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1.異世界向け、救世主始めました。

「それではなりたい職業を思い浮かべて目を閉じてください」


この世界には異世界を対象にした、救世主を派遣する仕事が存在する。

その依頼に合わせて、職業チェンジをして異世界に赴く。

そこで依頼を解決して元に戻るっていう仕事内容だ。

危険と隣り合わせの為、高収入。男なら憧れる職業の一つだ。

しかも、異世界に愛人作り放題…。一般人は異世界間の移動は禁止されているから絶対に相手にバレない。

オフの時は好きな世界に遊びに行ける特権付きだから…ハーレムを作る事が夢じゃないのだ。

この点が、この仕事の醍醐味とも言える。


俺は努力の甲斐あって、そんな職業に就くことが出来た、これから最初の依頼に向けて転職しようとしている。




俺は目を閉じて初めての依頼に最適な職業を思い浮かべる。

人々を襲う凶悪な熊から村を守って欲しいって内容だったな。

ならば、なりたい職業は…熊といえばやはり武道家だろうな。


俺は武道家のイメージを浮かべる。武道家と言えば、編み込んだひとつ結びの特徴的な髪型がまず思い浮かぶ。

胴着の色は…オレンジより緑の方が似合うだろう。


よし、イメージは固まった。俺の身体が眩い光に包まれる。

へぇ…転職ってこんな感じなのか。人生初めての転職にも関わらず、意外に冷静な自分に苦笑する。


「無事転職は完了しましたよ」


どうやら終わったらしい。

鏡の前に移動して自分の姿を確認する。

おお…イメージ通り武道家らしい仕上がりになっている。

これならば、熊とか楽勝だな。早速、俺の助けを求めてる世界に派遣してもらうとしよう。


「終わったなら早速飛ばしてくれ」


目の前の女神官に頼む。

しかし、ここで思いもよらぬ返答がきた。


「え?それは無理ですよ。レベル1で勝てるとでも?わざわざ死にに行くとか認められません。急いで修行してください」


なんだと…?修行するところから始まる…だと…。

もっと即戦力的な待遇にするとか、話の進行的に色々考慮しないといけない事があるだろうよ。


「あのさ…修行はいいけど、すぐに強くなれたりするよな?」


「なんということを…武道とは日々の研鑽があってこそなのよ!?そんな物語の主人公みたいな話があるわけないでしょ。くだらない事言ってないで早く修行を始めなさい!!」


なんだか凄い納得がいかないけど、こうして無駄に時間を過ごしている間にも、熊の被害に遭ってる人が居るはずだ。

俺は急いで強くならないといけない。

だが、その前にどうしても確認しておきたい事がある。


「修行の前に質問したいのだけど、俺が修行している間に…村が全滅とかいうオチはないよね?」


「そんな本末転倒な話になるわけないでしょ?あなたを異世界に送ってくれるゲートキーパーがしっかり時間を調整してくれるから安心して修行していいわよ。とは言っても時間の流れがこことは違う特別な場所で修行してもらうわ。熊を倒すぐらいなら、1ヶ月もその場所で修行すれば十分よ」


これはあれか?そこで過ごした1ヶ月がこの世界の数年に匹敵するみたいな不思議体験の事を言ってるのだろうか?

そんな便利な場所があるなら、急いで強くなってやる。

待ってろよ村人達よ、すぐに助けに行ってやるからな!!


〜〜〜〜1ヶ月後〜〜〜〜


「とても鍛えられましたね。これなら熊は問題なく討伐できるでしょう」


女神官は俺の鍛錬した身体を見て満足そうに頷いている。

その不思議な場所でら体感で1年ぐらい鍛錬した様に思える。

自分で言うのも何だが、かなりいい感じに強くなっていると思う。


「じゃ、さっそく俺の助けを求める世界に送ってくれ」


「そうですね。では最初の依頼です、しっかりやり遂げて下さいね」


そう言って神官の隣に居る、老人が俺に手をかざしてくる。

このじいさんがゲートキーパーと言われる存在か。

手がプルプルしてるけど…これ大丈夫だよな?


「ちょえ……※※※わ!※∪∴あ☆」


え…?このじいちゃん何言ってるんだ?これ呪文とかそういうの?何かしっかり喋れてない気がするけど…大丈夫だよな?


転職の時の様に、俺の身体が眩い光に包まれる。

あまりの眩しさに目を閉じる。光りが収まったであろうタイミングで目を開けば、知らない村の前に居た。

村から人影がこちらに向かってくる。その人影が近くまで寄って来た頃に確認した姿は老人だった。

この村の長だろうか?


「貴様がこの村を助けに来た救世主なんじゃな?」


なんだか横柄な態度だな。目上だからな…多少の失礼には目を瞑ろう。


「ああ、俺が来たからには安心して…『このたわけ者が!どのツラ下げて今更来れるんじゃ!!もう遅いわ!!』」


あれ…俺何故だか怒られた?

ちょい待ち、意味が分からないんだけど。


「遅いって何ですか…。こちら間に合う様に助けに来たはずですが?」


「ふざけた事を抜かすでない。貴様が来なかったせいで村は…」


「まさか…全滅したのか…?」


「なわけあるか。縁起でもない事を言うんじゃないわい」


なんだ…無事だったのか。全くこのじいさん、焦らせやがって…。


「貴様が遅かったせいで勇者とかいう奴に熊は退治してもらったわい」


なんだと?じゃ、俺の出る幕ないじゃん…。てか、全然間に合ってねえええ〜。ゲートキーパーのじいさん、やっぱり使えない奴だったか。

まーでも被害が食い止められたならよかった。依頼も解決済みって事ならここに用はないか。

解決済みって事で元の世界に戻ろう。


「無事解決したならば良かった。じゃそういう事なら、俺帰りますね」


「貴様…何を言ってるんじゃ?解決だと…?」


あれ?じいさんの顔が凄い怒ってるのは何故だろう?


「ふざけた事を抜かすでない。貴様が来なかったせいで儂らはその勇者にとんでもないお礼を要求されて…この村はもはや何も持っておらん。明日の生活すらままならぬ状況じゃ。一体どうしてくれるんじゃ!?」


え…?なに…勇者様って人助けの慈善活動をモットーにしてるもんじゃないの?

高額なお礼を請求だと…?しかも何故それが俺のせいになってるんだ?

急展開な事態に俺の思考がついていけないでいる。


「貴様…逃げるなよ?もちろん…責任ぐらい取ってくれるんじゃろうな…?」


しかも、村の方から多数の人影がこちらに向かってくる。

ああ…ダメだ…これは逃げられない。




こうして俺の初めての依頼が幕を開けた。


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