攻略対象メガネ枠。のはず。
オッス、あたしアザトカワイーナ!
どこにでもいるスパークする乙女ゲー恋愛脳転生少女よ!
さて人生を不慮の事故かなんかで終えたらしいあたしですが、
どうやらここはかつてプレイしていた乙女ゲー世界の中みたいです。
生まれ変わったからには攻略しちゃおうじゃありませんか!
せっかくのピンク髪ヒロインになれたんだし!
タイトルが思い出せないけど、キャラとか設定はぼんやり記憶に。
メイン攻略対象が確か…
文武両道の俺様王子。金髪碧眼。
体力枠の将軍の長男。赤髪赤目。
知的枠の宰相の次男。銀髪青目。
癒し枠の大神官の孫。茶髪金目。
色黒枠の留学生王子。黒髪黒目。
あと数人サブクエストで落とせるのがいたけど、こっちはいいや。
全キャラコンプはメインとの二択もあるから多分出来ないし。
現在はチュートリアルが終わって、メインキャラとのエンカウント。
王子、長男、孫、留学生は無事済ませたのだけど、次男がまだ。
攻略情報ではこの時間なら図書館で本を読んでるはずなんだけど…。
◆
おお、いたいた。
窓際の席に座って、そよ風に髪をなびかせながら本を読んで…?
うん、確かに攻略情報通り本を読んでいる。でもなにか違和感が。
以前見た画像とどこか違う。なんだろう、何が違ってる?
ああ、見た画像だと両手で本を開いてたっけ。今は片手だ。
百科事典かなにかだったのが、文庫本サイズになってるんだ。
よく覚えてたなー、偉いあたし。こんな小さい異変に気付くなんて。
ええと、確かこの後近づいて声をかけるんだったよね。
「何の本を読んでいるんですか?」って。
そうしたらびっくりしてこっちを向くんだった。
図書館なので音を立てないように静かに近づいて、っと。
…あれ?あたし近づいてるよね?なんか遠近感おかしくなった?
いやまって、読んでる本はぐんぐん大きくなっていくけど。
なんか大きくない?次男。以前の画像より。
だけど原作と違う会話しちゃうと、攻略にも影響出ちゃうよね?
この場は原作通り声をかけないとダメだと思う。
「何の本を読んでいるんですか?」
あ、良かった良かった。ちゃんと驚いて立ち上がってくれた。
…身長大きいね?なんかすごく大きいね?
将軍の長男よりも、多分二回りぐらい大きいよね?
集合イラストでは長男の方が大きかったような。
彼はかけていたメガネをくいっと上げて、
「えっ?ああ、ちょっと調べたいものがあってね。君は?」
んー、セリフは原作通りなんだけど。いいや、続けよう。
「あ、あたし新入生のアザトカワイーナと言います。
よろしくお願いしますね、先輩」
にこっと微笑むことも忘れない。立つ角度も練習しました!
「そうか、僕はシラベルト、君の一年先輩だ。
学園では気軽に声をかけてくれて構わないよ。
この本は『世界の筋肉図鑑』だ。
広背筋の効率的なトレーニング法が知りたくてね」
…こんなセリフあったっけ?
いやいや、そこは問題じゃないのよ。受け答えさえ間違えなきゃ。
「そうなんですか、勉強熱心なんですね。
あたしにもわからない事があったら教えてくださいね」
原作では確かこう返したはず。
で、図書館に行くとエンカウントできるようになるんだよね。
そうするとシラベルト様は輝くような笑顔を見せてくれて、
「うん。なんでも聞いてくれていいよ。
取り敢えず君は基礎体力も足りなそうだから…
そうだな、この辺りから参考にするといい」
と、分厚い本を十冊ほどあたしに手渡して去っていった。重たい。
よろけながら本を机に置いて表紙を見る。
「はじめてのきんにく」
「ささみと豆は体のベストフレンド」
「たんぱくな君」
…何を学べと…これ読んでおかないと攻略が遠のく?
原作と違う世界ってことかな?いやでもセリフは似ていたし。
◆
数日後、メインキャラ攻略は順調に続いている。
で、魔術訓練場を通りがかった時。女子生徒達がきゃあきゃあと。
見れば他の男子生徒に混ざってシラベルト様が練習している。
設定では全属性持ちの魔術の名手だったのよね。
…やっぱり身長大きいよね?
一人一人順番に、的へ向かって攻撃魔術を放っている。
次はシラベルト様の番だ。暑いのか上着を脱いだ。
…なんか二回りぐらいシラベルト様が膨れ上がったような。
「シラベルト君、相変わらず凄い体格だよなあ」
「制服着ていると全然わかんないけどなあ」
と上級生の男子生徒達が口々に言ってるんだけど。
いや、おかしいから。着ていても分かるぐらい凄い体格だから!
「ははっ、よく言われるよ。着やせしちゃうんだよね」
笑顔で答えるシラベルト様。
確かに脱いだらさらに物凄いんです、だけども!
脱ぐ前から凄いから!
身体をごきんごきん鳴らしながら、シラベルト様が所定位置に立つ。
この世界では、術名を唱えると魔術が発動するのだけど。
右こぶしを後ろに引いて、思いっきり溜めを作ってる。
「ライトニングフィストォォォォォ!」
の掛け声…いや術名とともに、溜めた右こぶしを的に突き出した。
シラベルト様の右こぶしからまばゆいばかりの雷光がほとばしる!
轟音を上げて的が木っ端みじんに砕け釣り、後ろの壁も破壊した。
それを見て女子生徒達はきゃあきゃあ言っている。
いや恐怖の悲鳴でなくて歓声で。
「やっぱり魔術の名手だよな、シラベルト君。
今の術はどういうものなんだい?」
男子生徒の問いにシラベルト様が答えてる。
「ああ、あれは空気と拳との摩擦で静電気を起こして、
それを的に向かって一気に放出したんだよ。
拳の初速が最大のポイントかな」
…それは果たして魔術?むしろ物理?いや物理でもトンデモ物理?
なるほどー、とこの説明で男子生徒達は納得したようね。
真似しようとして腕を振り回している人までいるわ。
少なくともこんなシーンは原作になかったと思う。
何周も回って全キャラコンプしたはずだけど、覚えは全くない。
まだ見てない抜けのスチルがあったのかな…?
そうすると、このまま続けてても攻略できるの、これ?
きちんとフラグ立ってるのかも自信なくなって来た。
あああ、ほんとにどうしよう。エンディングまでいけるのかな。
シラベルト様への称賛の声をよそに、あたしは悩んでいる。
肉体系連日投稿。
なまじ「正解」が分かっていると足引っ張られるだろうなあ。




