第十一章18 【覇王杯/オーバーロード・カップ1回戦/第7試合】15/偽者から見た本物1
【覇王杯/オーバーロード・カップ】の第1回戦第7試合に乱入してきた【栄光高主第千席】の【高宮 新八】。
彼は、およそ、【聖なる存在】や【主人公】などが行う態度からかなりかけ離れた振る舞いをしている男である。
この様な男が本当に【勇者】や【英雄】に相当する【栄光主】たり得るのか?
はなはだ疑問である。
では何故、この男がここまで腐った印象を持っているか?
それについて、彼のそれまでの人生を少し振り返って見よう。
【新八】は、生まれついてから周りと比べて飛び抜けた才能を発揮し、【神童】と呼ばれるのは自然な事だった。
周りからちやほやされ、華やかな人生だったと言えるだろう。
だが、幼い頃から周りから持ち上げられると言う事はあまりその者にとっては良い影響とはならない。
人格が形成されるまでに周りに傅かれ、敬われ、特別扱いを受けた子供のほとんどが、不遜な態度を日常的に行う、小者に育つ。
【新八】も例に漏れず、実力を伴わない成長をしていったのだった。
だが、それでも元々の才能が彼を英雄の様に祭り上げて行った。
周りの人間達が彼の威光を維持させようと忖度して動いて行ったのだ。
それにより、彼はドンドン増長して行った。
正義の味方という建前と悪役の様な裏の顔。
その二面性を持ち合わせた人間に成長していった。
実力が無くても勝手に周りの人間達が忖度して彼の実績をでっち上げて行った。
他人の手柄を奪った事も一度や二度では無かった。
数え切れない程の悪行を正義という名のメッキで塗り固めて行った。
まともに物事の善悪を判断出来る者が【悪】だと断じる事が出来たとしても、【嘘】で塗り固め、それを【正義】だと【偽装】すれば、それが【正義】だと認識されてしまう。
悲しいかな、この世界は、偽者の【正義】を多くの者が認めているからという理不尽な理由だけで、【本物】と言う扱いを受けてしまう。
【偽善者】はそうやって生まれてくるのだ。
第三者の目から見れば明らかにおかしいと思える事でも力でねじ伏せ、事実をねじ曲げて、それが正しいと誤認させる行為。
それは国単位で行っている所もあるのだ。
だが、それらは決して、【真の実力者】にはなれない。
この世で、【実/本当の実力】を取るか?
【名/嘘で塗り固めた名声】を取るか?
どちらもと言うことにはならない。
どちらか片方を選択する。
それで、【名】を取ったのが【高宮 新八】と言う男なのだ。
彼には、【実】を取る道も用意されていた。
だが、安易に彼は【名】を取ったのである。
所詮、それだけの男。
真の【漢】からはほど遠い精神の持ち主なのである。