未完と完結
「悠久また質問いいか?」
「いいよ」
「未完作品と完結作品どっちが優れているんだ?」
「その二つに優位さはないね」
「ないのか?」
「面白い作品の方が、優れている」
「元も子もないな」
「完結、未完、どちらもメリットがあるんだよ。いつも通り、僕の勝手な主観で良ければ話すけど、どうする?」
「頼む」
「まずは商業としてのやり口からかな」
「商業のやり口?」
「出版会社は、売れない本は出版したくないよね?」
「当たり前だな」
「なので、打ち切りの可能性がある」
「! そうだな」
「まだ新人とかで、打ち切りになる可能性があるのであれば、少なくとも一冊ずつきれいに完結させた方がいいよ。読者をがっかりさせることはないからね」
「確かに」
「完結してるからって続きを書けないわけじゃない。例えば恋愛物で、結婚してハッピーエンドで終わって、人気が出たら結婚生活編を書いたらいいし、さらに人気が出たら子供編とか、サブキャラ編とか書いたらいいだけだから。完結済みって実は未完の状態に戻すのは簡単なんだ。だたし、未完は完結にはできない。当たり前だね」
・完結済みは未完にもどせる。
「基本は完結させた方がいいってことか」
「そうなるね。今度は、完結させない方が良い作品だけど、すでに読者がついて離れない状態の作品かな。ずっと売れるからね」
「うわぁ。大人の事情ってやつだな」
・人気のある作品は、完結させない限り売れ続ける。
「どんな種類があるんだ?」
「推理系、日常系、ギャグ系、想像しやすいのは、小説よりもアニメとかの方がイメージしやすいだろう。毎週毎週何十年も前から続いているアニメがあるじゃないか」
「確かに、推理ものなら、事件が起きる限りずっと続けられる。日常系、ギャグ系は面白さが安定してれば、永遠に見るもんな」
「推理物なら、ちゃんと一回一回は読者を驚かせるトリックを暴いて、犯人を捕まえないといけない」
「じゃあ、未完のやつでも、細かくみたら完結してるってことか」
「いや、そうとは限らない。完結してなくて、終わらせない方が良い作品、それは考察系だ」
「考察系?」
「ああ、推理物とは、まるで逆で、気になる描写が永遠と続くタイプの物語だね。こういうタイプは、読者がもしかしたらこうかもしれない、あれかもしれないといろいろ想像を膨らませる楽しさがあるんだよ」
「次はバトル系」
「バトルもなのか」
「そうなんだよ。ずっと戦ってる場面って良いものだよ。スポーツ観戦とか、考えてくれたらいい。好きな人はずっと飽きないだろう?」
「そうだな」
「なので完結してるかしてないかよりも、問題なのは、難易度なんだよ」
「難易度?」
「未完結の状態で、ずっと人気を保つ方が難しいってこと。例えば、推理物ならずっとトリック考えなくちゃいけないし、バトル物ならインフレしすぎないように、主人公の強さを調整しないといけない。最初は片田舎で戦っていたのに、最終的には、宇宙規模で戦うことになったり、神様と戦うことになったりね」
「日常系でも、エピソードが無限に出てくるわけじゃないから、有名なアニメなんかでは大元の四コマ漫画の組み合わせを変えることによって、エピソードを違う風に見せたりしている。素人が簡単にできるものじゃないよ。商業を初心者がまず狙うなら、絶対完結させた方がいい」
「商業じゃないなら未完でもいいのか?」
「もちろん。まずは交換日記だな」
「なんで交換日記が出てくるんだよ」
「あれは、二人やグループの間で、自伝を交換してるということだからね」
「斬新な解釈だな」
「大体他人に見せるために書いているわけではないから、内輪で面白ければそれでいいし、完結させる必要はない」
「そうだけど」
「あとは趣味でWEBとかで少数のファンとかのために書き続けているのも、もちろん僕は好きだよ。継続は力なりっていうから、文章力も上がると思う。だけど、商業狙うなら長すぎて未完だと、いまひとつって感じ。物語に必要なのは、文章力だけでなく、発想力、キャラメイク力、ゴール設定力とかもいるかなね。他の力があるかわからないから、出版会社からお声はかかりにくいんじゃないかな。長すぎるっていうのは、とっつきにくいっていうデメリットの一面もあるから、商業狙うなら、本一冊っていうちょうどいい分量がかける実力も必要あると思うよ。実績のない僕がいうのもあれだけどね」
「なんかわかってきた」
「じゃあ、今日のまとめだよ」
○未完と完結
・どちらが優れているということはない。
面白い方が優れている。
・初心者が商業を狙うのであれば、本一冊を意識して、完結させた方がいい。
・人気がある作品は、未完の状態を長く続けるのもプロの腕の見せ所。
完結させない限り売れ続けるから。
・完結済みは簡単に未完にできるが、未完は簡単に完結済みにできない。