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姉様の秘密

ちょっと傾きかけた陽射しの中を僕と姉様は並んで歩く。まずは二人きりで姉様に色々聞いてみようと思ったのだ。

姉様は少しキョロキョロと見回しながらも楽しそうに歩いている。


僕は軽く深呼吸をして、姉様に話しかけた。

「姉様、フウカの話は聞いたけど、いまいち姉様本人の状態が分からなかったんだよね。だから姉様の口から聞いておきたいと思うんだけど....いいかな?」

「!?」

姉様も、僕に色々聞かれる事を覚悟してたはずなのにとても分かりやすくビクッとした。

「鍵は今朝の夢だと思うんだよな....。

精霊と契約する前、どんな夢見てたの?」

僕の問い掛けに、姉様は微笑んでいるが、目が泳いでいる。とても躊躇っているのがよく分かる。表情から考えてる事が丸わかりだ。

「言いたくないかもしれないけど、弟の僕にくらい少しは教えてくれてもいいと思うんだ。知ってればフォローもしやすいし。」

今度はちゃんと目を見て言う。

もちろん上目遣いでうるうる付だ。

「ユリウスの可愛さ尊〜」

姉様、くねくねしながら何言ってるか分からないよ。

まあでもこの角度、けっこう姉様好みのポイント押さえてるでしょ?


くねくねが収まって決心がついたのか、ふぅと息を吐いて姉様が話し始めた。

「実は私もよく分からないのよ?」

困った笑顔で姉様が言うには、

チョコレートを食べてお酒の成分が回ってきた時に前世をちょっと思い出したらしい。そのチョコレートボンボンとかいうお菓子は前世の姉様がとても好きだったんだって。この国最近入ってきたばかりのお菓子が大好きって、おかしくない?

え?ああそうなの。

この国どころかこの世界でもない記憶なんだ。

その世界で姉様は研究者だったんだって。

で、チョコレートしか食べず、研究中に倒れた…

不摂生と過労ですか!?

研究者っぽい死因ですね。ははは。



「じゃあ昨日までの姉様と今日の姉様はちゃんと僕の姉様なんだね?」

僕は僕にとって重要な事を確認する。

「そりゃそうよ。私は私。今ならちゃんとユリウスが泣き虫だった頃の思い出も思い出せるわよ!」

「泣き虫じゃないですよっ!幼かっただけですっ!」

慌てて否定する。でも、心から安堵した。

「じゃあさっきはなんで僕の事も姉様自身の事も分からなかったの?」

うーんと僕は頭を傾ける。

「ああ〜それはね、前世の自分と今の自分がごっちゃになって、区別つかなかったのよ。」

「じゃあ今は?」

「マリアが名前を呼んでくれるし、着替えた時鏡見たら、ああリナリア()だってストンと納得したのよ。でも前世の感じも残ってて、私はいつも通りのつもりだけどマリアが戸惑ってるのよね。」

「そりゃ、姉様喋り方がちょっと前と違うから。あと性格も少し違うよね?違和感があるようなないような....」

前はもっとおしとやかな喋り方だったんだけどね。

でも嫌いじゃないよ。

「リナリアよりも前世の方が年上だったから、そっちに引きずられてるかも?今も10歳って自覚がないのよね〜」

あははっと姉様は誤魔化し笑いをする。

どれぐらい年上かは謎だけど、ナフキンを膝にかけるのは忘れないと思う.....

まあでも、なんか楽に話してる感じがしていいね。

うん、距離が近くなった気がする。

「そう?ユリウスがそういうならこのままでいいよね!」

で、夢の話の続きだけど、夢に女神様が現れて、色々お話してたらフウカが乱入してきて起きたと。


......ん?

ちょっと待って。

なんかものすごく大変な単語をスルーしてる気がするぞ?

女神様?

女神様が夢に出てきて、色々お話してた!?

「ええええええええええ!!!」


「っっっっつ!ユリウス、いきなり大声出すと耳が痛いよ!」

両耳押さえて姉様が批難する。

「姉様、女神様に会ったの!?」

「うん。でも最初は分からなかったのよ。風華が来た時に女神様ーって呼んだからわかったの。」

女神様が夢でも現れたら、そりゃ突然清気が濃くなっちゃうわけだ。

「それで突然精霊と契約したんだ。」

「だって風華可愛いもん〜」

(そうじゃぞ、我は可愛いのじゃぞ!)

姉様の言葉に反応して、姉様の肩の上でフウカがフンスッとふんぞり返って返事した。

精霊は基本自由だ。

契約している精霊は呼びかければ現れてくれる。

呼びかけなくても話かけてくれる。

姿を現すのも消えたまま話すのも、本人の自由。

でも気配は感じるから側に居てくれてるのはわかる。

僕のアリエスはそんなにおしゃべりな方ではないのか、そこまで頻繁に会話したりはしないけど、言わなくても通じてる時は多い。似た者同士って事かな?

「姉様、侍女の前でフウカとおしゃべりする時は念話を使った方がいいよ。」

「え、そうなの?どうして?」

「侍女には精霊が見えないじゃない。」

「おお!!わかりみ〜」

.....向こうの言葉か?

「じゃあ父様達には?」

「夕食後僕から報告するよ。」

精霊と契約してるってあんまり周知させないほうがいいんだよね。

誘拐の危険とか増えちゃうらしいし。

だから侍女の前でも念話、口を動かさずに心で会話する方法の方が安全なんだ。

別に僕のルイザや姉様のマリアが悪い事考えるって事では無くて、むしろ巻き込まれて危ない目に会わないようにってことなんだけど、さすがに父様には知らせないとね。

「よーし風華、念話の練習しよ!」

(うむうむ。いっぱいおしゃべりできるからの!)

....精霊契約の特典っていうか、念話ってそんなに難しくないと思う。まあ楽しそうだから良いけど。

(プハッ!ユーリだって最初はあんな感じで可愛かったぞ〜)

(えええ〜そうかな〜?)

珍しく頭の上に寝転んで現れたアリエスが楽しそうに念話を送ってきた。

何はともあれ、これからこのちょっと前より明るくなって、たまに意味不明な言葉を叫ぶ姉様をどうやってフォローしようか少しワクワクしてる僕がいた。




はい。

お察しの通り転生者でした(笑)

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