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愛の歌  作者: Dust
4章
94/229

91話

「あの・・・大丈夫、ですか?」

漣は頭を抑えてるリーンの元へ駆け寄っていた。

「・・・うん。モえてきた。」

「・・・大丈夫・・・そう?あ・・・でも。」

リーンは急に元気になる。

「萌える!萌えてきた!私はまだやれるぞうぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

「・・・えー・・・怖っ。・・・あ、でも多分だけど。」

漣は舜の方を見て、確信めいたように言う。

「・・・戦いに割って入れない、と思う。」

舜の赤く爛々とした瞳は、敵の動き全てを逃さず捉えている。


纏魔(てんま)(まと)うと言っておきながら。変わったのは眼だけ。・・・イレギュラー、だからこそより警戒せねばならぬ。』

クトゥグアと混ざったレイガの目も、赤く舜を見つめている。

その近くで、傷を受けながらも青龍もまた睨んでいる。

全ての目がその動きの一切も逃さんと見ていた。

―筈だった。

『レイガ!』

クトゥグアだけが、その反応速度で気が付く。

レイガの身体を人間では無理な速度で動かして、背後に備える。

音すら追い付かない蹴りが、レイガの手から放たれたクトゥグアの炎を切り裂く。

吹き飛ぶその身体を、青龍が身体で止めに行くが―そのままレイガと共に数メートル後ろまで後ずさった。


『・・・ッ!クトゥグア!俺の全てをやろう!全ての意識を、命を使え!代わりに奴を殺せ!』

「・・・全て、ね。やっぱり戦う理由は、あるんだ。」

再確認するかのように、確信していた事を呟く。

誰にだって想いはある。

今こうして殺しあってたとしても、それを否定し切るのは良くないのかもしれない。

(・・・今なら。)

また、いつの間にか視界から外れ―

反応したクトゥグアの腕を掴み、上空へぶん投げる。

相手の事を思うことが出来たとしても。

それでどんなに心がボロボロに傷付いたとしても。

舜のやる事は、変わらない。


(クトゥグア、読めたぞ。普段、防御に使っている高い魔力。あれを身体の1部に全て回す事で爆発的な速度や火力を出す。・・・逆に今は防御力は皆無だ。無能力者と変わらんだろう。後は・・・任せた・・・。)

レイガは残った最後の意識で、舜の力を解明する。

そして、その意識の全てまでもがクトゥグアの力のために注ぎ込まれた。

『あとでまた、話しましょう、レイガ。・・・青龍!我が指揮に応えなさい!』

クトゥグアの指示を待たずして、舜が上空まで飛び上がり殴らんとする・・・が。

炎で視界を阻み、その姿を隠す。


(・・・この速さの動きにまだ慣れている訳でもない。無理は禁物・・・かな。)

舜はその炎を蹴ることで反転し、地面に降りる。

武器も使わない。

慣れてないことを極力試さない。

それは、最後の手段なのだから。

あと一歩でその命を取れそうな場面が続くが―

それでも彼は欲張らない。

あと少し、その焦りが危険だということを知っているから。


強風が吹く。

炎が風に煽られ、踊る。

青龍の姿も、今は何処にいるか分からない。

「・・・やっ!」

拳に全魔力を込めて、宙へ適当に放ってみる。

風も炎も、その拳から放たれる勢いをゆらりと避け、空が見えた。

(外れ・・・。・・・・・・。)

耳を澄ます。

今の行動は相手からしたら隙に見えるだろうか。

舜はもう一度拳を構え―

その身体が宙へ浮いた。


龍として持てる力全てを注いで、舜を下から押し上げる。

はるか上空へ、地面が見えぬほどの、空が暗く見える程の上空へ。

そしてその上空へ登る速度よりより速く、よりGを与えながら、龍のシルエットは落ちてきた。

『・・・青龍、やりましたか?』

地面にクレーターが出来上がる。

そこには青龍しかいない。

青龍が苦しみ、血反吐を吐いている。

そして、上空から青龍を地面へとぶん投げた舜が。

同じ速度で降りてきて、その青龍の頭へ蹴りを与えた。


「・・・硬いな。潰したつもりだったんだけど。」

降りた反動を利用してクレーターから飛び出し、地面に着地した舜はそのままクレーターへと目をやる。

青龍は吼えながら、飛んで上空へ上がり舜をボロボロの顔で睨む。

青龍の口に風が、雷が、魔力が集まっていく。

その目には、必ず舜を仕留めんとする意思が見えた。

舜は足に魔力を回して跳び、青龍の前に来た瞬間には拳に魔力を込めてぶん殴る。

再び地面に衝突させられながらも、青龍の吐いたレーザーは舜の左腕の上腕をかすり、血を出させる。

舜はそんなレーザーに構っていられないかのように背後へ蹴りを行い、クトゥグアの炎を吹き飛ばす。

しかし、その右脇腹からはクトゥグアにより血が流されている。


(2対1でも・・・絶望的、ですか。)

傷付けられはしたものの、クトゥグアは自身の不利を悟っていた。

何とか食らいついているだけで―ほんの少しでも行動を違えれば既に何度も殺されている場面があったと。

青龍はその頑丈さで何度も起き上がってくれる。

だが、最早その身体は限界に近い。

『勝負は今、ここで決めましょうか。レイガ・・・この世界ではもう話せなくなる事を赦して下さい。』

舜より上空へいるクトゥグアの魔力が膨れ上がっていく。

舜は吼える青龍を無視して、その炎の方をしかと見る。

『避けようとも無駄です!世界ごと焼き尽くす炎を!あなたは何をもって、受け切りますか!』

「この身体1つで、十分だ。」

放たれた幾千もの炎が、全ての景色を包む。

その炎へ、単身舜は突き進んで行った。

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