2.転生先は…
本日3話目です!
「うぅー、ここは……?はっ――!」
やばいやばい呑気に寝てる場合じゃない!このままだと溺死する――――って普通に呼吸ができるな。ちゃんと地面があって草が生えてる上に俺はいる。
「まさか転生場所を間違えた?」
あいつなら有り得るな。現状すぐに死ぬことはなくホッとしたが、現状把握は全く出来ていない。まずはそこからだな。
前方に広がるのは海。左右も見渡す限りの海。後方には立派な一軒家がポツンとあり、その後ろを覗くとこれまた海。つまりは360度海で水平線の向こうには何も見えない。溺死という最悪な状況は回避できたけど、これやばくない?
詰まる所、家一軒分と多少の庭がある島――と呼ぶには小さ過ぎるが、ここが俺の生活圏らしい。あのポンコツ女神が用意してくれた家にしては意外と悪くなく、良い意味で裏切ってくれた事には感謝だ。しかし"住"だけあっても生きていけない。何より沈まないか心配だ。……大丈夫だよな?
「取り敢えず生きているし服も着てる。家の中は後で見るとして……たしか現状確認をしたい時は"ステータス"って唱えればよかったんだっけか」
その言葉を発した瞬間、大きめのタブレット型端末が現れ、咄嗟に手を出して落とさないよう何とか掴む。普通ステータスってゲームで言う所のシステムウインドウ的なものが現れるんじゃないのか?
まぁあの女神に普通を求めるのが間違いか……と、最早諦観の念を感じつつも、早速タブレットの電源を入れてみた。あ、充電とかって大丈夫なのか――
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NAME:フクノ・ヒロヤ(人族:男)
AGE:15歳
称号:ダンジョンマスター、転生者、女神の祝福を受けし者
所持DP:10,000
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「え?これだけ?」
おいおいっ!マジで!?もっとHPとかMPとかがあるべきじゃないのか!?あの駄女神の普通はどうなってんだよ!
少ない情報だけど一つずつ精査していこう。まずは名前や種族、性別は大方問題ない。生前はアラサーだったから若返ったことに多少違和感があるけど、危惧していた赤ん坊からじゃなくてよかった。
次に称号だが、『転生者』はその通りだから問題なし。『女神の祝福を受けし者』も効果は不明だけど何とか理解できる――けど『ダンジョンマスター』ってのはどういう事だ?ダンジョン何処だよ。DPってのもよく分からん。
タブレットってことはタップしたら称号の詳細が出るとか――出ないな。ならスライドすれば――おぉ出来た!スゲー!
スライドした画面には消費するDPとそれによって手に入る物のリストが表示されていた。見やすく分類された上、ソートや検索機能も付いており、タップすると詳細が出て、もはやこれはネットショッピングと言っても過言ではない。よくよく見ると魔法系のスキルや武器なんかの項目もあってめちゃくちゃ興奮する!これだよこれ!
ざっと見た感じ、日用品や食材何かは1円≒1DPくらいで買うことが出来るみたいだ。異世界でも日本の物が食べれるとは……予想していなかったからこれまた嬉しい誤算だ。隅々まで見ていると”メールが受信されました”と表示されたのでタップする。
『やあやあ元気ー?女神デエス様だよぉー!このメールを見ているってことは無事に転生してステータスを確認したみたいだね。どう?私ってばスゴイでしょ!?もぉー褒めたって何もでないぞ!』
やべぇ、まだ出だしなのに続きが読みたくない件について。このステータス型のタブレットは確かにスゴイけどさ、素直に褒めると何か負けた気分になるから言わないでおく。非常に読みたくはないが、何か貴重な情報源がある可能性も0ではなく、読まないという訳にもいかない。一度深呼吸し冷静になってから続きを読み進める。
『今いる島?でいいのかな、その島には悪意ある者は入って来れず、嵐とかで沈まないように海水は入ってこない特殊な結界が張ってあるから安心してね!なんたって私は女神だからこれくらいは夜飯前!あれ昼飯前だったかな?とにかく安心してってこと』
残念女神って言った事は訂正するよ。こんなスゴイ結界を張ってくれるなんてやっぱりあんたはスゴイ――やっぱり残念女神だったみたいだ。夜飯前ってそれを言うなら朝飯前だろ、夜だったら一日が終わってるだろ。
『次に気になることと言えば私だよねぇ!出会った当初は全然話せなかったからずっと気になってたでしょ?自己紹介の時に名前は言ったから、そーだねぇ趣味を教えてあげる!趣味は――』
ふざけんな!お前のプロフィール何か微塵も興味ねぇよ!それに説明放棄したのはお前だろ!?ここは飛ばすとして――うわ、無駄に長文でうぜぇ。
『―――でね……って、あ!そう言えばダンジョンのこと忘れてたわ。普通に転生させてもあれだと思ってダンジョンマスターにしといたわよ。ダンジョンはそこにある家がそうよ!ダンジョンコアは貴方の心臓。ダンジョンは基本的に破壊不可能だけどコアが壊されるとダンジョンも壊れちゃうから要注意ね!ま、死んだらダンジョンがあっても意味ないから大丈夫でしょ!スキルは考えたんだけど面倒―――じゃなくて、自由度を優先して選べるようにしてあげたわ!目指せ俺だけの最強スキル!……なんちゃって』
家がダンジョンって……そこまでしてダンジョンマスターに拘る意味があったのか?この島には結界が張ってあるんだからそもそも敵は上陸できないはずだろ?心配する必要が分からないんだが。
あとダンジョンコアが心臓ってのは驚いたけど、ダンジョンとコアを別々に守る手間が省かれたからむしろ助かるな。てかそれならそもそも面倒がらずにコアである俺を強化してくれよ。
『DPは基本的に日を跨ぐ度に貯まる設定だけど、気まぐれで増えたりするかも!ま、増える分には文句ないよね?それから、家の中の電気・ガス・水道なんかは空気中の魔素で賄えているから、ほぼ無限に使える親切設計!それにしても、独身なのにこんな大きな家に住んでいるとか日本人って凄いのね』
女神の知識に半端ない偏りがあるみたいだけど、何はともあれグッジョブ!マンション暮らしから一戸建て生活へレベルアップを果たしたぜ。しかも光熱費はゼロで家具家電付きとか素晴らしい。デエスの好感度がうなぎ登りだ。
『あとはまぁなんとかなるでしょ?コツコツDPを貯めれば色々買えるんだから平気よね!どーしても困った時は設定画面にある神様コールを押せばきっと?恐らく?多分?ひょっとしたら?誰かが出るわ。それじゃあ良い人生を送ってね!』
おいっ絶対出ないパターンだろ!てか誰かってそこはお前が出ろよっ!最後の最後で上がった好感度を0に戻していくあたり残念女神に相応しい。
ん?まてよ?コツコツ貯めればって言うけどさ、何時になったら船は買えるんだ?そもそも俺、操縦出来ないんだけど、陸地まで無事に辿り着けるのか?無理ならまさか天涯孤独ルート?
「…よしっ、気持ちを切り替えるため一旦忘れてマイホームを見に行こう!」
まぁ困ったらすぐにでも神様コールすればいいか。そんな甘い考えをしながら新居へと向かった。




