ツンデレにもツンデレの葛藤がある
500件突破.......つ、強い
銀城友人という幼馴染の男の子は歪だ。
(昔からあんたはそうやって仮面をしたようにニコニコしている。)
自分の本性をさらけ出さないように徹底しているんだ。
「でも、私だけはアンタの本当の姿を知ってる。」
幼馴染である釘宮デレナだけが彼の素を知っている。どうしようもなく繊細で他者の感情に鋭い出来すぎた男の子。
「生まれて物心ついた頃からずっと見てきたもん。」
意識を失い、倒れる友人の頭を自分の膝の上へと寝かせ、彼の顔をじっと見つめる。
「あんたのこんな無防備な姿を見せていいのは私だけ。なのに、なんであんたはよそ見ばっかしてんのよ。」
友人は私を面林最照と恋仲にさせようと裏でこそこそ動いてる。無性に苛立たしいことだ。
「_____________許せない。」
幼馴染の仮面を崩そうと様々な方法を試してきた。だけど、切り崩す事が叶わなかった。
「あんたって本当にガードがかたいわけよ。その仮面をぶっ壊す切っ掛けが必要だった.............」
面林最照の存在を使う事にした。女を侍らせる能力に特化した異端者。その自前の能力を理解していない愚鈍者。
「あんたのその頑丈な鉄仮面を破壊する一手。面林の存在は最早天啓ね。」
面林を利用する事でそのにこにことした仮面に亀裂を入れる事が出来る。そして結果的には成功した。
(一緒に登校出来ないと伝えたときのアンタの顔を思い出すだけで..............濡れてくる。)
身体が熱くなってくる。あんな表情を見せられたらまた見たいに決まってる。
(幼馴染を曇らせたい........その表情に陰りをいれたい......汚したい........無理やりとアンタを犯して生娘のように喘がせてやりたい..........)
そして最後にはとことん甘やかして釘宮デレナという人間に依存させたい。させる予定だった。
「徐々にその仮面をズタズタにして、その内に秘める本性を引き摺り出す算段だった。なのに計画は台無しだ。」
自分の顔を手で覆い、鋭い眼光で友人を睨み付ける。
「あんたの曇った表情も、苦し踠く表情も、全て全てが私のものなのッ!!なんでそれがわかんないかなぁ!?星々も猫屋敷も蓮華も心眼もお呼びじゃないッ。面林最照が主人公?ふざけんじゃねぇよ!!これは友人と私のストーリーだ!!!」
なのになんであんたは面林に群がる羽虫どもに蜜を注ぎ始めた?好意があんたに流れ始めてんの。今すぐにそれを止めろ。今すぐにでも止めなさいよ。頭が可笑しくなりそうになるんだ。
「友人が演じる偽りの姿だとしても、あれらは有象無象のモブ達じゃない。直感であの子達はあんたをいい男だってことに気付き始めてる。」
煩わしい。そんな事、駄目に決まってる。幼馴染は最後には勝利しなければならない。ポッと出の害虫に渡してやれる程私は甘くはない。ツンデレ嘗めんな。伊達に此所まで演じて来た訳じゃないんだ。とはいえ流石に厳しくはなってきたなとは思ってる。
「だいぶ前だけど、あんたと一緒に見たアニメの女の子がツンデレで、可愛いなんて小声で言うからツンデレキャラを徐々に浸透させて来たけど.........そろそろ気づけッ!アンタと同じで私も演技してんだよ!」
ごめんけど、流石に高校二年生にもなってツンデレはキツいって。それにツインテール!自分を可愛いと思ってる奴しかこの歳ではやらねぇーよ。
「ツッコめよ、まず......ツンデレかよ!とか言ってくれればさ、はぁ?ツンデレじゃないんだけど、キモ!とかいってキャラを少しずつフェードアウト出来んの。もう三年生になっちゃうんだけど!」
十八歳でツンデレはヤバい。本当に痛い子になる。
(周りが頭のネジが外れた奴らが多いからツンデレが埋もれるだけであって一般的に見たら私のキャラも相当だからね。)
.........流石に一人語りが過ぎた。呑気に意識を失う幼馴染の髪を優しく撫で、起こさないように立ち上がる。
「友人______________」
枕と毛布を持って来て、友人へと掛ける。
(あんたの目論見全てを正面から潰してやる。)
そして、背中で彼に語る。
「_________________全力で邪魔するから。」
玄関へ向かう為に歩きだす。
「べ、べつにアンタの事なんか好きじゃないんだからね!.........ねんてね。私、なに言ってんだろ。バカ過ぎる。」
靴を履き、玄関のノブへと手を掛け外へと飛び出る。
「.........もう朝なんだ。学校に行く準備しないとな。」