第十一章51 【覇王杯/オーバーロード・カップ1回戦/第8試合】11/憧れ【佳乃】&【翠詠】×【シェリア】2
【佳乃】は憧れの【クリエ・イター】に会えると知り、飛び上がって喜んだ。
と、同時に、【クリエ・イター】はスケベジジイである祖父、【翠詠】を連れて行かなくてはならないと悩んだ。
なぜならば、【クリエ・イター】は、【翠詠】の【一人芝居】を見て、彼に会いたいと思ったのだ。
その【一人芝居】を撮影していたのが、【佳乃】だったのだが、当時は祖父の演技が滑稽でおもしろいと思ったからネットに上げていただけだった。
その【一人芝居】は、【師匠】として【佳乃】がお手本を見せたのだが、それを【翠詠】がアレンジして、元々、【芸術性】の高い【内容】だったものを【馬鹿な老人が転げ回って間抜けな事をする喜劇】に変えて見せたのだ。
解釈の違いで、ここまでお手本と違った作品が出来るのか?と逆に感心したのを当時覚えていた。
それで先にお手本として、【人生】と言うタイトルを付けた【一人芝居】を【佳乃】が演じ、それを【祖父の手】に掛かるとこう変わると言う感じで【翠詠】に同じ【人生】と言うタイトルの【一人芝居】を演じてもらった。
確かに、祖父より人生経験が圧倒的に少ない【佳乃】が演じる【人生】と世の中の酸いも甘いもたっぷりと経験してきた【翠詠】が演じる【人生】では全く重みが違うし、題材とするものが目に映ったものなので、内容がガラッと変わる。
【翠詠】の【一人芝居】には何故か【狸】が出て来て、化かされたと言う内容になっていた。
【クリエ・イター】は、その【狸】の演技が気に入ったとの事だった。
【クリエ・イター】が憧れる存在は、無類の【狸好き】だから、その話を詳しく聞きたいとの事だった。
ちなみに、【狸好き】というのは【芳一】の事である。
【芳一】は幼稚園のお遊戯会で【狸】の役をやってからの【狸好き】であり、【狸好き】には悪い人は居ないとまで思っていると言うエピソードがあるのだが、それは知るよしもない。
だが、間違いなく、【狸】と言うキーワードが縁となり、【佳乃】は【クリエ・イター】と会うきっかけを得たのである。
それが例え、恥ずかしいと思っている【不良祖父】のこぶつきであったとしてもだ。
背に腹は代えられないとして、
「いーい、おじいちゃん。
これから憧れの人と会うんだから絶対にエッチな事しちゃ駄目だからね。
それで嫌われたら、祖父と孫娘の縁、切らせてもらうから。
死んでもやるんじゃないわよ」
と釘を刺した。
【翠詠】は、
「わ、儂に死ねと言うのか?
儂は若いおなごのエキスを吸わんと死んでしまうんじゃ」
と孫娘にすがりつく。
【佳乃】は、
「えぇい、まとわりつくな、鬱陶しい。
【孫娘】の一生のお願いも聞けないって言うの」
と言った。
【翠詠】は、
「他の事じゃだめなのかい?」
と聞いたが、
「駄目よ。
絶対に駄目だからね」
と口を酸っぱくして言い聞かせた。
だが、半ば諦めていた。
祖父はそれでもやる男だと自覚していたからだ。
だが、結果は違っていた。