読書/綿矢りさ 『かわいそうだね』
ヒロインは大阪出身、20代後半のデパート職員だ。美人でお洒落で仕事が出来る。そんな彼女には帰国子女の彼氏がいる。彼氏は大阪訛が苦手なので、できるだけ標準語で話していた。
やがて彼女の人生における転機となるであろう出来事が起きる。
アパートに、30歳元カノが転がり込んだ。
彼氏いわく、「かわいそうだ」――元カノは東京で職探しをしている。実家は長野県にあるが、疎遠だ。仕事が決まるまで自分のアパートに置いておく。もちろん部屋は別々で、関係はとらない。このてのことは生まれ育ったアメリカでは普通だ。もしどうしても気になるなら別れてもいい。
彼氏に復縁の気はない。だが半年という時間は長すぎた。あまりにも不自然な形にヒロインは戸惑う。
ヒロインは年末恒例「クリスマス・正月デート」を挟んで二回、彼氏アパートに突撃し、二人の生活を観察している。
第一回突撃では何事もない。部屋に彼女の荷物は少なく、元カノは清楚な感じで思ったよりも好印象だった。
ところが第二回突撃では彼女の荷物があふれかえり、鴨居には元カノの紐パンがハンガー干しされている有様。なんて図々しい女なのだ! その図々しさは悪意からではなく、天然のものだった。余計に腹が立つ!
そしてこの作家様の醍醐味である暴走スイッチが入る。
所見:職場や彼氏の前では標準語をつかっていたヒロインだが、ぶちぎれると吉本系大阪弁でまくしたてる。『うる星やつら』のランちゃんを彷彿とさせられる。
ノート20240921




