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第一話 春の日の転校生

春の風は、まだ少しだけ冷たかった。

窓際の席で、月城伊織(つきしろいおり)はぼんやりと校庭を眺めていた。

桜の花びらが風に流されて、ゆっくりと地面に落ちていく。


いつも通りの朝。

いつも通りの教室。


そんな何も変わらない1日になるはずだった。


「みんな席について。今日は転校生を紹介する」


担任の声で教室が少しざわつく。


この時期に転校生なんて珍しい。

クラスメイトたちの視線が一斉に教室の扉へ向いた。


「入っていいぞ」


静かに扉が開く。


教室に入ってきたのは、長い黒髪の少女だった。

春の光が窓から差し込んで、その髪をやわらかく照らしている。


少女は少し緊張した様子で黒板の前に立った。


「……えっと」


一瞬だけ言葉を探すように間を置いてから、少女は言った。


白河(しらかわ)つむぎです。よろしくお願いします」


教室のあちこちから小さな拍手が起こる。


担任が言う。


「白河はこっちの席だな」


空いてる席は、伊織の斜め前だった。


つむぎはゆっくりと歩いてくる。

そして席に戻る直前__


ふと、伊織の方を見た。


その瞬間


つむぎの表情が、ほんの少しだけ変わった。


驚いたような、

でもどこか安心したような。


不思議な顔だった。


伊織は思わず視線をそらす。


(……なんだ?)


ただそれだけのことなのに、

なぜか胸の奥に小さな違和感が残った。

________________________


放課後。


伊織はいつも通り一人で帰ろうとしていた。


校門を出たところで後ろから声がする。


「月城くん」


振り返ると、そこに立っていたのはあの転校生だった。


「……俺?」

「うん」


つむぎは少し息を整えてから言った。


「ちょっとだけ、話していい?」


突然のことに伊織は戸惑う。


「別にいいけど……」

(まさか告白?出会って初日で?な訳ないか。)


二人は校門の横にある桜の木に立った。


花びらが風に揺れている。


つむぎは少しだけ空を見上げてから、伊織に向き直った。


そして言った。


「信じないと思うけど。 私未来から来たの」


伊織は一瞬、言葉を失った。


「……え?」


思わず聞き返す。


つむぎは真剣な顔のまま続ける。


「多分すぐには信じてもらえないと思う。だけど!本当なの」


伊織は少し笑いながら


「ドッキリとか?」


「違う!!」


つむぎは小さく首を振る。


そして、静かに言った。


「私が未来から来た理由はね。 やり残したことがあるんだ」


伊織が聞く。


「なにを?」


つむぎは少し笑う。


「それは秘密」






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