覚書/鶏卵はいつから食べられるようになったのか?
総説:むかしNHKのコメディー系時代劇に「天下堂々」という作品があって、幕末になぜか、セントヘレナ島で没したはずのナポレオンが日本にやってきて、欧米植民地主義の脅威に日本がさらされているのを警告する場面があった。――同場面の直前、ナポレオンの忠臣が「目玉焼き」を焼いていた。――そういえば、江戸時代を舞台とした物語に、「目玉焼き」というものを見たことがない。「卵焼き」はどうか? 「伊達巻き」というのがあるから、少なくとも「卵焼き」は江戸時代からありそうだ。
そこでぐぐってみると、日本における鶏卵料理の歴史をwikiではなくAI先生が示してくれた。以下に鶏卵料理の情報を元にまとめてみよう。
日本において鶏卵食習慣が定着するのは南蛮貿易の影響で、江戸時代初期だとされる。まず、だしを沸騰させ溶き卵を流し蒸す料理「玉子ふわふわ」が登場し卵焼きの原型となり、中期には「だし巻卵」が登場する。
他方で「目玉焼き」は――各種卵料理を著した江戸時代の書籍『卵百珍』に掲載されていないことから、明治維新以降、簡単な西洋料理として伝播してきたと考えられている。
所見:NHK大河「利家と松」で前田利家夫人の松が、生卵を食べていたが、江戸時代以前である織豊政権時代でのその行為を時代考証すると、鶏卵食習慣発生時期以前になるかもしれないので、ちょっと際どい場面になる。AI先生は(殻の殺菌効率が向上したということか?)「生卵は近代になってからだ」「冷蔵庫が普及する昭和30年代になってから一般化した」と応えている。――いずれにせよ日本において、卵料理は案外と新しい。
追記:「茶碗蒸し」について、AI先生の回答:
「茶碗蒸しは、江戸時代(1603年〜1868年)に発祥した料理と言われています。唐人(中国人)との交流の中で伝えられた、卓袱形式のコース料理の中の一品として出されていたのがルーツになったと言われています。/また、四国伊予藩士の吉田宗吉信武は、長崎の肥後藩邸に出入りする際に茶碗蒸しを初めて食べ、その美味しさに感動したと言われています。そこで、1866年に長崎県長崎市万町に「吉宗」の屋号で茶碗蒸しと蒸し寿司の専門店を開業しました。/茶碗蒸しは、野菜や魚介類、鶏肉などの食材を茶碗に入れ、出し汁を混ぜた溶き卵を流し込み、蒸した料理です。蒸すことで卵が柔らかく固まり、滑らかな食感になります。」
所見:歴史学的な年代の比定においては上限ではなく下限を採用する。よって九州・長崎にあって四国にないということは幕末・19世紀半ばの段階で全国的には普及していなかったことになる。話し代わって、フランス流茶碗蒸しの二つ名がある「フラン」について、個人的にそれが茶碗蒸しの源流だと考えていたのだが、まさか中華料理が源流だったとは!
さらに追記:
むかし杉浦日名子氏を解説員としたNHK舞台劇「お江戸でござーる」という番組があり、登場人物女性が茹で卵を小籠に入れて売りに出て行く場面があった。それで、なんとか生活ができたのだという。
他方、学生のころだったか、江戸風俗を扱った小冊子に、日本を訪れた外国人が、日本人は欧米流に朝食ではなく、夜でも茹で卵を食べていたので驚いていたという記載を目にしたことがある。
ではいつから茹で卵を食べるようになったのか? 以下はAI先生の回答:
日本では、江戸時代(1603~1868年)頃からゆで卵が食べられていたと考えられています。
日本における卵の食の歴史は次のとおりです。
6世紀から16世紀までの文献には、卵を食べたことがわかる記録はほとんど見つかっていません。
13世紀初頭に成立した説話集「古事談」には、貴族がゆで卵と塩を持って花見の宴に出席したという記録が残っています。
南蛮人の影響で、織田信長の時代(16世紀)頃から日本でもニワトリや鶏卵を食べるようになりました。
江戸時代には、ゆで卵が20文で売られており、当時のかけ蕎麦の価格である16文と比較すると高級品でした。
1785年に出版された料理本「万宝料理秘密箱」には、ゆで卵の調理法が紹介されています。
明治時代に養鶏業が発達し、安価に卵が入手できるようになると、日本人は卵好きになり、2013年の日本の一人あたり一年の鶏卵消費量は世界第三位でした。
所見:中高生の頃だったか父の書斎にあった小説に『徳川女系図』なる作品があり読んだ。その中で、家康公が臣下の未亡人を側室に迎え、初夜の枕席に彼女を呼び寄せた際、茹で卵をむかせじらすという場面があった。室町末‐織豊政権期が舞台だったようなので、するとこれは時代考証ミスということになる。まあエンタメなので、眉をしかめるほどのことはないと思う。
卵の食べ方まとめ:
江戸:鶏卵食習慣が一般化し、行商の「卵売り」が出現:だし巻き卵・茹で卵
明治:食生活欧米化により、卵や肉、乳製品の摂取が推奨される:卵焼き
大正:養鶏が本格稼働、卵が一般に普及
昭和:30年代、米国養鶏新技術導入で量産化、各家庭の冷蔵庫常備化で卵かけご飯が流行
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