王宮馬車
「宰相様こちらにいらしたんですね。」
声の方を見ると、父様と同じくらいの歳の男性が困った笑顔で立っていた。
「ん?ああ、ストゥルナか。お前も今から昼食か?」
父様はにこやかに返事をした。
この人父様の部下かな?
「違いますよ。宰相補佐殿に泣きつかれて宰相様を探していたんですよ。」
「それはすまなかったな、では私は仕事に戻るとしよう。」
「それは助かりますが、こちらのお子様は....?」
ストゥルナさんは父様の向かいに座っている僕をちらっと見て首を傾げた。
「この子は私の息子のユリウスだ。明日正式に連絡が有ると思うが、カイン殿下の従者になった。時々王宮で見かけることもあるだろうから気にかけてやってくれ。」
父様は嬉しそうに僕をそう紹介した。
僕は飲み終わったカップを置いて立ち上がり自己紹介をした。
「ユリウス=シャルマーニです。」
「ストゥルナ=カルヴァンです。君がシャルマーニ宰相の自慢のご子息ですか。王子殿下の従者決定、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。父様がどんな話をしてたのかとても気になりますね。」
僕はなんともこそばゆい心地で挨拶した。
父様はテーブルの真ん中に置いてあるナフキンを広げて食べ終わった食器に被せ僕を見て、
「ユリウス、ストゥルナは私の部下の1人で学園からの友人だ。ストゥルナ、お前今から時間空いてるか?」
「少しなら。」
「じゃあユリウスを家に帰したいから馬車乗り場まで連れて行って乗り方を教えてやってくれないか?」
「いいですよ。」
「助かる。ユリウス、ストゥルナについて行って家に帰りなさい。私は夕食までには帰ると伝えてくれ。」
「わかりました。」
父様はじゃあ、と手をあげて割と早足で去っていった。
お仕事大変なんだな。
僕とストゥルナさんは食堂を出て並んで歩く。
「あの、貴重なお時間を取ってしまってすみません。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。僕はそこまで忙しくないですからね。」
にこやかに答えてくれる。
「ユリウス君はしっかりしてますね、うちにも息子が居るのですがこれがもうヤンチャでヤンチャで。」
「えっ!?」
ストゥルナさんはこんなに穏やかな感じなのに!?
「ご子息はお幾つなんですか?」
「今年で6つになります。」
「僕もその頃はいっぱい父様に叱られてましたよ。最近は叱られるより教えて貰うことの方が増えましたけどね。でも母様には姉様共々まだまだよく叱られます。」
「あはは、宰相の奥方は元々元気な方でしたからね。」
そうだろうな〜
姉様見てると何となく想像つくよ。
「そのうちうちの子もこんな立派になってくれることを願っていますよ。」
はははっと笑った。
そんな和やかな世間話をしているうちに王宮馬車乗り場に着いた。
「この王宮馬車はここで受付すると、各屋敷まで送って行ってくれるんだ。」
「凄いですね。」
「王宮の用事で外に行く事も有るからね。」
受付で行き先と人数を申し込むとすぐに1台の馬車が来た。
王宮の紋章が付いた華美過ぎず質素すぎず実用的な2人乗りの馬車だった。
受付で人数聞かれたのは馬車の大きさが変わるからだったんだ。
「ストゥルナさんありがとうございました。」
「いえいえ、また王宮で。」
「はい。」
僕は馬車に乗り込み見送ってくれるストゥルナさんに頭を下げた。馬車はゆっくり出発した。
明日からは従者生活が始まる。
何だかちょこっと大人になった気がした。
こんなに短いなら前の話にくっつければ良かったな....
王宮馬車....公務用だから無料で乗れます。
屋敷まで行くと王宮に帰って行きます。
登城する時と帰りが決まってる時は自宅から自家用馬車で行くらしいです。