ハーレムものの先生は人気になりがち
「............はぁ。」
(疲れた..........)
ハーレム主人公の友人役と言うのは疲れる。喧嘩の仲裁をしたり相談に乗ったりとヒロインズの精神面を面倒見なければならない。
「............何をしているんだろうな、僕は。」
放課後の屋上で一人黄昏る。このまま同じような日常を残りの高校生活で送らなければならないと考えると鬱な気持ちになる。
「進路表、どうしようかな。」
面林に何処の大学に行くのかと聞かれた際にわざと決まっていないと答えを濁したのだ。その為、進路表の提出が大分遅れてしまった。
(大学名を答えていたら、多分、あの男は僕と同じ志望校を選んでいたことだろう。)
そんな糞溜めのような未来は絶対に訪れない。訪れてなるものか。この高校を卒業次第、あの男との関係は完全に断ち切る。そうしなければ自分が自分でいられない気がする。
「______________おぉ、銀城!ここにいたか!」
屋上の扉が勢いよく開く。そして姿を表したのは新任教師の蓮華一華だった。
「蓮華先生、こんにちは。」
「探したんだぞ~銀城.........ん?今日は面林と一緒ではないんだな。」
その言葉に眉がピクリと動く。
(へぇ......そんなこと言うんだ。)
ムカついたので先生を困らせてやろうと進路表の希望欄にあることを書き込んだ。
「珍しいが.......まぁいい。進路表は書いたか?提出してないのはお前と釘宮だけなんだ。今日は書いて貰うまで残ってもらうぞ.......と言おうと思ったんだがな。その必要はなさそうだ。」
蓮花先生は自分の隣に座り、自分を覗き込むように微笑を浮かべる。手に持つ進路相談表が目に入ったのだろう。
(奥手の男子生徒なら一瞬で恋に落ちる破壊力。それにあざとい。多分、無意識的になんだろうけど。)
蓮花一華はこの学園の四大美少女達の美しさには劣るだろうが、素直に美人な女性だ。
「僕の進路は決まってます。」
蓮華先生へと進路表を渡す。
「お前は成績が良いからどこの大学にだって............お、おいっ.........」
「はい。」
蓮華先生は顔を林檎のように赤くし、プルプルと身体を震わせる。そして勢い良く立ち上がり、日差しを塞ぐように自分の正面に立った。
「わ、私と結婚って何を考えているんだ!!」
第一希望に蓮華一華との結婚、そして第二希望に蓮華一華との結婚を前提とした真面目なお付き合いと記入しておいた。
「ふざけているなら私は行「先生っ!」
屋上から去ろうとする蓮花先生の手を掴み、壁へと彼女を押し付ける。
「___________僕は本気ですよ、先生。」
「わ、私は教師なんだぞ.....だ、だめだ、こんなの.......だめに決まってる.......」
嫌だと言いつつも抵抗が弱い蓮華一華。伊達に面だけはよくて良かったと天国にいる両親へと感謝する。
(そう、これだ......僕には武器がある。)
モデルやアイドルのスカウトだって何度もされたこの顔だ。それに学力も学年三位内には常に入る高水準なスペックを持っている。
「..........蓮華先生、ごめんなさい。気持ちが抑えられなくて..........忘れて下さい........」
蓮華一華の手を離し、彼女から顔を背け距離を取る。もちろん、演技なのだが。これで本気感が出るだろう。
(冗談半分のつもりで柄にもないことをしてしまった.......いや、違う。試すつもりで動いたんだろう?)
ハーレム主人公、面林最照の呪縛から解き放たれる為に一歩を踏み出さなければならない。
(ハーレム主人公の友人が本気を出したら、何処まであの男に通用するのか.............)
屋上を去ろうと歩きだすが、蓮華先生が扉の前に立ち塞がる。そしてもじもじとした様子でチラチラと自分を見てくる。
「..........本気、なんだな?」
上目遣いで見つめる蓮華先生はとても可愛らしい。だが、その先の言葉は言わせない。
「僕は...........っ、忘れてください」
(あぁ、そうとも__________________僕は本気だ。)
わざと苦しそうな表情を浮かべ、蓮華先生を優しく退かし屋上を去る。後ろから先生の叫び声が聞こえるが前へとただ足を踏み出す。
(デレナを僕から奪ったんだ、覚悟は出来てるんだろう?)