プロローグ
一応『夢見る僕と非道の姫』の大学編になります。
文芸部メンバーの過去が気になる方は、そちらを読んでもらえると嬉しいですが、あっちはR15になるので注意お願いします。
前の作品読まなくても全然大丈夫ですし、なんなら目次から書きたい小説の系統だけ読んでもらえればと思います。
純粋に、自分が小説を書くための小説です。
よろしくお願いします。
『入部届け偽造しときました』
大学の入学式が終わった直後に、僕の携帯に不穏なメールが届いていた。
僕は送り主であるレミちゃんに急いで電話をかける。
「レミちゃん、さすがにそれはないだろう」
僕はレミちゃんが、電話に出た瞬間、前置きなしにそういった。
「部室申請するのに、最低4人は必要で、急がないと空きがなくなりそうだったんですよ。文芸部入ってくれますよね?」
「それは入るけどさ」
親しき仲にも礼儀あり。
普通了承をとるのが先ではないだろうか?
「ののか先輩にはうまく言っといてください。急ぐので切りますね」
それだけ言うと、電話を切られた。
もう相変わらずむちゃくちゃである。
レミちゃんは、高校の頃の後輩で、今から入る大学の先輩にあたる。
僕は現役で、入学しているので、レミちゃんが飛び級で大学に入学している形だ。
どのように飛び級したかは、説明が長くなるので割愛したい。
ものすごく頭がよくて、飛び級制度を利用したとかではない。
むちゃくちゃやったとしか言いようがない。
裏口も裏口入学だと言っておこう。
またレミちゃんからメールが送られてきた。
『指定場所で一年生勧誘しといてください』
丸が付けられたらマップ画像が送られてきた。
レミちゃん、僕も一年生ということを理解しているのだろうか。
自分の彼氏には、ムチャ振りなんてしないのに。
僕には、どんどん無理言ってくるんだから。
「悠久、お待たせ」
ののかがトイレから帰ってきた。
ののかは、小学校からずっと同じ学校に通っている幼なじみ兼彼女だ。
家も隣である。
正式に付き合い出したのは、中学校を卒業してからだから、もう付き合って三年になる。
毎日あっているとわからないが、きっちりとした服装だからか、今日は随分大人びて見えた。
ののかが僕の顔をのぞき込んできた。
「どうしたの? 疲れた顔をしてるよ」
「いや、ちょっと、レミちゃんから連絡があって」
「どんな内容?」
「文芸部の申請事前にしといてくれるって」
「わーレミちゃん優秀だね」
「そう……だね」
僕は嘘はついてない。
物は言いようだ。
なんて疲れる伝言ゲームなんだ。
指定場所、共通棟の端の方にいくと、机と椅子が置いてあった。
机の上には、勧誘用のビラもおいてあった。
ビラには勧誘の文言と一緒に捨てアドレスだと思われる連絡先が書いてあった。
『悠久先輩、ビラ配りお願いします』
だから僕は一年生なんだけど。
まだ一枚も勧誘ビラもらってないのに、どうして配る側なんだろう。
はあ、と僕がため息をついていると、
ののかがビラを楽しそうに眺めていた。
「レミちゃん、これ一人で用意してくれたんだ。言ってくれたら、一緒に準備したのに」
「そうだね」
きっと僕らが入学してくるのを楽しみにしてくれていたのは確かだろう。
ビラには、雷神をデフォルメしたようなオリジナルキャラまで描いてある。
きっとルンルンで準備していたに違いない。
そこまで想像してしまったら、手伝わないわけにはいかないだろう。
「勧誘がんばるか」
「うん!」
本当に、いつまでたっても世話のかかる後輩なんだから。