13.待ちにまった魔法
第2章が始まります!
精神的に疲れたものの、アリスが綺麗になるのなら安いものだ。ご機嫌な彼女をよそに、俺は夕食作りを始める。今夜は生姜焼きを作り、毎度のことながら美味しい、美味しいと手が止まることはなかった。
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アリスとの共同生活も早いもので数ヶ月が経過した。おはようからおやすみまで、誰かが常にいる生活ってのはやっぱりいい。アリスはここでの生活にだいぶ慣れて洗濯、掃除、料理など色々と手伝ってもらっている。今では多少時間がかかるものの、一人で料理が作れる程の腕前にまで成長した。
そして大きく変化したのが、アリスと恋人関係になった事だ。毎日顔を会わせていて、前世から女性に縁のなかった俺は意識しまくり。当のアリスは少女から女性へと蕾が花開く成長期、元々の可愛さと相まって―――。
そこで俺は決意を固めアリスへと一世一代の告白をして―――無事に成功し男女の共同生活から恋人との同居生活へとランクアップを果たした。
そんな生活を送っていて、今日も今日とてDPで購入しようと、ステータスを開くと―――
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NAME:フクノ・ヒロヤ(人族:男)
AGE:15歳
称号:ダンジョンマスター、転生者、女神の祝福を受けし者、料理人、釣り人、魔法を操る者
所持DPダンジョンポイント:10,000
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つ、ついに求めていた称号が!!
「アリスやったぞ!」
「…もう、びっくりするじゃない」
「ご、ごめん……それよりも聞いてくれよ!ようやく『魔法を操る者』って称号が手に入ったんだよ!今日から俺も魔法使いだっ!!」
「おめでとうヒロヤ。でももうちょっと落ち着いてくれる?」
あまりの嬉しさで感情が爆発してしまい、アリスに怒られた。しかしそれ程までに追い求めていたものが手に入ったのだから、喜ばずにはいられない。
他にも称号が増えていて、タップしても詳細が見れないから、いつ、どんな条件を満たして獲得したかは不明。でもまぁ『釣り人』は、釣りの回数か釣った回数とか、『料理人』も大体そんな感じだろう。
今はとにかく『魔法を操る者』だ!
「スッーハァー……落ち着いた。これで俺も魔法が使えるんだよね?」
「えぇ、使えるわよ。ただ、人によっては魔力量が異なるから、少ないと火種程度の魔法しか発動できないわ」
マ・ジ・で!?え?魔力量がショボイとダメなの?
「魔力量については、魔法を使ってみないことにはわからないわ。魔力量が少ないと、魔法の維持ができなくなって、吐き気や倦怠感に襲われるわ」
「魔力計測器とかはないわけ?」
「…聞いたことないわ。ただ親の魔力量が多いと、その子供も多い傾向があるわけど、ヒロヤの場合はどうなるのかしら?」
ようは親の遺伝に左右されると。俺の体は若返っているし、そもそもデエスが復元した体だから、産まれていない。つまるところ俺にもわからない、全くの未知数。
「俺にも分からんな。適正属性はどうやったら分かる?」
「それは簡単よ。例えば火魔法は、手の平に魔力を集めて<火よ>って唱えて、火が出れば適正あり。もし出なければ適正なしよ。無魔法以外はどれもこんな感じで適正の有無がわかるわ」
実践あるのみね。手っ取り早くて分かりやすい。最悪DPで魔法を購入すれば全属性使う事が可能にはなる。しかし前に風魔法を購入した時、1,000,000DPと高く、おいそれと購入出来ない。
なので元から適正ありならば、その分だけDP消費が減る。是か日でも適正ありでお願いします。
一通り詠唱して確認した結果―――風を除くと闇しかなかった……。
四元魔法よりも特殊魔法に適正ありってどういう事!?しかも一つって!!
「と、特殊魔法に適正あるなんてすごいことよ!だからそんなに落ち込まないで…」
普通さぁー、異世界物の主人公は魔法チートで俺TUEEEEするのが定番じゃん?どうしてここはテンプレ通りにしてくれなかっんだよデエス。
「ちなみになんだけど、闇魔法って何ができる?」
「う~ん、適正魔法じゃないから詳しくは知らないわ。特殊魔法はそこまで多くの使い手がいない、ってのもあってあまり知られていないの…」
「アリスが気に病むことはないから!適正のない俺が悪いんだから!」
自分で言って悲しくなってきた。何でもかんでもアリスに頼るのはよくない。闇魔法から連想できるのは―――闇の炎、漆黒、冥府、影……あれ、おかしいなぁ中二ワードしか思い浮かばない。
きっとその内、俺の右目がっ!って叫び出しそうで怖い。今は忘れよう。
「魔法は詠唱しないと発動しない?」
「いえ、無詠唱でも発動できるわ。魔法とはイメージ、即ち発動する魔法によって現実にどう影響をもたらすか、またそれによって何が起こるか、を具体的にイメージできるほど、威力や発動速度に大きく影響してくるの。詠唱はあくまでも発動するための補助の役割なしかなく、簡単な魔法だったら私でも無詠唱で発動はできるわ」
「イメージが大事ってことか。なら案外何とかなるかも」
アニメや小説を読んでいたから、イメージなんて朝飯前だ。今こそ、黙示録に刻まれた―――おっと間違ったイメージを思い浮かべてしまった。
魔法が暴走して家の中が大惨事、って事にはなりたくないから外に出て練習をしよう。
比較があると分かりやすいから、アリスと同じ風魔法で試してみる。
「風魔法の初級は、≪ウインド≫。微風程度の風が吹く魔法で、詠唱は<我の求めに応じ風よ起これ>よ」
詠唱を唱えるのは恥ずかしいと思う反面、心が沸き立つ自分もいる。でも異世界って感じがしてすごくいい。
見本のためアリスに発動してもらうと、草が軽く靡く程度の威力しかなく、初級魔法に相応しい威力だった。
「―――と、まぁこの程度の威力しかないわ。イメージは固まったかしら?」
「あぁバッチリだ!じゃあ試しに俺もやってみるぜ!」
アリスにもう一度詠唱を教えてもらい、さっきのウインドをイメージして―――
「<我の求めに応じ風よ起これ>」
詠唱をした。ほんのりと体が温かくなった気がしないでもない。身体には特にこれといった変化は感じ取れなかったが、目の前の草は確かに揺れている。しかもアリスの時よりも揺れは激しい様に思える。
「くぅーこれこれ!最・高!!」
「初めてで私よりも威力が上……」
初級魔法だから大した変化はないけど、魔法に変わりない。日本では絶対に使えなかったそれが使えた事に、またも嬉しさが爆発した。
この気持ちを一緒に分かち合おうと、振り向くと俯いてぶつぶつと呟くアリスがいて怖い。
「こうなったら私も負けてられないわっ!」
「お、おう。一緒に頑張ろう」
魔法はイメージだから、今度一緒にアニメ鑑賞でもしてみるのもいいかもしれない。そうすれば、より具体的なイメージがアリスにも出来るだろう。問題はどんなアニメを観るかだな……決して彼女が病にかからない作品にしなくては!
「魔法発動は出来たから、魔力量を調べてみるか。オススメの魔法ってある?」
「そうねぇ…初級魔法よりかはもう少し威力のある魔法の方が確かめやすいから、風魔法で自分を浮かせてみるのはどうかしら?それを維持し続けられる時間によってある程度の魔力量を知ることができると思うわ」
魔法の威力が大きくなればなるほど、魔力を多く消費するらしい。仮に魔力量が多ければ、初級魔法をいくら使っても減った感じがしない、とのこと。
「風の中級魔法は≪ブラスト≫。詠唱は<我の求めに応じ風よ吹き荒れろ>よ。自分の体を浮かせるイメージと、風が下から上へ吹くイメージの両方が必要よ」
アリスにお礼を言い発動してみる。魔法適正が全然なかったんだから、魔力量くらいは期待したい。マジ頼むからなデエス!