第十一章2 【覇王杯/オーバーロード・カップ/サイドエピソード】2/【瑠璃】の道2
【瑠璃】には新たな道、新たな目標が出来た。
それは他者の妄想を具体化させる店を持つという事である。
分かり易い例を挙げれば、理想の女の子が居るが、それをイメージする事が出来ない。
表現する事が出来ない者はたくさん居ると思う。
イラストとか造型とか出来ればそれなりにそれを表現出来ると思うが、ほとんどの人間は、それを具体化させて表現する事は出来ない。
そこで、【瑠璃】がその人間にアンケートを取ったり話を聞いたりして、そのイメージに近いものを作ったりするというサービスを行う店舗となる。
もちろん、手間もかかるのでそれなりに値段は張るが、自分の妄想が形になった喜びはそれに勝るものとなるだろう。
それを実現させるために【瑠璃】は表現力を学んでいく事になる。
もちろん、元々、イラストを描けたり、グッズを作れたりする才能はあった。
その技術などが認められて【シークレット・キャラクター・フェスティバル/秘密個性のお祭り】の【最下級真似っ子大会】への【御招待状】を貰った事もあったのだ。
だがしかし、その才能だけでは満足せずに、更に技術を磨いて、実力を高めた。
次の段階として、他者の好みを聞いて、それを具体的に表現する技術を学ぶために、【新世界創成神部】の部員、【稀乃/きのこ】の理想を聞いてそれをグッズ化させる事にしたが、そこでちょっとした問題が発生する。
【稀乃/きのこ】は、元々、【瑠璃】が6人組インディーズ・アイドルグループ、【メイドインアイドル】/【芸名/シンシア】として活動していた事を知らなかった。
そして、彼女は【シンシア】の大ファンだった。
だが、彼女は【瑠璃】との打ち合わせを続けていく内に、彼女が元、【シンシア】だと言う事がバレてしまった。
【稀乃/きのこ】は興奮し、【瑠璃】への態度が変わった。
【稀乃/きのこ】にとって【瑠璃】は同好の士だったのだが、それが推しの対象になった。
【稀乃/きのこ】は【瑠璃】にへりくだる様になり、客の要望を聞いて妄想を具現化する練習をしたかった【瑠璃】にとって【稀乃/きのこ】は練習の対象とはならなくなった。
そこで、【稀乃/きのこ】はサポートをしてもらう事にして別の練習相手を探す様になり、【新世界創成神部】の新しい部員集めが始まった。
そして、5人の新入部員を集める事に成功し、その5人の妄想を具体化させる事、例えば、【理想の相手】を【アクリルフィギュア】にして渡したり、【油絵】にして渡したり、ジオラマを作ったりするなどして渡したりした。
そんな事を今までしてきたが、練習としては十分と判断したので、【瑠璃】は改めて、現実世界でその【店】を出すことにした。
【清楚系お嬢様風デュオシンガーソングライター】としての仕事があるため、そんなにたくさん仕事はこなせないが、業界関係者の中で一ヶ月に3人から5人くらいを目処に、自分の妄想を具体化させて表現させてくれませんか?と言って商売を始める事にした。
【瑠璃】の表現力の高さは業界では割と有名であり、顧客はすぐについたのだった。
こうして、【瑠璃】もまた、【芳一】や【桔梗】とはまた違った独り立ちの道を見つけて行ったのであった。