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炊き出し4

炊き出し会場の仕組みを教えて貰って部屋に戻ってくると、姉様が目をキラキラさせながら僕たちを振り返った。

「ねぇ、ユリウス、カイン。」

うわ、嫌な予感。

「あの感じならパンを渡したりとか私達でも出来そうじゃない?」

私たちって言いましたね?

僕もやれってコトだよね?

「うんうんっ!僕ももっと近くで庶民を見てみたいと思ってたんだ!」

ぱあっと顔を輝かせてカインが姉様に賛同する。

「だよねー!」

仲間を増やせて姉様とカインが両手で喜びのハイタッチをする。

「ユリウス....ダメ?」

二人が上目遣いで僕を見る。


クっ....誰だ、こんなあざとい仕草おしえたのっ!?


僕はため息を一つついて二人に言った。

「今日の責任者のメイド長の指示に従って、邪魔にならない範囲でなら良いと、父様から許可を貰ってます。」

その言葉に、入口の側で控えていた王子の護衛のアルフレッドがぎょっと息を飲んだ。

「「やったあああっ!」」

カインと姉様が手を取り合って飛び上がって喜ぶ。そして姉様は自分の荷物が置いてある場所に歩いていき、

「こんなこともあろうかと用意しといて良かったわ!」

ウキウキな笑顔で荷物の中から、数枚の折りたたまれた布を取り出した。

「はい、これがユリウスので、こっちがカインの。」

そう言って手渡されたのは、エプロンだった。

「本当は割烹着が良かったけど、さすがに時間が無くてカフェエプロンになっちゃったわ。」

カッポウギが何か分からないけど、このエプロンが姉様の手作りということはわかった。

「そして私はコレ!」

そう言って取り出したのはヒラヒラのついた真っ白のエプロンドレス。

姉様は器用に後ろ手でリボンを縛ると、くるりと回ってエプロンドレスの具合いを確かめた。ふわっと広がったスカートに軽やかに舞うフリルが姉様のまわりで踊る。

弟の僕が見てもとても可愛らしい。

「どう?可愛いでしょ!?」

うふふ、と笑って姉様が聞いてきた。

「も「もちろんだっ!」」

僕の返事をかき消してカインが勢いよく言った。

見ると、カインはとても瞳をキラキラさせて姉様をみている。

「リナリアはいつも可愛いけどそういうヒラヒラしたドレスもとても似合っているのだな!」

カインの褒め言葉に姉様はスカートの裾を軽くつまみ、品良くカーツィをして

「あら、そんなに褒めていただくとこそばゆいですわ......ップふっ!」

淑女の様に返事を返して結局我慢できずに吹き出し、そしてそのまま、あははと笑っている。


姉様、途中までは良かったのに!最後のっ!そういうところが母様に怒られるところですよ!


さて、この手渡されたエプロンを僕も自分で付けねばならないのだろうか?

姉様も自分でむすんでたし、やってみるか。

僕はエプロンを広げ、紐の部分を持って後ろに回そうとしたが、後ろに回す前に前に当てる部分がずり落ちる。


......思ったよりも難しいぞ?


僕が上手くエプロンを付けられないのを見たのか、姉様が近寄ってきて僕の前にひざまづいた。

「ほら、姉様にかして。」

そう言ってスっと僕の手からエプロンを取ると、僕がドキッとしているウチに後ろで紐を交差させて前に持ってきてキュッと結んだ。

「次はカインの番ね。」

そう言ってエプロンを広げて困っているカインの前に膝まづいて、こちらも手早く結んでいった。カインも顔を赤らめて驚いて固まっている。

エプロンを綺麗に着付けるには一度背中側に紐を回さねばならない。膝まづいている姉様は必然的に僕やカインのお腹スレスレまで顔を寄せることになる。そんな状況はメイドでも無い女性がする事はまず無い。姉とはいえたとえ一瞬でも、びっくりして硬直するのはしょうがないことだろう。護衛のアルフレッドに至っては口と目を開けたままフリーズしていた。

そもそも姉様も淑女としてその行動はどうなのか?さすがにもう少し気を付けねばいけないのでは無いのだろうか?


そんな事をつらつらと考えてしまうあたり、僕も多少動揺していたらしい。



リボンを結び終わった姉様は満足気に僕ら二人を見てうんうんとうなづいている。

「じゃあ下に行って何を手伝うか聞いてきましょ!」

姉様はそう言って上機嫌に歩き出した。


結果的に、僕らはそれぞれ違う仕事を任された。カインはパン配り、僕は食器の受け取り、姉様は洗った食器の拭き上げだ。

平民に声をかけるという行為は、思ったより僕には難しかった。

食後の満足そうな顔を見るだけで満足してしまい、受け取るのも一瞬なので声をかけるタイミングが難しいのだ。

その点カインは元々が明るい性格も手伝ってどんどん話しかけている。だが、声をかけられた平民のその後の様子が少しおかしい。

椅子に座らず突っ立ったままの者や、ぼーっとする者、真っ赤になってきゃあきゃあ言う者(主に女性)、テーブルに着いてから手を合わせて拝む者(主に老人)等、なかなかスムーズに食事が始まらないのだ。

さすが王族。

子供でも顔の造形は一級品だと再確認した。

そういえば姉様もカインに初めて会ったお茶会の後の倒れてからしばらくの間、天使が~天使が~って言ってたな....


その後休憩や、姉様がやりたかった子供達にプレゼントを渡すという目的もこなして僕らは帰りの馬車に揺られていた。

「それにしても子供達みんな可愛かったわね!」

姉様は上機嫌で言った。

「一部危ないヤツもいたけどな。」

思い出してムッとした顔をしたカインが言った。

「危ないヤツ?そんな子いたかしら?」

「ほら、姉様にふらふらと寄ってきた者が居たでしょ?」

あの瞬間どれだけ僕が慌てて警戒したと思ってるんだ!?

いや、完全に問題ないと油断してた僕もいけないんだけどね。

「ああ、あの男の子ね!とても一生懸命手伝ってくれてたわよ?」

呑気な姉様の感想に僕とカインは顔を見合せて同時にため息をつく。

「おいユーリ、リナリアはちょっと警戒心が無さすぎるのではないか?僕でも思わず前に出てしまったぞ?」

全然問題にもしてない姉様の反応にさすがのカインも呆れながら言う。

「あらだって私の拙い編み物をわざわざ選んで貰ってくれたんだもの!いい子に決まってるわっ!」

フンスッと力説する姉様に、はあ....とため息をついて脱力してしまう。

違う、そういう事じゃない。

「リナリアの手作りなら、僕も喜んで貰うぞ!」

カインが主張する。

「お世辞でも嬉しいわ、ありがとう!」

にっこり笑いながら姉様が返事をする。

「お世辞じゃないって!」

「はいはい。ありがとう。」

ふふふっと笑って受け流す姉様。


そうこうしているうちに馬車は侯爵邸に付き、炊き出しは無事に終わったのであった。




姉様は自分のやりたかった事が出来て大満足です。

カイン王子もカフェエプロンつけてパン配りに大満足。

ユリウスは今日の反省を胸にシスコンルートに順調に邁進中(笑)



いきなりなシステム変更に戸惑っているのは私だけでは無いはずだ(笑)

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