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愛の歌  作者: Dust
4章
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88話

舜は剣を構えながら、打開策を探る。

その様子はいつもの、戦いに真摯に向かう姿であり。

戦場において最も死から遠い存在である。

ふと、影が1つ増えたのを舜は見逃さず―

その身体を斬らんとする影を、交わした。

「チッ!レビア!」

ウェルはすぐさま叫ぶが―レビアは来ない。

(何してやがる・・・いや待て。)

今、ここで1人で倒せば。

自分1人の功績に出来ないだろうか。

そんな欲が脳裏に渦巻き、不敵に笑う。

(・・・魔力が・・・変だな?)

舜は相手が何かしたと判断し、背後の子供達を警戒しながら倒すための策を何百何千と巡らせる。


「随分な身のこなしだ。だが、空を飛ぶ者が急に飛べなくなったら落ちて死ぬように。盾に頼るものがその盾を失えば呆気なく斬り殺されるように。お前の得意なグァ!?」

「よく喋る口なこと。」

ウェルがベラベラと喋っているうちに、ほんの一瞬で間合いを詰め、その上下の歯に両手の指をかける。

そのまま力を込め、ガコッという音と共に顎を外してみせた。

「・・・ェ・・・エゥエェ!」

ぷいっと終わったかのように後ろを向いた舜に、怒り心頭のウェルは果敢に攻撃をし―

一切背後を見ずに放たれた蹴りをかまされ、後ずさる。


「・・・ァ・・・ウァ・・・ァァァ!?」

後ずさった先は崖の先であり、必死にバランスを取ろうと腕をグルグル回しながらウェルは耐えていた。

「おやおや・・・乱入してきたのは役に立たない小物ですか。まあいいです。それよりお前たち、舜に魔力を放ちなさい。」

ヒョイっと舜は交わし―

背後にいたウェルに直撃し―

「ゔぁ!?ウアアアアァァァァァ・・・。」

落ちて行った。

その腕を、何者かが掴む。

「よい・・・しょぉっと!」

「うぁぁぁぁ!?」

「・・・何??」

勢いを付けて持ち上げ放り投げられたそれは舜の上を通り過ぎていき、岩場へ叩き付けられた。


「・・・漣!?」

「舜くん!」

ウェルをぶん投げた漣は舜の元へ駆け付ける。

「戦況は!?」

「分かりやすく言えば威力のある爆弾を付けられて戦わせられてる子供達と対面してる!」

漣は槍を持ち、子供たちへ視線を向けた後ポロスへ視線を向ける。

「・・・何とかしないとね。」

「出来る限り・・・だけどね。」

舜は息を整える。

魔力の消費は今までの戦いでかなりしている。

それでも、救うならラグナロクがいるだろう。


「んー・・・1806番。」

ポロスが1人の子供に呼び掛け、その子がびくりと反応する。

「攻撃がワンテンポ遅れましたねぇ・・・まさか救おうとしてくれる相手の存在で希望でも持ちましたか?」

「いえ・・・違います・・・。」

ポロスはスっと手を前に出す。

「誰がお前に発言許可を出した。死になさい。」

1806番と呼ばれた子供は自分の意思とは関係なく、前に動きだし。

「・・・っ漣!」

舜はその子を救おうとする漣を庇う。

そして、2人目の爆発が行われた。


2人は密着しながら吹き飛ばされる。

庇うように抱き締めていた舜の背が、岩にぶつかる事でようやく止まる。

「・・・なんで・・・なんであんな事させられるの・・・?」

思わず漣はそう口にしていた。

「漣・・・出来る限りは・・・救いたいと思うよ。・・・でもここは戦場であんな事をしてくる奴もいる。時に・・・理想は捨てないと。」

舜は漣を支え、立ち上がらせながら。

「やだよ・・・フェニックス!何とか出来ないの!?フェニックス!!」

漣の叫びには何者も応えてくれない。


「さて・・・お遊びはここらでおしまいにしましょうかねぇ・・・。」

眺めていたポロスは不敵な笑みを浮かべ・・・パチンと指を鳴らす。

それと同時に、ポロスの首が落ちた。

別の人間の首となって―

「止められなかったか・・・!?」

ポロスの首を背後から落としたレビアは戦場を上から見る。

子供達は呻き、叫び、そして―

魔力のオーラを纏いながら凄まじい速度で舜達へ襲いかかった。




「・・・よっ!」

ムイムイは加減を調節しながら咲希の攻撃を相殺していく。

傍目から見れば完全に互角の死闘であるが・・・。

(クソっ・・・!)

咲希からすれば完全に舐められて過ごしている。

「・・・!」

しかしムイムイの口数も自然と減っていく。

真剣な眼差しになって相殺を繰り返すが―

「!?」

バチりと咲希の爪が一方的に弾いた。

そのままムイムイへ襲いかかり・・・

咲希は、手を止めた。


「いやぁ、止めてくれてありがと。助かるよ、合わせてくれて。」

「・・・降伏しろ。今ので本来なら傷を負わせてたんだ。」

咲希の提案にうーんとムイムイは悩む。

「確かに怪我はしていただろうね。だけど・・・戦えない程の怪我じゃなかった。それは・・・分かってるでしょ?」

咲希は、何も言わなかった。

それこそが何よりの肯定となる。

「次に事故ったら・・・止められるかどうか分からんぞ。」

「・・・そうかもね。でも・・・もうちょっと遊ぼうよ。私の立場的に、さ。」

2人の視線は口数以上に語り合い、そして再び互角の戦いが繰り広げられる。


(もし舜なら・・・今のでトドメを刺していた、いやむしろ横に並ばれた時点で容赦なく斬りかかって真っ直ぐ勝ち取っただろう。怜奈なら・・・怜奈も容赦なくもっと前に殺してるだろうな。それがあの2人の強さ。)

咲希は戦いを繰り広げながら思案する。

(愛花なら・・・話術で終わらせるだろうか。漣も傷付けるという発想はしないだろう。それもまた強さ。雪乃は・・・相手にすらしないでどこか行くかもな。あいつの強さもまた1つの方向へ向いてるが故。)


『強くなる理由を見つけよ。素質はあるが・・・強くなりたい理由が無いものに真の強さなど手に入らんよ。・・・よく考えるといい、何故戦うのかを。』

かつて、ダリルに言われたその言葉が頭へ反響していく。

その答えを見つけ出せないまま。

ただ己のプライドの為に、咲希は戦いを続けていた。

おまけ もし咲希が手を止めなかったら。


そのままムイムイへ襲いかかり・・・

ムイムイの身体に切り傷が出来た。


「いったー!・・・あーあ、こっちは傷付けるつもり無かったのにさ。」

「戦場だぞ。甘い事を・・・」

ムイムイは手でその言葉を制止する。

「うん、そうだね。甘かったよ。だから・・・殺すね?」

あまりの魔力に咲希はゾッとした。

「おかしいと思わなかった?敵の言葉を聞いてあっさり仲間が下がっちゃったの。」

「・・・!まさか・・・!?」

ムイムイは息を吸い、そして一気に憎悪を吐き出した。

「お前らみんな自殺しろ!」

「あ・・・っ・・・。」

ガチガチと震える手。

横目で自分に着いてきたローグを見るが・・・既にその首を自らの手で斬り裂いていた。


「ごめんなさい・・・言うこと・・・聞くから・・・!」

「もう遅いよ。そもそも提案も聞かせようと思ったら出来たんだから。」

「あ・・・ああ・・・。」

ガタガタ震える手では一思いに死ぬ事すら出来ず。

ゆっくりと痛み、苦しみ、後悔し、絶望し。

そしてようやく、その思いすら消え去った。

「あーあ。これじゃ支配と変わんないんだもん。適当が1番なのにさ。」

ムイムイはそうとだけ言うと、その場を去った。




漣「だって。」

咲(危なかった・・・。)

漣「それではまた次回!」

咲「読んでくれると有難い。」

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