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愛の歌  作者: Dust
4章
97/185

94話

目の前の存在のせいで幸せな生活が家族と共に奪われた。

1人、人の暖かさも忘れ、寒空の下で復讐を胸に鍛えた日々。

舜達と出会うまでは笑顔すら浮かべる日が無いほどの。

憎いものは憎い。

今すぐ家族を返してと言ってやりたい程に。

今すぐ幸せな日々を返してと泣き叫びたい程に。

それなのに、目の前でまさに焼き尽くされようとしてるその姿に。

「・・・私は、いい。」

攻撃する気は起きなかった。


「・・・うん、分かった。」

舜はその漣の答えが、姿が眩しく見えた。

自身は復讐に染まりきった身。

何人も何人も、そうやって殺してきた。

助けられなかった者がいる度、その心を燃やして。

悪と断じた相手を殺してきた身。

復讐の終わらせ方等、知らなかった。

ただその心の、満足する日がいつか来るのかもと思う程度。

殺しても、殺しても。

力に溺れ悪に落ちる存在は多く―

いつしか、自身も―

大してそういう連中と変わらないなと自嘲しながら、それでも続けていた。


炎を躱し、流し、受け止めていた舜はその動きを止める。

「・・・レイガ。せめてこの手で・・・終わらせる!」

真っ直ぐ、真っ直ぐ、真っ向から突き進んで。

「うぉおおおぉぉおおおおおお!!!」

珍しく、心からの雄叫びをあげながら。

炎を引き裂き、レイガの心臓目掛けて刃を突き刺した。

「・・・あぁ・・・ライガ・・・兄として何もしてやれなくて・・・すまなかっ・・・。」

血を口から吹き出しながらそう呟いたレイガの全身に、遂に炎が回る。

剣を消し、レイガのその身体が炎の中で消えるのを見届ける。


「・・・・・・お前の想い、絶対に忘れないよ。」

そう呟いた舜の表情は暗い。

想いの強さを知る舜だからこそ。

その想いの強さを利用して勝ちを奪い取った、その事への罪悪感が酷く襲いかかる。

せめて、その想いを、心に強く灼き付けることしか出来ないのだが。

舜は背負って生きる事を、一切迷わず決めた。

「・・・ふぅ、殺してばっかだな。・・・ずっと、ずっと。」

そういう時代に生まれたから。

なんて言い訳もせず、不器用に生きていく。

それが、舜という男であった。


炎が吹き荒れる。

『あ・・・ああ・・・!』

レイガと意識が混ざりあっていたクトゥグアが呻きながらその姿を表す。

『壊させない・・・セカイだけは・・・!!』

ようやく自身の意識がハッキリしたクトゥグアは敵意を、炎とさせて襲い掛かる。が―

『戦いは終わり。あなたの負け、クトゥグア。』

炎はトゥールによって掻き消された。

『邪魔をするな!ハスター!!』

『その名で呼ばないで。私は"羊飼いの神"ハストゥール。邪神になりたくてなった訳では無いから。』


2柱は睨み合う。

『分かっているだろう、その存在が・・・!』

『ええ、だから見極めた。・・・彼にセカイを壊す意思は無いと、そう見極めた。だから、やるべき事はむしろ、意図せずセカイの破壊者にさせないよう見守る事。違う?』

舜は剣を出しながら、その会話に困惑する。

「えっと・・・さっきから世界がなんだとか・・・何?」

『・・・・・・。』

クトゥグアはその姿をしっかりと見て。

『・・・ハスタ・・・いえ、ハストゥール。では、共に。』

『うん。』

2柱は石となって、舜の手元に降りてきた。


「いや、あの・・・説明を・・・。」

『大丈夫。君なら、きっと。』

「・・・・・・。」

呆然としている舜にリーンと漣が寄ってくる。

「大丈夫?血吐いてたけど。」

「うん、あれはドッキリ用のパーティグッズだから。」

心配するリーンに舜は空箱を渡す。

「わーお・・・。あ、眼鏡は?」

「・・・ん????」

舜はぺたぺたと顔を触れる。

「私と合流した時点でもうかけてなかったよ?」

「マジ・・・?まあ・・・いいか。」

今なら、普段見る歪みも真っ直ぐ受け入れられる気がした。


「やっぱり出番ねーじゃか!」

「・・・あー・・・怜奈に瞬殺されてた人!」

「覚え方!?セロだよ!セロ!」

隠れていたセロが姿を現す。

「そういえばリビは?」

「・・・え?」

男の声にみんなで辺りを見回すがその姿は、何処にもない。

「リビー!?どこ行ったのー!?」

リーンが、記憶にある中で最後にいた方向へ歩きながら叫ぶ。

全員が、今バラバラになった。

「・・・いっ!?」

セロの叫び声。


脇腹を抑え、セロは倒れ込んでいる。

「何!?」

「リーン!警戒して!」

動揺したリーンに舜は叫ぶ。

だが。

「あぐっ!?」

リーンも倒れ込んだ。

「ねぇ、舜くん。・・・さっき、リビさん?の居場所を尋ねてきてた人の声なんだけど。」

舜はハッとする。

セロの声では無かった。

「・・・お前か。」

舜は悲しそうに剣を構え、その敵と戦う意思を決めた。

舜VSレイガ

複数話に渡ってこの話だけをやる、というのは初めての試みでした。(オーフェ戦は割と近い?感じでしたが。)

普段戦闘がいい所で別シーンに切り替わるか、長引いてもここまでじゃない事が多く。

一言に戦闘してます!と言ってもどういう感じでやり合ってるのかとか文字に表す難しさは感じていますね。


さて、あとがきで何が書きたいかというと今回の戦い、割と舜くんの壊さがちゃんと書けたんじゃないかなという所ですね。

まともにやっても、レイガが目が見えなくなってからは普通に邪神の炎防いでます。そう、まともにやっても強い。

それなのにあの手この手を使う。相手を殺すためにその手を休めることは無い。

今回の戦いでやった事としては


クトゥグアの炎を言葉巧みに身体1つで受け切るよう思わせておいて、当然のようにクトゥルフの力に頼り相手の動揺を誘う。


吐血の振りで自身の魔力切れを装い、相手の残り少ない魔力を燃やさせる。


その上で真っ向勝負を挑むふりをして魔力を温存、温存の仕方もバレないよう狡猾にして見せた為相手から見たら「温存しないといけないほど魔力が切れかけている」という認識にさせる。


レイガが魔力切れが演技と気が付いた時には既に時遅し、真っ向勝負でも魔力差で有利は取れるはずなのですがそれでも気を抜かない姿はちゃんと「殺し合いの天才」として描けたんじゃないかなと。

描けてるといいなって。

いや・・・描けてたか・・・?



不安になってきましたが、舜くんの怖さはそれだけじゃないんです。

だってこの戦法とることにめっちゃ罪悪感に襲われてるんですもの。

相手の想いを利用するのを嫌がりながら、それでも取ってしまうほど殺し合いでの容赦のなさ。

それは相手にとっても恐ろしいものでしょう。

その心をボロボロにしてる時点で、本人にとってもいいものでは無いのですが・・・。



それではまた次回、読んで下さると嬉しいです。


dust

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