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愛の歌  作者: Dust
4章
92/229

89話

「うぁぁぁぁ!!!」

「あぐっ・・・!」

身体能力が跳ね上がった子供たちの打撃が漣を襲う。

対応し切れなかった漣はその腹に膝が入り、血を吐いた。

(速い・・・が。)

舜にも数人向かう・・・が、そのシルエットが舜の知る限り最も速い人間と重なる。

「死んでよ!死んで!!」

(動きが怜奈より洗練されてない・・・から!)

先陣を切った相手の首を一太刀で斬り捨て、蹴り飛ばす。

残った身体が今まさに破裂せんと蠢く。

「ナチャ!」

糸がその身体を包み、消し去る。

そして後続に向けて真っ直ぐ向けられた別の糸から爆風が飛び出、2人が吹き飛んだ先で爆発した。


「舜く・・・っ!」

既に理想を捨て、覚悟を決めた舜を見て漣は叫ぼうとするが・・・その声は首を絞められ消えていく。

漣の身体は宙へ浮いている。

首を絞められながら持ち上げられている。

バタバタと足を動かしながら、やっとの思いで炎と一体化し、抜け出した先で片手を地面に付けながら息を必死に吸う。

「漣!」

舜はそんな漣の前に守るように立つ。

(あと6人・・・。)

「待って・・・フェニックス!何とかしてよ!フェニックス!!」


漣の声に応え、不死鳥は炎から浮かび上がる。

「・・・え?」

―前とは違う姿で。

綺麗に飾られていた筈の羽や身体は浮かび上がらず―

まるで、骨だけの姿で空を飛ぶ。

「クゥゥァァァァァ!!!!」

不死鳥は苦しそうに叫ぶと目の前の敵に向かって飛び、2人の首をはねた。

その身体を爆発する前に炎で包み、消し去る。

「・・・ぇ・・・ぁ・・・ちがっ・・・。」

不死鳥は漣の方を向いて・・・悲しそうに鳴いた後、その姿を消した。


「・・・漣、目を瞑って耳を塞いでて。俺がやるから。」

舜は優しい声でそう言い放つ・・・が。

「―漣!?駄目だ!」

その声を聞かず舜を抜き去り、漣は残った4人の方へ走り出す。

その腕を掴もうと必死に舜は手を伸ばすが―届かない。

「みんな止まって!助けさせて!お願いだから!」

そんな懇願も無慈悲に。

固まっていた3人の内、1人が限界を迎えた。

その爆発に呼応するように3人とも、魔力が暴走し。

漣は3人分の魔力の爆発をもろに受け、倒れ伏した。


「・・・漣。」

「おねが・・・しゅんく・・・助け・・・あげ・・・。」

残る1人は、最初から全てを諦めたかのように呆然としていた。

(・・・残ってる魔力的に・・・殺るしか・・・無いよな。)

理想を棄てなければいけない時。

その子の命と共に、君の運命を行け。

セカイと戦うに相応しい君に、なるんだ。



『いいえ、あなたに私の魔力を渡しました。一時的にアレに抗える力を。』

「火の・・・鳥?漣の・・・?」

邪魔。

邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔。

天から降り注ぐ巨大な掌でその哀れな無意味な火の鳥は押し潰されろ。

「・・・っ。」

その残骸に何も思う必要は無い。

さあ、続きを始めよう、舜。


全てを壊すもの(ラグナロク)。魔力のコアの暴走を・・・壊せ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

死に行くそれを守る為に、魔力を大幅に消費した。

死は絶対だ。

それを覆す事があってはならない。

「・・・漣。大丈夫?」

ああ、その女ですか。

君に理想を捨てさせるために頭がお花畑の女を用意したつもりだったのに。

君が、感化されるなんて。

許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。

ああ、不死鳥の魔力を使って。

まだ死ぬ前だったから間に合ったという訳ですか。

じゃあ。

その女に教えてやろう。


「ぁ・・・ぅ・・・ぁぁぁぁあああああ!!!!???!?!」

「漣!?大丈夫!?」

「あ・・・私のせいで・・・私が理想を追ったせいで・・・舜くんが傷付く・・・私の存在が・・・!?」

舜は漣を抱き締める。

「漣、落ち着いて。」

「私が・・・私のせいで・・・!」

「大丈夫だよ、漣。」

もがいていた漣が大人しくなり、舜も離して笑いかける。

「・・・私のせいで・・・舜くんが・・・理想を捨てて苦しむんだって・・・。」

「・・・?・・・漣は漣らしくいて。漣のおかげで救おうと思えたんだ。あの子が救えたのは漣がいてくれたおかげ。」


「・・・おい、大丈夫か?」

降りてきたレビアが生き残った1人を保護しながら声をかける。

「・・・・・・誰だっけ?」

「ああ、いや。まあ子供は任せてくれ。まだ舜様はやることがあるんだろ?」

舜は訝しながらレビアを見る・・・が、敵意は無いとして漣に手を差し伸べる。

「立てる?」

「・・・あ。・・・私、私のままでいいのかな。」

「それは・・・漣自身が決める事だとは思うけど。でも俺も少し考えを改めたよ。否定していい想いなんて、多分無いんだ。だから、漣は漣の考えを尊重して欲しい。」

漣は少し悩んで、その差し伸べられた手を受け取った。


舜に、手を差し伸べられたのは、

これで1人目。

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