チートスキルについて
「基本プロットを学んだところで、転生系でよくあるチートスキルについて、もう少し深堀していこうか。まずはチートスキルにはどういったものがあるかだね。多すぎるからとりあえず、大枠だけ書いてみるよ」
〇チートスキルの種類について
◇強化型
◇付与型
◇防御、無効型
◇クラフト型
◇操作型
◇強制・催眠型
◇逆境型
◇拡張型
◇変化型
◇ハズレ型
◇無し型
「大枠だけで多すぎだろう。というか、ハズレ型ってチートなのか」
「イメージだけが、ハズレなだけで、どうせ無双するからね。僕はチートスキルだと思うよ」
「マイナス効果のあるやつもあるだろう」
「それすらも、いい感じに変えて無双するのが主人公ってやつだよ」
「マジか」
「もっと変なのありませんか。無し型ってなんですか」
「悠久、さすがに私も変だと思うよ」
ののかにまで否定される。
「スキルが貰える前提の世界で、もらえなかったパターンだよ」
「そんなのあるの?」
「不遇設定の一種だよ。本来は生まれ変わったって、スキルなんてもらえないのが普通だと思うけど、例えば、クラス全員スキル貰えたのに、自分だけなかったとか、貰える前提の世界でスキルがないと悲しいよね。そういうパターンから始まる物語かな」
「そうね。不遇とか不幸って他人と比較してだものね」
「そういうこと」
○チートスキルが好かれる理由について
「ハズレ型と無し型を除いて、チートスキルが好まれる理由は、宝くじに当たることに嫌いな人間はあんまりいないってことかな」
「まあ、普通そうだよな。あんまりってなんだよ」
「僕は別に当たりたくないかな」
「お金いらないのかよ」
「お金はほしいけど、自分の実力を認めて貰えてとか、お客さんに喜んで貰えた対価としてもらうお金の方が嬉しいかな。運もほしいけど、運だけ頼って生きていくとか馬鹿みたいだよね」
「せっかく途中まで、いい感じだったのに、世間全員敵にまわしたぞ」
「書き手側の話をするのなら、訓練とかを省略して、現世でたいしたことなかった主人公を大活躍させることができるってことだね」
「だから、言い方」
「強さの設定が楽ってことよね」
「そういうこと、わかってるね。ののか」
「ののかちゃんも注意しようよ」
「ののか先輩も実は意外と……」
「どうしたのレミちゃん?」
「ああ、なんでもありません」
〇チートスキル型の目的設定について
「戦闘系のチートスキルなら、基本的に、悪い奴をやっつけることを目的にすることが多いかな。クラフト系ならスローライフかな」
「スローライフの目的ってなんだよ」
「目的がないのが目的かな」
「なんだそれ」
「トウヤ君、テトリスだよ」
「テトリス?」
「テトリスは一列揃えて消すの、それが目的。それを永遠と続けるの。それが楽しいんだよ」
ののかがゲームにたとえてくれる。
わかりやすい。
「それ、俺、楽しさがわからない」
トウヤが、顔をしかめた。
「無理にわからなくてもいいんじゃないですか? あたしもわかりません」
「なにが面白いと思うかは、人によるからね。そういうジャンルがあるってだけ覚えておいて」
○基本プロットについて
「ほとんど基本プロット1でオーケー、ハズレ型と無し型は基本プロット2を使うかな。復習のため、基本プロット1を書いてみるよ」
〇基本プロット1
現実世界の主人公の境遇
↓
転生(転移)
↓
強さの理由付け
↓
冒険開始(目的設定)
↓
目的達成
「冒険開始の目的設定で、悪い奴をやっつけるとするなら、まずは思いっきり悪役に悪いことをさせてみよう」
「なんでだよ」
「悪人を悪人だと、読者に認識させてから倒さないと、主人公が悪いやつに見えるから」
「なんだ、つまり書き手は、悪い奴がいるから倒すんじゃなくて、倒すために悪いことさせてるのか」
「わかってきたじゃないか。特に悪役にしたいやつは、世間一般的な悪いことをさせるといいよ」
「悪いことって、むやみやたらと人を殺したり」
「うっ」
「無実の人を拷問したり」
「くっ」
「村を殲滅したり、世界征服したりとかだろ?」
「ううん?」
僕と、レミちゃんと、は胸をおさえ、ののかは、悪夢を見るようにうなされ始めた。
「どうしたんだ、三人とも?」
トウヤの声で、僕はなんとか我に返る。
「ああ、なんでもないよ。そういう悪役の仕立て上げ方については、今度、気合いいれて、からまとめよう」
「変な奴だな。そんな不謹慎なのはいつも大得意だろ」
「まあ、そうなんだけど。じゃあ、不謹慎ということで、もう少しはなすけど、本来、善悪の判断ってやつは、そこに住むべき人たちが決めるものだと思うんだよ」
「例えば?」
「そうだな。カマキリは交尾をすると、オスが食べられることがある。あれって、メスの栄養になるから、子供ができる可能性はあがる。雄のカマキリにとっては、生き残ることより食べられることの方がいいことなのかもしれない」
「確かにそうだな」
「よその世界の人間があれやこれやと、こっちの世界の常識を持ち出して善悪を判断するのは、ダメだってことだ。異世界は特に、この世界ではないって意味だから、こっちの世界の常識は通用しない。それをふまえて、基本プロットに手を加えてみる」
基本プロット改造
転生転移(本来の自分と関係のない世界の人間を)
↓
運良く得た能力
↓
冒険の目的(自分の善悪判断で悪だと判定した奴を)
↓
目的達成
「これチートスキルをSNSと読み替えると、まさにSNSでよくある誹謗中傷なんだよ」
「本当ですね」
「悠久、よくこんなことに気づくよね」
「誹謗中傷する人間は絶えないからね。チートスキルは、すごい人気のジャンルだよ」
「お前はなんてこと言うんだ。そんなこと言うなよ」
「何言ってるんだよトウヤ、僕は逆だと思うよ。ヤクザ小説を読む人間は、ヤクザになるわけないと思って読んでし、推理小説を殺人しようと思って読んでる人間はいないけど、自分が何に対して快楽を覚えているのか、無自覚で書いたり読んだりしている方が危険だよ」
「それはそうなんだけどさ」
「書き手としては、現実の善悪判断を利用して、物語を面白くするのは当たり前のことだし、読み手としても、物語で、現実ではやってはいけないことをやった気分になって発散するのは良いことだよ。だからこそ、ちゃんと現実ではやってはいけないと理解しておくことは大切だ。包丁だって、使い方を間違えば、殺人の道具になる。物語だってそうだよ。ちゃんと理解して、書いたり読んだりしようね」
「なんだよ。今日は珍しく綺麗な言葉でまとめるじゃないか」
「僕は、自分のことを、自分の言葉で正当化しているだけだよ」
「なんのことだよ」
「なんでもないよ。今日のまとめだよ」
〇チートスキルの種類について
◇強化型
◇付与型
◇防御、無効型
◇クラフト型
◇操作型
◇強制・催眠型
◇逆境型
◇拡張型
◇変化型
◇ハズレ型
◇無し型
○チートスキルが好かれる理由について
・宝くじに当たって嬉しい人が多い。
・自分の善悪判断で断罪することに快感を覚える人が多い。
〇チートスキル型の目的設定について
・戦闘系のチートスキルなら断罪タイプ
・クラフト系のチートスキルならスローライフタイプ
など
○基本プロットについて
◇基本プロット1
現実世界の主人公の境遇
↓
転生(転移)
↓
強さの理由付け(チートスキル)
↓
冒険開始(目的設定)
↓
目的達成
◇基本プロット2
現実世界の主人公の境遇
↓
転生(転移)
↓
不遇扱い(ハズレ型、無し型)
↓
冒険開始(目的設定)
↓
強さの理由付け
↓
目的達成