷っていると、石田先輩が雨宮のカードをカンニングしているのが見えた。

 なるほどー。こういう時はカンニングかー。


 雨宮は本名と、フリーメールのメルアド、携帯番号と最寄り駅、学校名を書き込んでいた。

 ラインとか、面倒なんだな。

 俺達も雨宮にならう。

 書いている最中にユズハからカードを渡された。

『大塚 樹 16歳。市立鶯谷高校一年』

 後はメルアドと携帯番号、最寄り駅が書かれている。

 セツナもすぐにカードを書き終えた。

『水谷 若葉 17歳。市立鶯谷高校一年』

 え?

 留年!?

 そういえば、ユズハも五月の頭に16歳って留年の可能性がある。

 アヤメだけイラストの描き込みをしているようで、なかなかメッセージカードが完成しなかった。

「バス、もうつくよ」

「ダメ!! デコレーションができてない!!」

「いいから、くれ」

 石田先輩と無言で手を出す雨宮に、デコレーション前のカードをむしりとられて、アヤメは彼らを睨んだ。

『北沢 美影 15歳。市立鶯谷高校一年』

 全員年齢がばらばらなんだなー。

 ようやくデコレーションが終わったメッセージカードを、俺はアヤメから受け取って、パスケースにしまった。

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