決着
条件を呑んだことで、武田は壁に身を寄せ意識を失った振りをした。後味が悪すぎる。勝ったのに大敗した気分だ。
「.............さっきから生徒会室が騒がしいな。」
暴れている。其は確かだろう。他のメンバーがどうなったかは気になるが、取り敢えず生徒会の大将である星々姫乙がいる生徒会室を目指す事にする。
「はぁ..........はぁ............いい加減に倒れなさいよね、おっぱいお化け........」
左腕を右手で抑えながら荒く息を吐く釘宮。身体はボロボロで制服も至る箇所が裂けていた。
「............私は生徒会長だぞ............はぁ........はぁ.....負けんよ.......まな板には.........」
同じく制服はボロボロで下着が見える程に破けている。互いに満身創痍といった状態であった。生徒会室全ての窓ガラスは砕け散り、机や椅子が散乱している。そして生徒会の両扉は廊下側に吹き飛んでおり、戦闘が激しかった事を物語っていた。
「っ...........あんたはいつもいつも私の邪魔をしてッ、目障りなのよぉお!!」
"バチッン!!"
平手打ちを星々へと喰らわせる。星々はそれを喰らうが、微動だにしない。ただ、鼻から流れる血を拭き取る。
「ぎゃぎゃあとそのキンキン声を響かせて、周囲に迷惑ばかりを掛ける。それもこれも釘宮、君がツンデレの殻を被っているからだ。いい加減にやめたらどうだ.......私達は数ヶ月後、三年生になる。高校三年生、18歳。そろそろ素直になるべき歳だろう。」
星々はお返しとばかりに釘宮へと近付き、平手打ちを返した。釘宮は地面へと倒れ、涙目になる。
「ツインテールも個人的にはギリギリだと思うが.........まぁ、釘宮がアイドルやインフルエンサーなどの職業を目指しているのなら撤回する。」
そして倒れた釘宮の胸ぐらを掴み、真っ直ぐと彼女の目を見る。
「私事が過ぎたな。私は螺舞妓女学園生徒会会長星々姫乙。過ちを正す側の人間。そして君もまた生徒の模範となり、指導をする側の人間だ。しかし、風紀委員は度が過ぎた。暴力は時に必要な過程なのかもしれない。だが、それだけをしていれば暴君に過ぎなくなる。私達が目指す先はその先だ。生徒たちが手を取り合い互いに支え合える関係。社会性を身に付ける事が私達子供の役目なんだ。」
釘宮は歯軋りをしながら星々の手を払い除ける。そして限界の身体に鞭を入れ、立ち上がる。
「っさいのよ」ボソッ
星々も釘宮に続き立ち上がる。
「__________諦めて敗北を認めろ、釘宮。君はもう限界だ。」
そして今度は釘宮が星々へと近付き、両手で彼女の頭を抑える。
「なにをして「限界かどうかは私が決めるッ!!」いだいっ!!?!」
頭突きをした。互いに額から血を流し尻餅を着く。
「うっさい!さい!!うるさいうるさいうるさーい!!!」
子供の癇癪の様に叫び散らす釘宮。そして獣の様に這いながら、限界の身体で星々の元へと身体を引き摺らせる。
「どいつもこいつも友人の事好きになりやがって!ふざっけんじゃねーわよ!!私が友人の幼馴染!結婚の約束もしたもん!!くそッ!!クソォ!!!お前や時崎、そして心眼先生さえいなければ全部上手く言ったんだッ!!うがああああああああああ!!!」
星々へと無我夢中で襲い掛かる。
「_____________ならば、しっかりと手綱を握って置くべきだったな。」
星々はそれを軽く流し首筋へと一閃手刀を叩き込む。
(友人、行かないでよ..............)
釘宮は薄れゆく意識の中で、教室の外に背を預け此方へと視線を向ける銀城の姿を最後に目にするのだった。