覚書/石器の石材について
Ⅰ 時代区分(注1)
石器時代は、旧石器時代・中石器時代・新石器時代からなる。
〇旧石器時代:
旧石器時代は最終氷期(1万6千年前)まで、中石器時代は氷河が解けだしたころ(1万6千年前から)、新石器時代は氷河期終了後(1万年前から)をさしている。
旧石器時代は、前・中・後期に分けられる。
前期旧石器時代は、アウストラロピテクスなどのかつて猿人とされていた人類がつかっていた手斧の時代(250万年以降)である。日本にはない。
中期旧石器時代は、かつて旧人とされてきたネアンデルタール人が欧州・中近東にいた時代、槍先につかうルヴァロワ石器の時代(30‐25万年前)を含む30‐5(あるいは3)万年前の石器だ。基本、日本にはない理屈だが、検索するとこの時代のものだと主張する市町村教育委員会のパンフレット的な書き込みも見受けられる。個人的には偶発的に中期旧石器の形状になった遺物と判断したい。
後期旧石器時代は、石刃技法が確立し、各種刃物類、釣り針、縫い針など多種多様な刃物系の石器が登場する(5‐1万年前)。日本においては、3万8千‐万6千年前とされる。
〇中石器時代:
中石器時代の地域は限定的で、地中海に近い中近東・北アフリカがメインとされる。そのため日本では、中石器時代に特徴的な細石刃を含む石刃技法を、中石器時代の存在を消して、後期旧石器時代に含めてきた。概ね1万6千‐1万年前とされる。
欧州における中石器時代について記述に、磨製石器や舟、弓矢が登場とあり、私はパニックになったものだが、なんのことはない。欧州における中石器時代の下限は7、8千年前のことで、単に新石器時代アイテムである土器が普及していなかったに過ぎない。
日本最古の土器は1万6千年前(前後)の無文土器である。研究者たちは、以降のタイムスケールを石器よりもより緻密なタイムスケールとなる土器で計る。そういうわけで縄文時代は中石器時代と新石器時代が混在し、さらに終わりの千年期(3千年前から)は西から弥生勢が乱入してくるので、ちょっとカオスだ。
話し戻って、日本の中石器時代についての下限について、個人的に魅力的な説は、1万年前の縄文時代早期撚り糸文系土器の登場をもって終わるというものがある。
〇新石器時代:
先述の撚り糸文は細い棒に撚り糸を巻き付けて転がし、網目のような文様を土器に巻き付けてゆく技法である。撚り糸と撚り糸を幾重にも重ねて撚ってゆくと紐になり、さらに太くすると縄になる。縄というよりは紐を、撚り糸の施文器具に代わって土器表面に、コロコロ転がしてゆく。このような撚り糸文と発展型の縄文を土器に施文する時代こそ、新石器時代ではないかというわけだ。
弥生時代は、3千年前に九州の遠賀川流域一帯でみつかる、つるっとした土器の時代にはじまり、水田開発が本格化するのだが、関東東北は遅れて、2千400年前まで縄文を引きずり、縄文時代後期と呼ばれることになる。――およそ600年間で水田、弥生土器、青銅器・鉄器の文化が日本を席巻し、刃物を中心に大半の石器はほぼ役割を終えることになる。
Ⅱ 本題:石器の石材
石器の石材について、硬すぎずもろ過ぎない石材が好まれる。
〇ブレード系(刃物)
石槍・石鏃・スクレイパー(短冊・ナイフのたぐい)・石錐・石針
……流紋岩および流紋岩がガラス質化した黒曜石が用いられる。黒色緻密質安山岩、比較的硬く緻密な堆積岩:頁岩・泥岩、変成岩:チャート、珪岩なども多く石材として用いられる。
チャートは、石英系とも言われるが化石が含まれることがあるので、頁岩が変成したものだという説を採りたい
珪岩は天然ガラスで、頁岩や化石類もときたま珪質化する。
石斧・石鍬
……玄武岩、粗い安山岩、緻密で硬くなった変成岩(熱を受けた堆積岩)系の砂岩。
〇敲き石
……石英ほか硬い自然石や、ブレード系の石器(刃物の素材・プレート)を取り出した残核、なんでもあり。
〇食器系
台石(テーブル、金床やまな板のようなもの)・石皿・砥石
……貴重なブレイド系石材以外の石材。堆積岩では砂岩が多く、火成岩では花崗岩・安山岩を多く用いる。砥石は荒砥・仕上げ砥がある。荒砥は堆積岩系の砂岩、仕上げ砥は堆積岩系の頁岩、火成岩系の流紋岩がつかわれる。流紋岩の鳴滝石は日本刀の研磨につかわれる。
Ⅲ 備考:火成岩×6の分類
(1)6種類の火成岩のざっくりした分類(注2)
マグマが冷え固まってできた岩のことを火成岩といい、火山岩と深成岩からなる。
火山岩は流紋岩・安山岩・玄武岩からなり、深成岩は花崗岩・閃緑岩・班れい岩からなる。
玄武岩の「玄」は黒っぽいという意味だ。
花崗岩は白っぽい石で、御影石とも呼ばれている。洋風石造建築や墓石の石材につかう。
※6種類の火成岩の特徴
→「りゅうもんあんざんげっぷして河川はんらん」語呂合わせ
白っぽい ←灰色→ 黒っぽい
火山岩 流紋岩 安山岩 玄武岩、
深成岩 花こう岩 せん緑岩 はんれい岩
(2)6種類の火成岩の詳細(注3)
A:火山岩について
流紋岩、安山岩、玄武岩マグマの二酸化ケイ素(SiO2)の含有量による分類は、玄武岩質マグマ、安山岩質マグマ、流紋岩質マグマの順に二酸化ケイ素含有量が増える。
01 流紋岩
白色で、マグマが地上または地上近くで急激に冷えて固まった。ケイ素が70%以上あり、比較的キメが細かい。マグマが流動したときの流れが模様となるものがある。触った感じが滑らかで頁岩に似ている。流紋岩の亜種ともいうべき黒曜石は、黒く透明度が増し、ガラス質がさらに進んだもので、割ると割り面が貝殻状になる。
02 安山岩
灰色または暗灰色できめ細かく、白い斜長石や黒~黒緑色の輝石類などの粒(斑晶)が点々と入る。
四国・讃岐地方の黒色緻密質安山岩は緻密でガラス質だ。石塊を棒で敲くとカーンと音がする。同質の岩石が群馬県・武尊山で産する。ブレイド系石材につかえる。堆積岩の黒色頁岩と見分けが難しい。黒色緻密質安山岩の場合、火成岩特有の塩基配列と気泡があり割った面がちょっとザラつく一方で、黒色頁岩は、顕微鏡で見ると化石や砂粒が含まれている。割り面を触るとこっちの方が滑らかだ。そこが違い。
03 玄武岩
黒色で、マグマが急速に冷えてできた重い石だ。鉄やマグネシウムを多く、シリカが少ない。玄武岩のつくりは、鉱物の結晶がまばらにみられる斑状組織をなす。緻密なものは磨製石斧の石材になる。
※安山岩と玄武岩の違い
安山岩と玄武岩は、
色:安山岩は灰色‐暗灰色、玄武岩は暗灰色‐黒色い。
密度:玄武岩は安山岩よりもやや密度が高く、重い。
構成成分:安山岩は斜長石と有色鉱物からなるが、玄武岩はアルカリ長石や石英がなく、かんらん石がある。
鉱物の結晶の分布:安山岩は斑状組織で、白い斜長石や黒~黒緑色の輝石類の粒(斑晶)が点々と入る。玄武岩も斑状組織を示すが、マグマが急激に冷やされて結晶になれなかった石基と、マグマが地中でゆっくり冷えてできた結晶「斑晶」からなる。
玄武岩は最も多量にある火山岩で、鉄やマグネシウムが多く、シリカが少ない。
B:深成岩について
花崗岩、閃緑岩、班れい岩は、いずれも火成岩の一種だ。
花崗岩
ほぼ同じ大きさの鉱物の結晶が組み合わさった等粒状組織で、花崗斑岩という変種もある。御影石と呼ばれる。
閃緑岩
無色鉱物の斜長石と有色鉱物の輝石や角閃石が主成分で、花崗岩よりも黒っぽく、黒御影石と呼ばれる。石英を含まない純粋な閃緑岩はほとんど産出せず、石英を含むものは石英閃緑岩ともいう。
班れい岩
白い斜長石、黒~暗褐~緑黒の輝石類、普通角閃石、褐緑色~褐黄色のかんらん石などがモザイク状に集合した等粒状組織で、花崗岩や閃緑岩よりも黒っぽい。閃緑岩とともに黒御影とも呼ばれ、堅いので墓石に用いられる。
Ⅳ 参考写真(石材/引用もと)(注4)
石器の場合、風化して全般に白っぽくなっているので、けっこう難しく、石器研究者でも間違えることがあるので、地質学の先生に送って鑑定してもらうことがある。
01 流紋岩 アマナイメージズ
02 安山岩 Planetscope
03 玄武岩 倉敷市立博物館
04 花崗岩 depss hiroshima-u.ac
05 閃緑岩 アマナイメージズ
06 斑れい岩 Corvet Photo Agency
ノート20240925
引用参考文献
注1 Ⅰ 長い前置き
主にwikxiより引用
注2 Ⅲ‐(1)6種類の火成岩のざっくりした分類
中1理:5分でわかる!6つの火成岩(火山岩+深成岩)/伊丹 龍義氏の解説を引用
https://www.try-it.jp/chapters-1711/sections-1712/lessons-1729/#:~:text=%E7%99%BD%E8%89%B2%E3%81%AE%E3%82%82%E3%81%AE%E3%82%92%20%E6%B5%81,%E3%82%92%20%E7%8E%84%E6%AD%A6%E5%B2%A9%20%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
注3 Ⅲ‐(2)6種類の火成岩の詳細
AI提供資料より引用
注4 Ⅳ 参考写真(石材/引用もと)
ネット提供画像で引用もとは石材名の右横に記した。




