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姉さまと僕

シャルマー二侯爵家には現在子供が2人居る。

僕と姉様だ。

姉様は僕の1つ年上で、リナリア=シャルマー二 10歳。

物静かでいつも優しく、多少身体が弱いせいか時々寝込む事もあるが、おっとりとした女の子だ。

僕は姉様が大好きだ。

今はまだ子供だけど大きくなったら姉様を守れるようにと、剣術の稽古も毎日してる。

もちろん勉強も抜かりない。

幸い僕には精霊が一緒に居てくれて、精霊魔法も使えるように練習中だ。

姉様は勉強は普通だけど、10歳になったから社交マナーとダンスの授業が増えてちょっと大変そうだった。

昨日もその社交マナーの練習で同じ侯爵家の子供のお茶会に行ってた。

子供のお茶会ーーー子供だけのテーブルと、保護者テーブルに別れて、お茶会の流れや雰囲気やマナーに慣れるために行われる子供主催のお茶会だ。保護者は親でも侍女でも問題ないが、あまりにもマナーが会得されてないとその後のデビュタントに響くとか響かないとか....だから真っ赤になってフラフラで侍女に抱えられて帰ってきて、そのまま寝てしまったのも、緊張で疲れたんだろうと思ってあまり心配はしなかった。朝にはきっと起きてくると思ってたんだ。

でも、昼食になっても眠ったままと聞いた時に母様も父様も心配しだした。

僕も心配で午後はみんな一緒にサロンでお茶を飲みながら何があったんだろうかと心配していたんだ。


そんな時に姉様が目を覚ました。

両親が走って行ったのも当たり前だ。


そして、姉様は色々忘れていた。

一体何があったんだろう?


僕はモヤモヤとする不安を抱えながら小サロンに入った。


うちのサロンはお客様用の大サロンと家族がくつろぐための小サロンと子供達のために作られた、庭に出入り可能な温室サロンの3つがある。

今も小サロンで父様母様は自分のソファに座っていた。

さっきまでいたサロンである。

僕と姉様の席はテーブルに用意してあった。飲食する時や読書や書き物をする時はテーブルでと家族のルールになっている。

姉様は僕より先に部屋に着いたのか、飲み物とサンドイッチが置かれるところだった。

僕の席は姉様の横。

座るとすぐにルイザがミルク入りの甘い紅茶を入れてくれた。

「いただきます」

姉様が両手をそっと合わせて小さく呟いた。

思わず姉様の顔を見る。


え?今の何?


姉様はもぐもぐとサンドイッチを手に持って食べる。

僕はぎょっとした。

「ちょ、姉様、待って待って〜!」

小声で姉にストップをかける。

「ん?」

「ナプキン膝に掛けないと!先週マナーの先生に怒られたって言ってたじゃない!」

「えぇ?そうなの?このナプキン食後の手拭きだと思ってた。」

え、ちょっと待って、名前どころか覚えたはずの勉強も忘れてるの!?


姉様が教わった食事のマナー通りに食べ始めたのを確認して、ホッと息をついてなんとなく周りを見る。

うわあ、父様母様どころかルイザにマリアまでこっちを見てる。

「あはは、姉様ナプキンかけ忘れるなんてよっぽどお腹が空いてたんだね。」

明るくフォローする。

みんななんとも言えない顔してるよ。


元々、姉様はこっちがびっくりするようなミスをするんだ。僕はいつも小声とアリエスの精霊魔法の助けで姉様をフォローをしていた。


でも、

なんだろ。

今のっていつものミスじゃない感じ。


あまりにも自然すぎる行動。

ミスしましたって感じじゃないんだよね。


僕はコレは困ったと内心ため息をついた。


姉様が名前も家族も今までの覚えた事も忘れているらしい。なんて言うか....中身が別人?

姉様だけど姉様じゃない人が居る感じ。

でもそれを騒ぎ立ててもいいものか....?

フウカの事もあるし。

心配症の母様とか倒れそう。

やっぱり姉様に直接聞いてみた方がいいな。


「ごちそうさまでした。」

またもや両手をそっと合わせて姉様が呟いた。


なるほど。

食事の儀式っぽいね。

「姉様、自分の名前思い出した?」

コソッと聞いてみる。

姉様は膝のナプキンで口元を拭いながらニヤッと笑って

「一応は思い出したよ。合ってるかちょっと微妙だけどね、あはは」

思い出したって言ってるけど、口調は僕の知ってる姉様じゃないぞ?

そんな笑い方今まで見たことないし!

話し方とか全然昨日までと違うのに。

なんかちょっとドキッとする。


「リナリア食べ終わったかい?」

父様が話しかけて来た。

「リーナ、こっちに来て昨日何があったか教えてくれる?」

母様も心配そうに言った。

「姉様、精霊の事は今は無しで」

僕は小声でそう言って姉様の手を引いてソファまでエスコートした。

姉様は僕の手をキュッと握って了解の返事をくれた。


僕達はそれぞれのソファに腰掛けた。

「父様母様ご心配をお掛けしました。」

姉様がいつも通りの口調で話し始めた。

「昨日はお茶会でとても美味しいお菓子が出たのです。その、あまりの美味しさになんだか胸がきゅっとなって気付いたらベッドに横になってました。」


....

うん。

やっぱり何言ってるか分からないよ?





年子なのに立派なシスコンですな( ˇωˇ )


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