テンプレを覚える意味
部活動が始まる前にトウヤが話しかけてきた。
「悠久さ、質問したいんだけどいいか?」
「うん? 何?」
「いつも部活動で小説書くテンプレ教えてくれるだろう。でも小説ってオリジナリティがないとダメだろう。テンプレって覚える意味あるのか」
「いろいろあるよ。例えば、僕が、蜜柑から生まれた蜜柑太郎が、マカロンもって、猫とタヌキと鳩を従えて、鬼のいる島に鬼退治に行った話を書いたとしよう。トウヤはどう思う?」
「桃太郎のぱくりじゃね?」
「そう思うよね。僕が桃太郎の話を仮に全く知らなかったとしても、読者が知っているとパクリと思われることがあるんだよ。だから、パクリと感じることがあるから、いろんな話のテンプレをある程度は知っている必要がある。まずこれが一つ目」
「次にテンプレがあるジャンルっていうのは、そのジャンルのファンが多いということでもあるんだよ。テンプレに従うことで、そのジャンルのファンをまるまる手に入れることもできる」
「でもパクリはダメだろう?」
「例えば、ざまぁ系っていっぱいあるけど、トウヤはどの物語を思い浮かべる?」
「いっぱいあるから急に言われてもなぁ」
「僕は、猿蟹合戦かな」
「うん? あー確かにそうだな」
「古典だし、誰でも知ってるけど、ざまぁ系を書いたとしても、あれは猿蟹合戦のパクリなんて言われたりしないだろう。猿蟹合戦のあらすじは」
僕はホワイトボードにあらすじを書く。
サルと蟹がおにぎりと柿の種を交換する。
蟹は柿を大事に育てて、ついに柿が実をつけるけど、取ることができなくて、
サルに頼むとサルは取ってあげるどころか、柿を蟹にぶつけて殺してしまう。
蟹には子供がいて、
子蟹は、栗、蜂、牛のふん、臼を仲間にして、かたき討ちをして
サルを殺してしまう。
「というざまぁ系だね」
「ざまぁ系だとは今日初めて思ったけどな」
「サルをオラウータンとか、蟹をネズミとかに変えるだけだとパクリ感がすごいけど、騙された親の代わりに、子供が仲間を引き連れて復讐するとテンプレ化して別の話を考えてみると」
現代風
新興宗教団体に騙されて無一文にされて殺された両親の復讐をするために、
警察、探偵、弁護士を仲間にして、宗教団体を解体した話
異世界風
魔族に和平締結すると騙され殺された王に成り代わり
仲間と共に、魔王討伐の冒険に行く王子の話
「どう? 猿蟹合戦のパクリだって言われるかな」
「さすがにそれはないな」
「でも、物語の構成の仕方は同じなんだよ」
「そうだな」
「構成だけ同じにしても、パクリとはいえない。そもそも構成だけでパクリとか言い出したらジャンルとか言う概念もないからね」
「なるほどな」
「最後は、基本を知っているからこそ、応用を使えるっということかな」
「応用?」
「猿には、子供がいて、今度は猿の復讐劇が幕を開けるとか、現代風の例だと警察、探偵、弁護士のうち一人は新興宗教を信仰していてとか、異世界風だと騙され殺されたというのが本当は魔族を嵌めるため王の偽装で、とか変化を持たせるとさらに物語に深みが生まれるよね」
「応用っぽいな」
「基本のところから、いちいち自分で発想していたら時間がいくらあっても足りないからね。物語の基本のところはテンプレをある程度利用しながら書くのが物語を書く時短術かな」
「悠久、テンプレ覚えるのが大事だってわかったよ。ありがとな」
「うん。どういたしまして」
テンプレを覚える意味
・自分の作品が読者から見てパクリかどうか判断するため。
・テンプレがあるジャンルはそれだけ人気がある。
・テンプレを知っていると、いろんな話を作ることができる。
・応用の部分を発想するのに時間を割くため。