第十一章21 【覇王杯/オーバーロード・カップ1回戦/第7試合】18/偽者から見た本物4
怒り狂う【新八】を黙らせたのは、【くくは】が行った、【真核名絶対技】だった。
【くくは】は、【新八】の【真核名】を言い当て、【新八】への【生殺与奪の権利及び、絶対命令権】を得た。
【真核名】を言い当てられた【新八】は【くくは】に対しては何もする権利が無い。
【くくは】が、
「死になさい」
と命じれば、【新八】は死ぬ。
「踊りなさい」
と命じれば、踊り、
「土下座しなさい」
と命じれば土下座をし、
「首を吊って死になさい」
と命じれば死に方も選択できるのだ。
これは、行動だけではない。
「漫画を見てはなりません」
と命じれば一生漫画は見ないし、
「息を止めなさい」
と命じられれば死ぬと解っていても息を止め続けるのだ。
「腕が折れなさい」
と命じれば腕が勝手に折れるし、
「考えるのをやめなさい」
と命じれば生涯何も考える事は無くなる。
「誰か1人だけを愛しなさい」
と命じれば誰か1人以外は愛さなくなり、
「上手い絵を描きなさい」
と命じれば絵が下手だった者も勝手に上達して名画を描くのだ。
命令はどんな複雑な事でもかまわない。
「10時に起きて、朝食を取り、そこから会社に出勤して、仕事をして帰りに飲み屋によって友人と話し、22時に帰宅し、テレビを見ると言う生活を15年続けなさい」
と命令すれば、その通りに15年間行動する。
それは1日も休まず実行するし、追加で命令しない限り、その行動を違える事は無い。
どんなに困難な事でも実際に実行するということになる。
生きている限り、それを実行し続けるのだ。
その光景は正に【命令への絶対服従】である。
正にその者の全てを握ると言う技が【真核名絶対技】である。
【真核名】を言い当てられた者は言い当てた者に絶対服従。
逆らえないのだ。
だからこそ、この絶対的な力は心ない者が会得してはならないとされている。
そのため、この技術を持つ者は【本物】と呼ばれ、【実】とされ、
【名誉】を求めた者は【偽者】とされ、【名】となった。
前者は、【NNJ】、
後者は、【栄光主】、
両者の間には超えられない絶対的な壁が存在しているのである。
【くくは】とは【NNJ】の【第998席】になる女性だった。
【本物】により、【新八】は、【偽者】になる道を選択させられた。
故に、彼は【正義の味方】とは思えない振る舞いをしているのである。
彼は本物ではない。
偽者の中でも半端者である。
そんな彼が手柄を求めて、一応、身につけた技能を手に、【覇王候補】達に因縁をふっかけてきたのが今の現状である。