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螺旋 音楽  作者: RINFAM
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序章

大昔に書いたファンタジー小説です。きちんと完結しているので、せっかくだから投稿してみました。さすがに文章が拙い(今もですが)部分がありますので、時々、時間を見て修正していこうと思っています。よろしければお付き合いください。

 悪夢だ。これは悪い夢に違いない。


 嘘みたいだ。ほんの今朝まで、いつもと同じ日常が僕を包んでいてくれたのに。


 いつものように起きて、いつものように顔を洗って、学校へ来て、友達と話して、授業を……ああ。夢なら早く醒めてほしい。これが本当に夢ならば。


 予兆は地震だった。


 最初に少し大きな地震が起こって、先生の言う通り皆と机の下へ隠れた。各々悲鳴を上げながらも、僕らはちょっとだけわくわくしていた。


 そう、例えばジェットコースターに乗った時みたいに。


 皆、いつも直ぐにおさまるからと、ちっとも心配していなかった。

やがてそれでは済まなくなった。地震は大きくなるばかりで、まるでおさまらなかったのだ。


 教室のガラスにヒビが入り、次々と割れ始めた。

 天井からも、破裂した蛍光灯の破片が、バラバラと降り注いでくる。

 

 冷静を装っていた先生が、真っ先に逃げ出した。

 途端、パニックになった。みんな散り散りに逃げ出した。


 どぉん、という轟音とともに、ついに校舎が壊れ始めた。めきめきと壁が倒れ、かろうじて残っていたガラスが割れて弾け飛ぶ。つんざくような悲鳴。天井が落ち、床が抜けるたびに、クラスメイトが消えていく。


 血。真っ赤な血。

鉄臭い匂い。むせかえるほど。


 嘘みたいだ。こんなこと。誰か、誰か嘘だって言ってよ。

 目の前の光景が信じられずにいると、また一人、二人と、クラスメイトが倒れて動かなくなった。じわりとその体のまわりに血溜まりができる。そしてもう、ぴくりともしない。


 ああ、僕も死ぬのだ。あんなふうに。


 ─────怖い。


 思った瞬間、電気が走るように恐怖が涌き起こってきた。いやだ。嫌だ。イヤだ。死ぬのは怖い。死ぬのは嫌。一人はいや。一人きりで歩くのはいや。


 もう独りぽっちになりたくない。


「ーーーーーーーーっ!!」

 誰かの名を呼ぼうとして口を開ける。舌は張り付いて、まるで言う事をきかない。体も動かない。逃げ出したいのに、机の下から一歩も動けない。


 助けて。助けて。こんなのは嫌だ。やっと見つけたのに。


 イヤな音がした。僕の真上から。天井だ。落ちる。落ちてくる。僕の上へ。きっともうすぐ。


 僕は叫んだ。狂ったように叫び続けた。なにか言っていたような気もする。だけど体はやっぱり動かない。誰かが僕の名を呼んだような気がした。振り返ろうとして……。


 気が付くと、目の前は真っ暗だった。


 静寂。一瞬前までの、耳をつんざく轟音が嘘みたい。

生暖かい液体が、僕の体から流れ出している。鉄の匂い。血。ああ、そうか……血が流れているんだ。


 ─────死。


 死ぬんだ僕。死んじゃうんだ。もう会えない。一人ぽっち。

 意識が遠のいていく。もう駄目だ。


 暗黒。引き込まれていく。



 心臓の音だけが、なぜかいつまでも耳に響いていた。


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