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どこかの異世界で

攻略対象メガネ枠。のはず。

作者: 浮月重月
掲載日:2026/10/03

オッス、あたしアザトカワイーナ!

どこにでもいるスパークする乙女ゲー恋愛脳転生少女よ!


さて人生を不慮の事故かなんかで終えたらしいあたしですが、

どうやらここはかつてプレイしていた乙女ゲー世界の中みたいです。

生まれ変わったからには攻略しちゃおうじゃありませんか!

せっかくのピンク髪ヒロインになれたんだし!


タイトルが思い出せないけど、キャラとか設定はぼんやり記憶に。

メイン攻略対象が確か…


文武両道の俺様王子。金髪碧眼。

体力枠の将軍の長男。赤髪赤目。

知的枠の宰相の次男。銀髪青目。

癒し枠の大神官の孫。茶髪金目。

色黒枠の留学生王子。黒髪黒目。


あと数人サブクエストで落とせるのがいたけど、こっちはいいや。

全キャラコンプはメインとの二択もあるから多分出来ないし。


現在はチュートリアルが終わって、メインキャラとのエンカウント。

王子、長男、孫、留学生は無事済ませたのだけど、次男がまだ。

攻略情報ではこの時間なら図書館で本を読んでるはずなんだけど…。


◆


おお、いたいた。

窓際の席に座って、そよ風に髪をなびかせながら本を読んで…?


うん、確かに攻略情報通り本を読んでいる。でもなにか違和感が。

以前見た画像とどこか違う。なんだろう、何が違ってる?


ああ、見た画像だと両手で本を開いてたっけ。今は片手だ。

百科事典かなにかだったのが、文庫本サイズになってるんだ。

よく覚えてたなー、偉いあたし。こんな小さい異変に気付くなんて。


ええと、確かこの後近づいて声をかけるんだったよね。

「何の本を読んでいるんですか?」って。

そうしたらびっくりしてこっちを向くんだった。


図書館なので音を立てないように静かに近づいて、っと。

…あれ?あたし近づいてるよね?なんか遠近感おかしくなった?

いやまって、読んでる本はぐんぐん大きくなっていくけど。

なんか大きくない?次男。以前の画像より。


だけど原作と違う会話しちゃうと、攻略にも影響出ちゃうよね?

この場は原作通り声をかけないとダメだと思う。


「何の本を読んでいるんですか?」


あ、良かった良かった。ちゃんと驚いて立ち上がってくれた。


…身長大きいね?なんかすごく大きいね?

将軍の長男よりも、多分二回りぐらい大きいよね?

集合イラストでは長男の方が大きかったような。

彼はかけていたメガネをくいっと上げて、


「えっ?ああ、ちょっと調べたいものがあってね。君は?」


んー、セリフは原作通りなんだけど。いいや、続けよう。


「あ、あたし新入生のアザトカワイーナと言います。

 よろしくお願いしますね、先輩」


にこっと微笑むことも忘れない。立つ角度も練習しました!


「そうか、僕はシラベルト、君の一年先輩だ。

 学園では気軽に声をかけてくれて構わないよ。


 この本は『世界の筋肉図鑑』だ。

 広背筋の効率的なトレーニング法が知りたくてね」


…こんなセリフあったっけ?

いやいや、そこは問題じゃないのよ。受け答えさえ間違えなきゃ。


「そうなんですか、勉強熱心なんですね。

 あたしにもわからない事があったら教えてくださいね」


原作では確かこう返したはず。

で、図書館に行くとエンカウントできるようになるんだよね。

そうするとシラベルト様は輝くような笑顔を見せてくれて、


「うん。なんでも聞いてくれていいよ。

 取り敢えず君は基礎体力も足りなそうだから…

 そうだな、この辺りから参考にするといい」


と、分厚い本を十冊ほどあたしに手渡して去っていった。重たい。

よろけながら本を机に置いて表紙を見る。


「はじめてのきんにく」

「ささみと豆は体のベストフレンド」

「たんぱくな君」


…何を学べと…これ読んでおかないと攻略が遠のく?

原作と違う世界ってことかな?いやでもセリフは似ていたし。


◆


数日後、メインキャラ攻略は順調に続いている。

で、魔術訓練場を通りがかった時。女子生徒達がきゃあきゃあと。

見れば他の男子生徒に混ざってシラベルト様が練習している。

設定では全属性持ちの魔術の名手だったのよね。


…やっぱり身長大きいよね?


一人一人順番に、的へ向かって攻撃魔術を放っている。

次はシラベルト様の番だ。暑いのか上着を脱いだ。


…なんか二回りぐらいシラベルト様が膨れ上がったような。


「シラベルト君、相変わらず凄い体格だよなあ」

「制服着ていると全然わかんないけどなあ」


と上級生の男子生徒達が口々に言ってるんだけど。

いや、おかしいから。着ていても分かるぐらい凄い体格だから!


「ははっ、よく言われるよ。着やせしちゃうんだよね」


笑顔で答えるシラベルト様。

確かに脱いだらさらに物凄いんです、だけども!

脱ぐ前から凄いから!


身体をごきんごきん鳴らしながら、シラベルト様が所定位置に立つ。

この世界では、術名を唱えると魔術が発動するのだけど。

右こぶしを後ろに引いて、思いっきり溜めを作ってる。


「ライトニングフィストォォォォォ!」


の掛け声…いや術名とともに、溜めた右こぶしを的に突き出した。

シラベルト様の右こぶしからまばゆいばかりの雷光がほとばしる!

轟音を上げて的が木っ端みじんに砕け釣り、後ろの壁も破壊した。


それを見て女子生徒達はきゃあきゃあ言っている。

いや恐怖の悲鳴でなくて歓声で。


「やっぱり魔術の名手だよな、シラベルト君。

 今の術はどういうものなんだい?」


男子生徒の問いにシラベルト様が答えてる。


「ああ、あれは空気と拳との摩擦で静電気を起こして、

 それを的に向かって一気に放出したんだよ。

 拳の初速が最大のポイントかな」


…それは果たして魔術?むしろ物理?いや物理でもトンデモ物理?

なるほどー、とこの説明で男子生徒達は納得したようね。

真似しようとして腕を振り回している人までいるわ。


少なくともこんなシーンは原作になかったと思う。

何周も回って全キャラコンプしたはずだけど、覚えは全くない。

まだ見てない抜けのスチルがあったのかな…?


そうすると、このまま続けてても攻略できるの、これ?

きちんとフラグ立ってるのかも自信なくなって来た。


あああ、ほんとにどうしよう。エンディングまでいけるのかな。

シラベルト様への称賛の声をよそに、あたしは悩んでいる。

肉体系連日投稿。


なまじ「正解」が分かっていると足引っ張られるだろうなあ。

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