教師の心情
世界はかつて薔薇色に染まっていた。何もかもが明るく、美しく見えた。純粋で、なにも知らない小娘は自分が世界のメインヒロインだと疑わない。
「___________そんな馬鹿な話が在るわけがないと言うのにな。」
心眼心は目を覚ます。
(.............気持ちの悪い夢だ。)
かつての情けない自分の姿を夢の中で見てしまった。嫌な夢を思い出してしまった。
『_____________君は読書が好きなんだね。』
一人の時間を好む自分はかつて図書室に籠り、読書ばかりをしていた。 そんな時にあの男は現れたのだ。
(...........気持ち悪い..............)
ベッドから起き上がり、洗面所へと行く。そして吐き気を我慢できずに嘔吐してしまう。
「..............」
簡潔に言うのならば、私は攻略された。
「............................」
あの男に対して、明確に好きという好意を確実に持っていた。
「ヒロインの立場は世界が与えるものではない。貴様自身の手で得るものだ。」
受け身で在りすぎた自分にも落ち度は合った。だが、それでも尚、そう言った気持ちへと私を傾け、見事に欺いてくれたお前は万死に値したんだ。
(.............間接的に地獄に叩き落としてやったよ。)
恨むなら私を裏切った自分自身を恨め。私をヒロインに選らばなかったお前が悪いのだから。
「だが銀城友人、お前だけは違う。お前は私を選んでくれた。」
銀城友人は心眼心をヒロインとして選択した。
「そして選択をしたということは責任が生じる。この私を生涯を持って愛するという責任が。」
裏切る事は許されない。もう二度とあのような感情を味わってなるものか。
「_________________そうだろう、友人。」
「________________銀城。」
好きな男の子。教え子。禁断の恋。だけど、手放すつもりはない。
「告白をしてくれたじゃないか。」
あの屋上で私の事を愛していると目を見て言われた。告白は初めてじゃない。だけど銀城くんは特別だと感じた。
「銀城の好きに私の好きで答えたい。」
教職を失おうと、銀城友人と結ばれるなら他は何もいらない。
「心先生...........銀城は私のものだ。あまりちょっかいばかり掛けていると私は何をするか分からないぞ。」
大学からの知り合いで、沢山の相談に乗ってくれた偉大な先輩。長い付き合い故にその鉄仮面のような偽りの表情の変化が読み取れるようになった。
(心先輩は銀城に対して明確な好意を抱いていている。当人は隠しているようだけれど............)
譲る気は毛頭ない。
「..........心先生、どうか私とだけは対立しないでくれ。先輩である貴方を傷付けたくはないんだ。」