ここえもん、助けて!
「_________おはようございます、心眼先生。」
登校して直ぐに保健室へと足を進める。
「銀城か......早いな。そら、椅子に掛けたまえ。お茶でも入れよう。」
心眼は一瞬驚いた表情を見せたが、直ぐにいつもの表情に戻り、暖かい紅茶を入れ始めた。
「淹れたてのブレイクファストティーだ。味わって飲めよ。」
そしてコップを自分へと手渡してくる。
「ありがとうございます。」
それを素直に受け取り、口へと含んだ。温かい。心が休まる。
「私のところに来たと言うことは、助けが必要になったのだろう。何があった、話したまえよ。」
心眼心に全ての経緯を話す。時崎時子の攻略は成功に終わった。けれど、好意を予想以上に上げ過ぎてしまった。あの目の奥に隠す野心は危険だ。デレナ以上に何をしでかすか分からない。
(肉体関係の相性は正直に凄く良かった。僕も男だ........そりゃあ気持ち良かったさ。だけど、それを除いても彼女は獣のように僕との快楽にハマってしまった。ハマり過ぎて危うく搾り殺されそうになった。)
これから自分が取れる行動はあまり多くはない。彼女は妄信的なまでに自分に愛を向けて来ている。やり過ぎた。だが、時崎時子の好意を此方に持っていくにはこの方法しかなかったのだ。
「......時崎と肉体関係を持ってしまったか。ふふ、そうか、そうだろうな。その方法が最短だろうな。」
笑いを堪えるように、失笑をする保険医。苛立ちを感じるが、自制し、彼女の助言を待つ。
「いい笑い話を聞かせてくれてありがとう。これを糧に一週間は生きられる.............それで、選択はもう決まったの?」
「..............選択、ですか。」
「おいおい、無償でお前に協力する程、私も出来た人間ではないんだ。第一の選択は私を選び、卒業後に籍を置くか、第二の選択に蓮華先生と私を選び、三人で仲良く同人誌エンドかだ。純愛か3Pか、シンプルかつ夢のある選択だろう?」
第二など究極の選択過ぎる。
「第二を選択するとどうなるんですか?詳細を事細かく説明して下さい。」
「説明した通り、私と蓮華先生が子を孕むまで三人で交わり続けるのさ。そして孕んだ後も妊婦となった私達に中○しし放題。子を授かった後も子育てに励みながら、心行くまで性的行為を繰り返せる。君は両親の莫大な遺産を持ち、私たち二人は教職に就く公務員だ。金銭面に問題はない。寧ろ余裕があるくらいだろう。大きな家を購入し、三人で幸せな余生を暮らそうじゃないか。」
同人誌の夢展開が実現しそうな選択にごくりと唾を呑み込む。というか蓮華先生はこの事は絶対に知らないよな。
「僕はそこまで大胆にはなれませんよ。今だって大分無理して行動してます。自分が幸せに出来るのは一人の女性だけだ。これはデレナに限定した話じゃありません。結婚をした女性を生涯愛すという意味です。」
「それでは君が私に差し出す選択と言うのは............」
全てを丸く納めるには心眼心の知恵と協力が必要だ。自分の実力ではこれ以上はもう手に負えない。恐らく、釘宮デレナか時崎時子のどちらかに監禁されるか殺される未来しかないだろう。
「__________________心眼心さん、僕と結婚してください。」
立ち上がり、選択肢を伝える。窓から入り込む風に髪が揺れる。若干、顔が赤い心眼心の表情が逆に新鮮過ぎて、此方まで恥ずかしくなってきた。
「告白、か。久しくされていなかったがここまで面と言われると照れるものがあるな。だが銀城、お前はいい選択をした。」
「返事はしてくれないんですか?」
眉間に皺が寄る心眼心。耳が更に赤くなるのが見える。
「...............喜んで。」ボソッ
「聞こえません。」
心眼心は頬を膨らませ、自分の頬をつねる。
「いい加減にしろ、友人」
....................やられた。いきなりで心の準備が出来ていなかった。名前呼び、か。
「くっ」
心眼心に顔を見られた。この醜態とした顔を。
「ぷっ、あはははは!なんだ友人、そんな年相応な表情も出来るんだな。」
「う、うるさい」
そっぽを向く。そして表情を隠そうと手を口元へと置こうとすると心眼心に手を掴まれてしまう。
「友人、私には何も隠さなくていい。お前は私が必ず守ってやる。」
そして顔を近付けられ、鼻が触れる位置でそう言葉を伝えられる。力ある発言だ。その瞳にははっきりとした説得力がある。
「決して私を裏切ってくれるなよ。選択の放棄はお前の死を意味する。警告だ。私は裏切り者を絶対に許さない。二度とな______________」
ゆっくりと口付けをされた。
「____________さぁ、教室に戻りたまえ。授業が始まる。」
軽いバードキスのようなものだが、その後に顔を離して見せた心眼心の笑顔が脳裏から離れない程に美しいものだった。




