17.迷惑な来訪者
まずは更新が遅れて申し訳ないです。
今週は親の入院、親戚の不幸、リアルでのトラブルと不運続きで、執筆時間が確保できず遅れてしまいました。
あれから風魔法をメインに練習を積み重ねた。アニメや小説を読んでいたおかげもあってか、上級魔法までは無詠唱で発動できるようにまでなった。しかも練習中に魔力の限界を迎えることは一度もなく、ほぼ無限に等しい魔力があることを確信した。
アリスはと言うと、魔法をイメージすることに苦戦していたため、明確にできるようにとアニメをすすめた。風魔法を使ったアニメってのがすぐに思いつかなかったから、それを使われている場面のアニメを選んだ。
一つは仲間や絆の大切さが知れる魔道師ギルドのアニメと、もう一つは人気の高い双子の鬼がでてくるアニメをチョイスした。どちらも俺が観たことあるアニメで好きだった作品だ。多く風魔法を使っている作品ではないものの、イメージのヒントにでもなればと思って見始めた。
―――結果として、無詠唱が出来たり発動速度が上がったりとアリスの成長につながった。しかし、断片的にアニメを観たせいで話が気になりだし、最初から観たいと言われ、毎日数話ずつアニメを観ることになった。
まぁお互いに魔法が向上しているからよしとしよう!残念ながら闇魔法に関しては、アリスで試すのは気が引けたためまだ人に対して発動はしていない。
昼から外に出て最近の日課である魔法の練習をする。練習と言っても単に魔法を使うのが楽しいだけだけどな。
風を飛ばしたり浮遊していると、ふと視界に何かが映ったような気がした。
「なぁアリス、船が見えるんだけど…」
「えぇ、私にも見えるから気のせいではないわね。聞いた話では船には所属を示す旗が掲げられているはずなのだけれど―――」
やっぱり見間違いではなかったか。見た目は木造船、地球のと比較すると沈没しないか心配だ。
遠目ながらも旗は見えるけど、無地であるためどこの国とかは分からない。まぁ見えた所で分からないけど。
「うん?停まった?」
「トラブルかしら?」
トラブルって線も考えられるが、何もない海に島があれば気にはなるだろう。しかしこの島がいつできたのかは俺にも知らない。デエスが家を用意するために島も用意したのか、たまたま無人島があったからそこに家を建てたのか。まさに神のみぞ知る事だ。
「デエスを信じるのであれば、島には結界が張ってあるから悪意を抱いていたら、入ってこれないから大丈夫だとは思うけど」
「それでも警戒はした方がいいわね」
実際に結界が発動した瞬間をみたことがない。しかし嵐の日でもこの島は沈むことなく、また波が襲いかかってくることもなかった。つまり結界は常時発動状態、だと思われる。いかんせん人の場合はアリスしか例がなく、彼女に至っては悪意はなくもし悪感情があるとどう結界が反応するのかは定かではない。
そのためアリスの意見はごもっともである。
「小舟がこっちに来てるな」
「話し合いにでも来たのかしら?」
彼方からは家が見えてる―――つまり誰かがいると思って向かって来ているはずだ。となると何かしらの交渉かこの地に興味を示したのか。
まだはっきりと相手の顔までは見えないが、人数が四人だということはわかった。相手の意思を確認するべく先に声をかける。
「何しに来たっ!」
風魔法で声を届けたが、相手側に風魔法を使える人がいなかったら意味がないと使ってから気づいた。しかしながら―――
「……私達に敵意はありません。とある国へと向かう途中この島が目に入り、調べにきた次第です」
やや遅れて女性の声で返答があった。素直に信じることはできないものの、話し合いの通じる相手であったのは僥倖。問答無用で攻撃でもされていたら此方も黙ってはいない。
「一先ず話を訊いてみようとは思うけど、アリスもそれでいいか?」
「えぇ…いいわよ」
「もしもの時を考えてアリスは俺の後ろにいてくれ」
最悪を想定しいつでも逃げられる準備はしておく。
「上陸を許可する。ただし島の端にだけだ!」
「……感謝します」
小舟は進み相手の顔がわかる程に接近し―――どうやら四人組は男一人と女三人のようだ。
なんとも異色の組み合わせではあるが、唯一男である人物は、髪がボサボサで無精髭を生やし見るからに不清潔そうな男だ。しかしこの中では彼がリーダーなのだろう。
女性達三人は薄汚れた外套を羽織り、彼女達の首には鉄の塊―――恐らく奴隷の首輪がされている。アリスも気づいたのか、ぎゅっと袖を掴み少し震えている。安心させるべくその手を握る。ビクッと体が震えはしたものの、俺の手だとわかったのか震えがおさまった。
改めてよく見ると、長年着ているのか破れていたり皺が目立つ服を着た男。その男が着ている物よりもボロそうな服を着ている女達。女性が着るにしてはみすぼらしく、また色々と際どい格好ではある。異世界人の格好や奴隷の格好とはこういった物なのか?
そんな事を考えている内に四人は上陸に成功―――つまり良からぬ事を企んだでいる様子はないのだろう。
「いやぁー、話のわかる御仁で助かりやしたよ」
左手で頭をかきながらペコペコと頭を下げ、口調からは下っ端臭が漂よう男が一番に声をかけてきた。女性達はそんな彼の後ろに付き従い、我関せずといった雰囲気を醸し出している。
「始めやして、あっしはズークといいやす。外国へと船を進んでいやしたら、島が……いや家があって驚きやした!そんでちょっと探ってこいと言われやして、来た次第でさぁ」
「ふぅーん……まぁそれを信じるとして、ここは俺の島だ。何か不都合でも?」
こういう奴はどうも胡散臭くて仕方ない。問答無用で襲いかかってこないあたり、多少の理性はあるとみてとれる。俺の力がどこまで通用するのか、世界事情・情勢を知らず、また口で言いくるめられる程達者ではない。ここは弱味に漬け込まれない様にしないといけない。
「いやいや、滅相もない!あっしはただの遣いでさぁ。この方が説明してくれるっす」
この方って誰だよ?って言う前に向こうから回答がもたらされた。
『初めまして、私は国家間で商いをしているジャンと申します。航海中に偶然にもこの島が目に入りましてね。良ければこれからの商売の最中に、ここに立ち寄らせてもらいたいのです』
ズークが手に持っている水晶?から声が聴こえてくる。恐らく通信系の魔道具と思われるそれは、手のひらサイズの大きさをしている。
ジャンと名乗る男の交渉にのるべきか否か。休憩所―――要するに海の上での安全を確保したい狙いなのだろう。または拠点確保といった意味合いか。どちらにせよメリット・デメリットを考えると―――
「悪いが、その話はお断りだ。俺はここでのんびり暮らしたいからな」
『なるほど、なるほど。私共もタダでとは言いませんよ。どうです?ここにいる奴隷は?今後のお付き合いによってはお安くしますよ?』
「生憎と奴隷は嫌いでね。あんたらが奴隷を扱ってるってんなら余計にその話にのるわけにはいかないな」
アリスの件もそうだし、日本で生活していた人間からすれば奴隷制度など考えられない。昔はそれに近い制度もあったそうだが、平和な世界で暮らしていた俺からすれば到底受け入れられない。
『…それは残念ですね。ならば力ずくで奪うとしましょう』
残念ながら、はいそうですかと素直に諦めてはくれないみたいだ。4対2と人数的にはこちらが不利。どう切り抜けるべきか―――。