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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

冷蔵庫の中の魔王様

作者: 泪

 2~3日前からヴ~ンヴ~ンと変な音がしていた冷蔵庫が今朝はまったく音をたてていない、嫌な予感がしつつ冷蔵庫のドアを開けると室内灯が付かない……

「あっちゃ~っ、この冷蔵庫とうとうダメになっちゃったか~」

 けど冬で良かったよ、寒いし今日1日位このままでも腐らないでしょ、最近残業続きで料理してなかったからほとんど空だしね。


「ねぇねぇ真理、冬のボーナス何に使う?予定無かったら台湾に行かない?良いツアー見つけたの」

 社食でお昼を食べながら同僚の綾が話かけてくる

「あーゴメン、今朝家の冷蔵庫が壊れちゃったから新しい冷蔵庫買わなきゃなの、旅行に迄まわすお金ないよ~」

「そっか~、今回は残念だけど又旅行に行こうね」

 なんて話してたら、私のケータイが鳴り出した。

 ……あれっ発信者、お父さん?こんな時間に何かあったのかな?


「真理、おばあちゃんが亡くなったよ」

「えっ、おばあちゃんって梅おばあちゃん?先週電話した時は元気だったよ」

「ああ、今朝老人会に行って心筋梗塞で倒れたらしい、すぐに救急車を呼んでくれたんだが……明日通夜で明後日葬式の予定だ、お前も今晩からこっちに来てくれ」


 父方の祖母の梅おばあちゃん、孫は私一人だったし母が私の小さい頃に亡くなったって事もあり凄く可愛がってもらったんだよね。

 先週末も自家製の野菜を送ってくれて、電話したら元気に話したりしてたのに……

「真理、どうしたの?」

 綾が心配そうにこちらを見てる

「おばあちゃんが亡くなったって……」



 葬儀が終り、梅おばあちゃんの家で父とこれからの事を話していると、隣の家のおばちゃんがやってきた、

「真理ちゃん、梅おばあちゃんから伝言があったんだよ『私が死んだら、キィちゃんを真理ちゃんに貰ってほしい。真理ちゃんならキィちゃんと仲良くなれるはずよ』だって」

 梅おばあちゃん、何か動物飼ってたっけ?

 葬儀の間この家に寝泊まりしてたけど、何もいなかったよね

「おばさん、キィちゃんって誰の事か分かる?」

「あはははは、梅おばあちゃん台所の黄色い冷蔵庫をキィちゃんって呼んで大事にしてたのよ~、じゃ確かに伝えたからね」

 え~っ冷蔵庫……冷蔵庫のキィちゃんって……

「オフクロ、あの冷蔵庫オヤジの形見だって、大事にしてたからな……名前までつけてたなんて、やっぱり一人暮らしは寂しかったのか……」

 なんて、お父さんがぽつりと呟いた。



 私が子供の頃から、梅おばあちゃんの家にはどこの家にもあるような白い大きな物と、高さ100㎝程の黄色い2ドアタイプの2つの冷蔵庫があった。

 おばあちゃんの一人暮らしに冷蔵庫が2つも要らないはずで、実際小さい方の冷蔵庫は何時も空っぽだったけど……確かに梅おばあちゃんはソレを大事にしてた。


 何時も綺麗に掃除して、カビなんて生えてなかったし、冷凍室の霜取りもこまめにしてたなぁ、

「真理どうする?オフクロの遺言とはいえ一人暮らしで冷蔵庫2つも要らないだろう、ここから持って帰るのも手間だしなぁ」

 おばあちゃんの事を思い出してると、父が困ったように問いかけてきた。

「あ、そうだ梅おばあちゃんが亡くなった日の朝、家の冷蔵庫壊れたんだった。調度買わなきゃと思ってたから持って帰るよ、まだ使えるんだよね」

 これも虫の知らせって言うのかな? 梅おばあちゃん家の黄色い冷蔵庫、可愛い感じで私の部屋に合いそうだし……問題はどうやって持って帰るかだけど

「持って帰るって、かなり重いぞ。運送屋に頼んだ方がいい、今日頼めば明後日の土曜には届くだろう」

「そうする、明日1日位なら冷蔵庫無しでも何とかなるし、仕事忙しいから明日は会社に行かなきゃ、お父さんはどうする?」

「俺はこのまま日曜までこっちにいるよ、まだ色々やることあるからな」

「わかった、お父さんも体に気を付けてね」

 


 黄色い冷蔵庫のキィちゃん?が我が家にやって来たその夜、冷蔵庫の中からペチペチと何かを叩くような音が……

『この黄色い冷蔵庫の中にはね、可愛い妖精さんが住んでるのよ』

 ふと子供の頃、梅おばあちゃんに言われた言葉を思い出した……まさかね……古い物だし水漏れでもしてるのかな?

 そっと冷蔵庫のドアを開け中を覗くと……

『きゅるる~ん、梅おばあちゃんキィちゃん寂しかったよ~』

 真っ白い毛玉が叫びながら飛びだしてきて、反射的に冷蔵庫のドアを閉じた。

「今の何?何か毛玉みたいなの居た!しかも、喋った?」

 冷蔵庫のドアを叩く音はまだ続いている上に何か声もかすかに聞こえてくる……

 おそるおそる、もう一度冷蔵庫のドアを開けると

『急にドアを閉めるなんてひどいよ~、キィちゃん痛かったの~』

 やっぱり居た!真っ白い毛玉の不思議生物が喋ってる?


 とりあえず、現状把握の為に毛玉と話し合いをします……

「うぇ~ん、梅おばあちゃ~ん」

 おばあちゃんが亡くなった事を教えると、毛玉は円らな目からボロボロ涙をこぼして泣いちゃった、つられて私もひとしきり泣いた後に本題を。

「ねぇキィちゃん?おばあちゃんはキィちゃんを妖精さんって言ってたけど……」

「キィちゃん、妖精じゃないよ~」

 やっぱり違うよね、もしかして妖怪?何だか一緒に泣いたせいか、怖さは全然感じないけど

「じゃあ、キィちゃんは何かな?」

「キィちゃんはね~、魔王だよ♥」


 ……えっと、あれ?今何か変な単語が、聞き間違いだよね。

「キィちゃん今、魔王って聞こえた気がするけど、聞き間違いだよね、もう一度教えてくれる?」

「だから~、キィちゃんはマ・オ・ウだよ」

 は?これが魔王?この手のひらサイズの毛玉生物が?

「む~、真理ちゃん信じてないな~。キィちゃん怒っちゃうぞ、キィちゃん怒ると怖いんだぞ!」

 いやだって、手のひらサイズの毛玉に何が出来るの?大体、現代日本に魔王っておかしいでしょ。

「もうキィちゃん怒っちゃった!えいっ、アイスブリザード!」

 冷蔵庫を覗き込んでた顔に、小さな雪の様な氷の粒が吹き付けてきた……ちょっと冷たいけど痛くはない、たいして攻撃力は無さそうだけどね。


「キィちゃん、これって魔法?人に向かって魔法使っちゃダメって言われた事無いかな?」

 あ、しまったって顔した……やっぱりね、おばあちゃん躾はしっかりするタイプだったもの。

「梅おばあちゃん、ダメって言ってた。真理ちゃんごめんなさい……でも~、やっぱりこっちの世界は魔法の威力が小さくなっちゃう~」


 こっちの世界?キィちゃんは魔法が使えるみたいだし、こんな人語を話す毛玉生物いたら絶対ニュースになってるよね、って事は

「キィちゃんは、こことは別の世界に住んでたの?」

「うん、メイズって世界の魔王だったの。でもね、聖女が魔王城にキィちゃんを殺しに来たの」

 聖女が魔王を殺しにって……あれ?じゃあキィちゃん逃げて来たのかな?


 でも先ずは、これを聞いとかないと

「キィちゃん何か悪い事したの?」

「キィちゃん悪い事しないよ、でもね聖女が『魔王を倒して、逆ハーよ!』って叫んでたの」

 ははは、その聖女ってこっちの世界の子?


 とりあえずキィちゃんから聞いた話をまとめると、魔族の暮らす魔王国は人間の国とも普通に国交があったし、戦争もしてなかった。

 けど、ある国が王様の結婚相手として異世界の少女を召還したら彼女が『魔王は悪者、倒すべき』とか言い出して、いきなり魔王城に攻めて来たらしい。

 キィちゃんは聖女に殺される間際に、魔王国の宰相のトーコさんの魔法で逃がしてもらったって……ツッコミ所満載なんだけど。


 それに、おばあちゃんがこの冷蔵庫に、妖精が居るって言ってたのは20年位前だよね、キィちゃんそんな前から居たの?

 帰れないのかな?宰相のトーコさんって、キィちゃん必死で探してそうだよね。

「ねぇキィちゃん、メイズには帰れないの?」

「うぇ~ん、帰りたいよ~トーコ~!」

 ああぁ又泣かしちゃった、キィちゃんをよしよしして宥めてるんだけど、ヒンヤリサラサラの毛皮が気持ちいい~

「ごらぁ、うちの魔王苛めたのは、何処のどいつだ!」

 冷蔵庫の中に居るキィちゃんの後ろ側に、大きな青い犬?

「魔王いた~!!って泣いてる?誰に泣かされた?俺がぶっ飛ばしてやろうか」

 犬がしゃべった?魔王って、キィちゃんの世界の犬?

「きゅるる~ん、トーコいた~!キィちゃん寂しかったの、帰りたいよ~!」

 トーコ?この犬がトーコさん……



 ……さて、これからどうなる私?

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