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プロローグ

本日3話投稿予定でこれは1話目になります!

 ザザァ~ザザァ~


 ある日の昼下がり、寄せては返す波の音が鼓膜を刺激する。だが決して不快な音ではなく、むしろ心地良いとさえ感じていた。

 ウッドデッキから眺める海は穏やかで、太陽光が海面に反射してキラキラと輝き、澄んだ色も相まってとても幻想的だ。ここがどこかの観光名所かと錯覚しそうになるが、遠目には薄っすらと海面から飛び上がる魔物――おそらく海龍が否が応にも異世界を連想させる。


「旦那様!お飲み物は紅茶にされますか?それともビールに致しますか?」


 海を眺めていると我が家のメイドの一人であるリーンが気を利かせて声をかけてくれる。優雅に紅茶を頂くのもいいけど、昼間から飲むビールもまた捨てがたい。しばしーーいや一瞬だけ悩んで決めたのは。


「ビールで」

「畏まりました」

「日が高いうちからお酒ですか?」

「ん?アリスか。別に今日の予定は無いからいいだろう?」


 リーンと入れ替わるようにしてやってきたのはアリスだった。咎める口調ではあるが、リーンに何か伝えているあたり自分も飲むつもりだろう。

 アリスもビーチチェアーに体を預け視線を海へと向ける。彼女の瞳に映る光景は遠い海の果てか、はたまた生まれ育った国か―――それともこれから先の未来を見据えているのか。生憎と俺には読み取れないが悲壮感がない事だけは分かる。


「お待たせしました」

「あぁありがとう」


 二人の間にあるテーブルへジョッキグラスに並々と注がれたビールが2つ置かれた。持ってきたリーンにお礼を言うと彼女は後ろへと下がり控える。今日は何もしない予定だからそこに居なくてもいいのだけど……。

 ちらっとアリスを見ると、「なにかしら?」とでも言わんばかりの表情をしていた。まぁ別にダメな理由はないからいいか。


「せっかくだし乾杯しようか」

「そうですわね」

「「乾杯」」


 キンッとジョッキグラスを打ち鳴らしグビグビと半分程を流し込む。


「カァッー!うまいっ!」

「えぇ、いつ飲んでも美味しいですわ」

「何たって美人と飲む酒は格別にうまいからな」

「ふふ、ありがとうございます」


 さすがは元お嬢様、上品な仕草でごくごくと3分の1程を飲み、だけど少しばかりついた口髭が可愛らしい。


「今日はどうされたのですか?」

「いや特にこれといったことはないけど?」

「そうなのですか?てっきりまた何かなさるのかと…」

「俺だってたまにはこうしてのんびりしたい時もあるんだよ」


 ここに――いや、この世界に来てからは日本での生活に比べて全くと言っていい程月日は経ってはいないが、とても充実した日々を過ごしている。こうして海を眺めているとここに来た時のことを思い出す。


「では明日からは何をなさるのですか?」

「そうだなー、やりたいことはたくさんあるけどーー」


 あれもこれもと思い浮かぶがいまいちピンとくるものがない。まぁ、まだ昼過ぎだし時間は大いにある。のんびりと考えれば何か決まるだろう。それに、こんな時間も悪くない、そう思いながらグラスを傾けるのだった。

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