読書/村田沙耶香『コンビニ人間』
2016年・芥川賞作品、純文。
コンビニは、サイコなヒロイン女性が社会で適合できた唯一のコミュニティーだった。大学卒業後、十数年が経つと、周囲はそんな彼女に結婚やら正職やらいろいろ要求し、ヒロインも彼女なりに応えようとする。当人にとっては迷惑な話しだ。気が付けば唯一の理解者だった妹までもそっちの側に回ってしまっている。一時はカモフラージュ用に、元職場同僚だった、さらにサイコな駄目男を飼ったが、結局、手放す。そしてコンビニ店員に戻るのだった。――『吾輩は猫である』の猫が安アパート暮らしをする36歳独身女性になったような読後感があった。
こういう(実験的な)尖った創作物を「アート」といい、そのうち小説という手段で、内面描写主体にしたものを「純文学」というのだそうだ。その意味で本作は王道の純文学である。
kindleのツールに「朗読」タグがあり、クリックしてみた。朗読機能は作品によって出来たり出来なかったりする。本作のように比較的新しい小説には有効だが、「古典」である全訳版『失われた時を求めて』ではつかえない。――お料理をしながら聴いていたら、半分くらい朗読してくれた。残りは食後、目で読んだ。
ノート20240815




