銀城ファン倶楽部
「__________チャンス?」
武田はしたり顔でそう言う。
「私って自分で言うのもなんですけど、かなりのどMなんです。」
「................」
「普段から生意気な態度をとったりするのも人から侮蔑や怒りの視線で見られたいからなんです。軽蔑しますか?して下さい。」
「................」
「そう、その人を人ではないごみを見るような目........銀城先輩のそう言うところが推しなんです。今も表面上はにこにこしてるに、目の奥が笑ってないんですよ。」
「................」
「みんなはその事に気付いていない。推しの私"達"だけが知ってるんです。」
「................」
私"達"............武田だけではなく、他にも自分の本性に気付いている人間がいるのか。
「心眼先生........」
十中八九、彼女に違いない。
「あはは、鋭いですね。心眼先生も気付いてはいると思いますよ。あの人に分からない事はありませんからね。ですが、私が指しているのは______________」
武田の言葉に耳を疑う。そんな筈はない。
「銀城ファンクラブ会員No.01は先輩以上に先輩を知り尽くしている。彼はファンクラブの創設者であり、学園でもかなり有名な方ですからね。」
武田が言う、No.2の名前は聞いた事がないが.........No.1、お前は僕が一番知っている。
「話を戻しますが、銀城先輩の推しグッズが少ないんです。素材があまりに少な過ぎて、作れない環境を打開したい。そこで先輩........勝ちたいんですよね?」
黙認していたファンクラブとやらが、脅迫紛いに推しのグッズ制作に協力しろと言ってきた。正気の沙汰とは思えない。
「このまま先輩を眠らせてもいい。だけど、条件を呑むならわざと意識を失った振りをして脱落して上げてもいいです。」
「くっ、」
条件を呑めば、か。だが、素材提供をしないといけないのか.......
「協力した場合、僕は何をすればいいの?」
「え、えぇ!!銀城先輩のブロマイドでしょ!それにタペストリー!!ポスター!!それとそれとボイス付きシチュエーションCDに踊ってみたの動画制作!う、う~ん、歌ってみた系も勿論聞きたいし「も、もういいよ、武田さん........」
思った以上に要求が多かった。だが、それらをこなせばこの戦いを無傷で終わらせる事が出来ると言うことだ。
(.............条件を呑むしかない。)
それに最低かも知れないが、勝負が終わってから条件を反故にすればいいし。
「___________先輩、それをしたら風紀委員だけでなく、ファンクラブを敵に回す事になりますよ?」
悟られたか。感のいい奴。
「それは脅しになってるのかな?」
仮にファンクラブとやらが敵に回ったとしてどうなる。ちょっとした嫌がらせが起きるくらいだろう。それくらいならばどうという事はない。
「なりますよ。屋上で黄昏る先輩に偶然を装って接触を計ろうとするメス共が腐る程いる事に気付いていました?ヒロインに成り上がろうと実は水面下では競ってたんです。」
物凄い新事実に驚愕を隠せないんだが..........
「まぁ、それを見かねたNo.1がファンクラブを組織して、秘蔵の写真を共有する事で事態を落ち着かせたんですけどね。ほら、これが例の写真です。」
「僕の..........水泳の時の写真?」
(こんなの、いつ撮ったんだよ...........)
........これ以上新組織を導入しないでくれ。これじゃあもう計画どころの話じゃなくなってくる。今現在でさえ風紀委員とバチバチにやりあってる最中なんだぞ?
「ファンクラブも一枚岩ではありませんからね。銀城先輩を自分の恋人だと勘違いしているサイコパスも数名います。それら全てのメスガキ共から銀城先輩から守ってきたのが私とNo.2なんです。その私達が檻を開けたらどうなるか...........分かりますよね?」
完全に詰む。例え心眼心であろうと数には勝てない。デレナが結ばれる前に自分はそのファン達に喰い犯されてしまう事だろう。
「...........グッズ製作に協力するよ。」