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12.異世界物にはまる

 いつもの昼に比べてたくさん食べたおかげでお腹がいっぱいだ。


「く、苦しいです…」


 アリスに至っては単純に食べ過ぎだ。美味しい、美味しいと言ってスプーンが止まらなかった。


「それゃあ、あれだけ食べればそうなるだろうさ。この後は午前中の続きで、釣りをしたかったけど無理そうだな」

「ご、ごめんなさい…」

「まぁいつでも出来るし、そうだなぁ、アリスに必要な物でも揃えるか?」


 何もしないってのも、のんびり生活する上ではいいかもしれない。でもここはもっとアリスのことを知り、また俺のことを知ってもらい、仲を深めたいと思っている。それならばと、いつかは必要になるのだから、DPを消費してアリスの服や日用品などを買い揃えよう。


「服は絶対いるとして、女性にとってこれはいるって物は何がある?俺には全く思いつかん」

「そうね…替えの服は要りますし、ここにはヒロヤしかいないとは言え、身嗜みを整える物や美容系の物も欲しいわ」


 異世界でも女性の美意識は高いらしい。


「服なんかはまた自分で選んでもらうとして、美容商品は何を使っているんだ?」

「社交界に出席する際はお化粧をしてもらっていたので、お化粧道具とかかしら?」

「うーん、美容液とかはいいのか?」

「な、なんですのそれは!?」


 おっと、凄い食いつきだ。もしや余計な事を言ってしまったか…。


「ほ、保湿や美白液って聞いたことないか?」

「く・わ・し・くお願いします!」

「お、おう……って言っても俺も曖昧な知識だけど、肌に潤いを与える化粧水だったり、シミなんかを消す美白液ってのがあるんだよ」

「す、素晴らしい!是非(わたくし)も使いたいです!!」


 目を爛々と輝かせていて怖い。


「あ、アリスはまだ若いんだから大丈夫じゃないか?」

「なにを言いますか!年齢など関係なくお肌の悩みを抱えているものですわっ」

「俺が悪かったから、一旦落ち着いてくれ」


 お腹が苦しくて机にうつ伏せになっていたのが嘘のように、イスから立ち上がり前のめりになっている。顔が近いし怖い。


「確か、寝室の鏡台に化粧品があったような―――」


 気がする、と最後まで言い切る前に彼女の姿が消えていた。どこへ行ったのかなんて考えるまでもなく、後を追う。案の定寝室にいたものの、どこか落ち込んでいる。


「よ、読めません…」


 今さらだけど普通に言葉が通じているから何とも思わなかったけど、ここは異世界。そんでもってDPで購入している物は恐らく日本の物。当たり前の様に読めていたから何の違和感も抱かなかった。


「ちなみに、アリスの話してる言語ってなに?」

「ミュール言語ですけど…?」


 当然ながら日本語じゃないよな。こうして言葉が通じてるって事は、『女神の祝福を受けし者』か『転生者』って称号のどちらかに、異世界言語が理解できるスキルがあるのだろう。


「今更だけどDPを消費して購入した物は俺の住んでいた国の物で、日本語って言語で使われている。出会った時から言葉が通じていたし、昨日服を買った時何を言わなかったから、てっきり同じ言語だと勘違いしていた」

「サイズを見ながら選んだのと、絵があったので読めなくても困りはしなかったわ」


 それだと言語は異なるけどアルファベットや算用数字は同じって事か?絵――写真があれば読めなくてもどんな服かは分かるもんな。


「頑張って日本語を覚えてみるか?」

「是非覚えたいわ!」

「なら毎日少しずつ勉強をしようか。俺にはミュール語を教えてもらえるか?」

「えぇ、お互い頑張りましよう。それでこれはどうやって使う物ですの?」


 諦めるって選択肢はないのね。


「何度も言うが俺は詳しくない。だけどそんな俺でも知ってるくらい有名なやつがある」

「な、なんですのそれは!?」

「まぁ待て待て。これだけの物があれば絶対あるはず―――あった!その名もオールインワンジェル」


 名前は知っていても実際に見た訳ではないため、商品名を見ながら探していると求めていた物があった。


「複数の効果・性能をこれ1つに凝縮した優れ物だ!」

「す、すごいすごい!そんな物が存在していていいの!?」

「いいんです」


 多分別々に使い分けた方が効果は高いけど、どう違うのか説明出来ない。まだアリスは若いんだからお肌の悩みは少ないはずだし、ピンポイントでこれが気になるってなった時に、それに効く商品を教えればいいだろう。


「ひとまずそれは置いといて、先に服を選ぼうか」

「……わかったわ。明日着る服がないものね」


 余程気になるのか獲物を狙うが如く、ロックオンしっぱなしだ。そのため声をかけこちらに注意を向ける。


「貴族令嬢ならドレスばっかりで、ズボン―――女性物はパンツって言うんだっけか?穿いたことはある?」

「乗馬の時などは穿いていたわ。でもヒロヤの言う通りドレスで過ごすことが多かったわ」

「やっぱりそうか。折角なんだしパンツやスカートみたいな、普段穿いてない服にしてみたらどうだ?きっとアリスに似合うと思うよ」

「そうね……ここでは自由に過ごせるし、いいかもしれないわね」


 淑女教育やダンスなどの稽古はもうない。思う存分羽を伸ばしてほしい。


「女性物はここからここまで。上下別々に並んでるから、この文字が上着系、こっちの文字はズボン系だ。昼の片付けや掃除なんかしてるから、また買う前に呼んでくれ」

「…明日からは私もお手伝いしますわ」

「買った後に手伝ってもらいたいことがあるから、それをお願いするね」


 ソート機能のおかげで見やすく、こういった細かい配慮をしてくれたデエスには感謝だな。

 さて、暇な俺は昼の片付け―――洗い終わった食器類を棚にしまったり、掃除機をかけたり、お風呂掃除をしたりと家事をこなす。


 毎日使う部屋―――リビングや寝室なんかは毎日掃除機をかけて掃除している。逆に応接室みたいな部屋や未だ空き部屋のままの場所は、数日おきにしかしていない。


 贅沢な悩みだけど、広いとその分掃除が大変だ。特にお風呂は浴槽が広いから磨く面積も広く、時間がかかってしまう。





 一通り掃除終えたので、アリスの様子を見に行ってみる。タブレットを見つめ、う~んと唸っていた。


「ある程度決まったか?」

「まだ上着しか……こんな感じよ」

「どれどれ、8着か。一旦これを購入して、手伝いをしてもらっていいか?」

「えぇ、いいわよ」


 アリスが選んだ服は柄物がほとんどなく、白を基調とした服が多い。清楚なお嬢様って印象がより強く感じられる。

 購入ボタンを押すと、ステータスと唱えた時と同様に何もない空間から、突如として購入した物が現れる。


 購入した服には、値札のタグはついておらず、すぐにでも着ることが可能だ。しかし着る前に洗濯をする人が多いだろうし、俺もそうだ。


「アリスにお願いしたい手伝いってのはずばり洗濯だ。教えるから今購入した服を実際に洗濯してみよう」

「頑張ります!」


 二人で服を抱えお風呂場にある洗濯機まで運ぶ。厚手の服がなかったので、これくらいなら一度に全部洗える。


「洗濯機の使い方を説明するから、明日からはアリスに任せたい」

「はいっ!任せてください」


 そう難しい説明ではないのですぐに覚えられるだろう。ただ服によっては脱色や縮んだりする衣服があるから、そこは注意が必要だ。


「―――とまぁこれで洗濯機が動き出し、終わったら音が鳴って知らせてくれるから、その後外に干す。下着類は見られたくないだろうから、服で囲って隠したり、2階で干したりと目に付きにくい所に干してほしい」


 他にも天気が悪い日や部屋干しなんかも軽く説明をする。日本みたいに天気予報はなく、雨の日は溜めるか洗うかの選択は、洗濯だけに悩む。


「朝に洗濯して、天気にもよるけど昼過ぎには大方乾くから、取り込んで畳むまでが洗濯だ」

「干した後は忘れないようにしないといけないわね」


 アリスが手伝いに加わってくれるだけで凄く助かる。少しずつここでの生活、俺との共同生活に慣れていってほしい。特にこれまでの生活にはなかった物ばかりだから、アリスにとっては覚えることや分からないことだらけだ。


 洗濯を回している間にまた服を選び、終わったら干して新たに購入した服を洗濯する。

 ―――その後に化粧品の説明を求められ、精神的に疲れた。



次話からは第2章になりますが、ストックが尽きたので、隔日が数日おきの更新になります。

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